第九夜 資格試験
カーリー……ダンジェ……二級か。なるほど、彼女がジルの言ってた……。
「私はメリネア・ラングベイド。彼はリオ……ラングベイド。支部の方にはちょうど用があったんですよ」
「……あぁ、知ってるよ。メリネア・ラングベイドか! くっくっくっ……面白いもんに会えたね。ついといで。特別待遇をしてやろう」
「……知り合い?」
「いや?」
私は知らない……から、たぶん向こうが一方的に認識してるだけだろう。……たぶん。
「あ、そうだ。リオっつったか? どこにあったかな……」
「……!」
カーリーは異空間に手を伸ばして中を探っていた。最上位属性……空間か。面白いな。
「お、あったあった。ほれ、これでも被ってやがれ。金はいらないけどな」
「お、わっ」
リオスさんに投げられたのは一つの大きめの帽子……認識阻害のものだ。うん、やっぱり目立つものなんだな。リオスさんの美貌は。その帽子を被った途端に視線は少し減った。少し。
「ありがとう。お礼は本当にいいんで?」
「アタシが趣味で作ったヤツだからね。気にすんな」
支部までは静かに向かうことができた。なかなか効果の良い帽子だな。さすがは二級の魔女といったところだろうか。リオスさんじゃなかったら実質透明人間にもなれそうだ。
「さて、まぁ腰を下ろしたまえよ」
「では失礼」
案内されたのは支部長室、意外にも小さな個室だった。書類の山が雪崩を起こしているが、まぁそこにはツッコむまい。
「……で、風化の魔女よ。その男はなんだ?」
「彼はリオ、私の従兄弟で……」
そう話そうとした途端、私の目の前には氷の刃が出現した。なるほど、氷属性も扱えるのか。最上位の空間に加えて上位の氷……面白い……!
「あまり舐めたことを言うんじゃねぇよ。安心しな。アタシは口は固い方だ。何も言いふらしやしないよ」
「……」
さて、どうしたもんかな。見たところ、彼女は二級の割には強い方だ。一級にもいずれなるだろう。だったら何かしらの繋がりを持っておきたいとも思うけれど……。
「いいかな?」
「僕はメリネアの判断に従うよ。あんまり分からないからね」
まぁリオスさんはそう言うか。ここまで疑われちゃ隠すこともできないかな……。
「彼を三級の魔導師に推薦したいんです。それから今日寝る場所も欲しいですね」
「そうだな……簡単な魔法さえ見せてくれればアタシが認定してやろう。それからピリネジオ支部は自由に使ってくれて構わない。未来永劫な」
へぇ……思いもよらない待遇だな。まぁ彼の魔力を感じれば知りたくもなるものか。事実、リオスさんには認識阻害の他にも魔力制限の効果のある魔導具を大量に装備させている。
「まぁそうですね。一言で説明するなら、彼はリオス・リーデンです。それで充分でしょう?」
「…………そりゃマジな話か?」
「ウソならもっとマシなものを選びますよ」
カーリーはリオスさんがジャラジャラと下げていた魔導具を舐めるように見つめていた。そりゃそうだ。そう簡単に信じられる話ではない。
「くっくっくっ……! おいおい、何の冗談だ? 伝説の男が三級の魔導師だと?」
「仕方がありませんよ。順序があるでしょう?」
「……メリネア、お前の師匠……キュリアのババアは知ってるのか?」
「まだ若いですよ。それとリオスさんのことを知ってるのはここにいる3人だけです」
先生には会いに行くから近いうちに知ることになるだろうけど……それは話さなくてもいいか。
「えっ……と、リオスさんでいいのか? アンタが望むなら特級の推薦だってできると思うぞ?」
「うーん……僕はいいかな。興味はあるけど、せっかくだし正規の手順でいくよ」
「ハッ! そうかそうか。面白いヤツだ。しかしそうだな……。アンタの魔法を見るなら地下闘技場が良いだろうが、構わないか?」
「地下か! 面白いな! 構わないとも!」
リオスさんは勢いよく立ち上がった。もう何にでもテンションが上がっちゃうんだろうな。可愛らしいというかなんというか。
「そうか、ならさっそく案内しよう。頑丈な結界が張られてるから壊れることは気にしなくていいぞ」
一段、また一段と無機質な階段を降りていく。空気は冷たくなっていくけれど、ある段を境界にフワッと熱に包まれた。
「……今のが結界ってことでいいんですかね」
「そうだ。まぁ今のは補助結界だがな」
最後の段を降り、大きな空間に出ると……なるほどね。不可壊の結界か。結界自体の強度はさることながら、結界そのものを壊そうとする意識がなければ全てのエネルギーを遮断するってところかな。
「さぁ、アンタの魔法を見せてくれ。相応の威力さえ見せてくれれば三級の資格は与えてやる」
リオスさんは初級魔法しか使えないけど……まぁあの威力なら平気だろうな。それより今度はどの属性の魔法を見せてくれるんだろう。




