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第十一夜 盗賊団

 窓の向こうから差し込む光と、雀の鳴く声に瞼を叩かれた。朝……いや、違う。朝も昼も夜も、こっちはずっと明るいんだった。えっと……時刻は……


 AM7:28


 よかった、ちゃんと朝だ。


 痒いような重いような、そんな瞼を擦って布団をどかした。背中を伸ばすとビクビクッと全身に気持ちの良い刺激が走る。


「ふぁあ……」


 そっか……夢じゃなかったんだ。心臓が、何かを思い出したように弾んだ。そっか、良かった。


「……下か」


 リオスさんとカーリーさんの魔力が一つの部屋に固まっていた。何か話してるのかな。着替えたら向かおうか。


 柔らかい生地の服を脱ぎ、さっぱりとした新しい服に変える。あまり深くは考えずに足を運び、“支部長室”と記された扉の前に立つ。


「おはようございます。2人は何かお話してたんで?」


「あぁ、おはよう、メリネア。なんか拘束魔導具? を貰ってね。コレ一つで僕の魔力を抑え込めるんだって」


 ああ、昨日カーリーさんが言ってた希少(レア)級の魔導具か。見た目は綺麗なブレスレットだけど……机の上に投げ出されたいくつもの上級魔導具を見るに相当の代物なのだろうな。


「バカが。そっちはオマケだろ。アタシが渡したメインは魔導師証の方だろうが」


「あ、そうそう。三級の魔導師を正式に名乗れるらしいよ」


 ……思ったよりも準備が早かったな。いくら試験が要らないからって……。ま、何はともあれリオスさんはちゃんとした地位を獲得したってわけだ。


「魔力を自在に操れる人間は極めて少ない。不思議な話だ。生まれ持った性質を操れないなんて……。だからこそ、三級に認められるのは簡単なんだ。相応の魔法が使えるなら、な」


 だが二級以上はそうではない。求められるのは戦闘能力、より繊細な魔力制御、そして演算能力。言ってしまえば、強さが物を言う世界だ。


「まぁなるようになりますよ。急ぐことでもない」


「それもそうだな。で、お前ら資格取ったわけだし、もうここは出てくのか?」


 最初は少し観光でもしようかと思ったけど……もうやることはやったもんな……。


「リオスさんはもう少し見て回りたかったりする?」


「んん……別にここにこだわる必要はないかな。他の街にも行くんでしょ?」


「じゃあもう出発しちゃおうか」


 行き当たりばったりというか、その場凌ぎというか、そんな旅がたまらなく楽しい。計画なんて二の次だ。


「そうか、まぁウチにはいつ来てもらっても歓迎するがよ、どうせ西の方に行くんだろ? 一つ頼まれてくれないか?」


「頼み? いいよ」


「リオスさん……」


 相手がカーリーさんだからいいものの、そう簡単に人の頼みを聞くのは……まぁいいか。


「よく言ってくれた。まぁそう大変なことじゃねぇさ。西の……リノって山にな、小さな盗賊団がいるんだ。そいつらをとっ捕まえてくれ」


「まぁいいですけど……カーリーさんが直接動かないってことはそこそこ大変ってことじゃないんですか?」


「あぁ、いや、めんどくさいだけだ」


 ……やっぱりこんな頼みを受けるのはやめとこうかな。そんな理由で動かないってことは人に害も出てないんだろうし。


「ふーん……ま、いいんじゃない。ね、メリネア」


「え、あ、うん。じゃあもう行こうか。カーリーさん、世話になりました」


「おう、また何かあればいつでも来い。相手はしてやるよ」


 腰を上げて柔らかいソファを離れる。


 盗賊団は10人程度の冒険者崩れだそうだ。元々D級前後の男達が追放やらなんやらで賊に堕ちたというわけで……。


 ピリネジオを離れ、半日ほど歩くと山の麓までやってきた。麓とは言っても、小さな山ではあるが。


 そんな山の奥からは汗臭い男の匂いが流れてくる。鼻の奥をツンと刺すような……だからカーリーさんは来たくなかったのかな。


「メリネア、大丈夫か? ここはちょっと匂いがキツいから……」


「大丈夫だよ」


 顔を歪めながらそう答える。匂いはキツいけれど、リオスさんが近くにいてくれるだけでずいぶんマシだ。……いや、やっぱとっとと片付けよう。両手を前に突き出して一気に魔力を練り上げた。


「リオスさん、今回は私がやるよ。たぶん私の方が向いてる」


「そう? じゃあ任せるよ」

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