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そして、お茶を飲もうとしていたセシル王妃のお茶をガチャっと手で払った。

自分のお茶はカップに吐き出す。


令嬢としてあるまじき行為だが、これくらいしなければならない事態だったのだ。


「誰か!今すぐ国王陛下と王医を呼んで下さい」


「オーロラ嬢?」


セシル王妃が驚きの目を向けている。


「このお茶には毒が入っています」


「何ですって?」


その後すぐにやって来た国王は王医に直ちに調べさせ、ユングの毒を検出した。


「ユング……」


セシル王妃のつぶやきがあの時を思い出させる。


「オーロラ嬢は一口飲んだのではなくて?」


「吐き出しましたから大丈夫です」


その夜オーロラはクロドの街に遣いを送りミシェルにこの件を報告した。

ウォルターがいないと王宮にも隙が出来てしまうようだ。


国王はその後厳重に毒見役を付けるようになったので当分は大丈夫だろうが、まったく油断も隙もない。

オーロラも警戒を強めた。



そんな毎日を送ること一月。

突然国境の街から恐ろしい便りが届いた。


やせ細った兵士が数人馬で王宮の門をたたいたのだ。


その報せはオーロラの元にも届いた。


「オーロラ大変よ」


セシル王妃が小走りに駆けてくる。


「どうされましたか?」


「国境の街で兵士たちが……」


え?

青ざめた顔で言うセシル王妃にオーロラの勘が悪い報せだと告げる。


「何が、あったのですか?」


「内乱の飛び火は食い止められているようなのだけれど、血水症が流行して兵士たちが次々と倒れていっているらしいの。ウォルターとグラント王子は今のところ無事みたいだけど死者もでているみたいで」


血水症?

前世でも治療したことがある怖い病気だ。

お腹に巣くう菌で下痢、血便が特徴で、子どもや老人、また若者でも戦地などでは脱水がひどくなりやすく死に至ることが多い。

戦地では特にトイレがきっちりしていないからすぐ蔓延する。

非常に危険だわ。


でももしかしたらノエルが……。


「あの現地には治癒師は?」


「それが、大聖女と呼ばれる若い女性が来ているらしいのだけれど、全然治らないそうよ」


「え?それはピンクの髪の方ではないのでしょうか?」


「あ、そうみたいよ。知っている?」


どういうことだろう?

ノエルが現地入りしているのに治らない?


ダメだわ。

なぜかわからないけれど、こうしているわけにはいかない。


「王妃殿下。わたし行きます」


「え?どこに?」


「現地にです」


「何を言っているの?あなたが行ったらあなたにまでうつるわ」


「わたしにはうつりません」


「どういうこと?」


「ちょっと特殊な体質なんです。説明は帰ってからします。けれどこうしているわけにはいかないんです。わたしが生きているのはその為だから」


「何を言って……」


現地入りしてしまうと自分が黒魔術の使い手だとばれるだろう。

だが、そんなことどうでもいい。

人を助けなければならない。

死んでいく人を見殺しになんて絶対できない。


セシル王妃が止めるのも聞かず。オーロラはその日のうちに王宮を発った。

スコットだけを連れて。

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