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Sky☆High  作者: クリステル


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Sky☆High ⑤

ゴローに明かされる衝撃の事実!

 清水門をくぐる五郎。お白州の上に蓙の敷かれた裁きの場。正面に広縁、明け離れた襖の奥は畳が敷かれ、床の間に飾られた掛け軸には墨痕も鮮やかに『ダンディズム』

玉砂利の庭の左右にさすまたを持った番士AB(無名座の皆さん)広縁の左右に神妙に控える隊士AB。 くぐり戸から入る五郎(町人風の衣装)、邸内を不安げに一通り眺めわたし、蓙に着座するも落ちつかな気な表情。


隊士A:「これより裁きを執り行う。閻魔大王様御出座である。一同控えぃ。」

一同:「ははあ。」

舞台左袖より閻魔大王(中村吉右衛門)裃姿で入場。中央に着座。


閻魔大王:「これより裁きを申し聞かす。大滝の五郎蔵、面をあげい。」

顔を上げる五郎。閻魔大王を見て驚く。

五郎:「お、お頭?」

閻魔大王:「大滝の五郎蔵。その方数多の才をお上より頂戴しながら、これを切磋琢磨致さず、人生を浪費せし事、不届き千万、もっての他の癖事である。因って現世へ立ち返っての補習の刑に処す。尚、その際にはお上のいぬとなる事を加えて申しつける。」

五郎驚く:「えーって、これって鬼平なんでやすか? 大体数多の才って、あっしにゃ覚えのねえこって、それに補習やらお上の密偵いぬってなんすか? 第一あっしの名は大滝五郎で、五郎蔵って、誰か人違いじゃありやせんか?」

隊士B:「これ五郎蔵、閻魔大王様の御前である、控えよ。」

閻魔大王、少しくだけて:「まあ待て、佐嶋。五郎蔵、驚れえたか。此処ではな、人が現世で思い描いていた正義の概念が姿形となったものにお裁きを頂戴出来るってぇ有り難いシステムになっておるのじゃ。考えてもみよ。幼子にいきなり閻魔大王は辛かろう。」

五郎:「はぁ、それでカブト虫って訳ですか。でも、あっしは五郎でやすが。」

隊士A:「これ、控えよ五郎蔵。」

閻魔大王:「まあいいってことよ忠伍。これ五郎蔵、その方の現世でのヒーローは鬼の平蔵に相違ないな?」

五郎:「へい、確かにあっしはお頭の事がでぇ好きでやしたが・・・、でも数多の才って言われやしても・・・、それに五郎ってさっきから・・・。」

閻魔大王:「五郎蔵、その方八才の春より水練の教室に通いおったろう?」

五郎:「あ、へい、確かにお頭の仰られる通りで、」

閻魔大王:「十の秋に何故止めた?」

五郎:「え、えーっと、それは、そのなんとなく飽きたって言いやすか、なんて言うかその・・・、」

閻魔大王:「あのまま続けておればメダルの一つも手に入れられたものを、惜しいのう。」

五郎:「へ?まさかお頭、御冗談を・・・、」

閻魔大王:「ベースボールはどうじゃ? 小学校の卒業文集には、将来プロ野球の選手になると書きおったが。」

五郎:「へ、へい、その、中学の野球部が坊主頭ってんで、格好悪りぃかなぁって・・・、」

閻魔大王:「愚かな事よ。メジャーリーガーで何十億と稼げたものを。」

五郎:「へ? そ、そうなんでやすか?」

閻魔大王:「ではロックバンドはどうじゃ? ロックスターになれば毎晩女子は選取り見取り、抱き放題、やり逃げ御免であったのにのう。ふっふっふっふっ。」

五郎:「ちょ、ちょっと待って下せぇお頭。だ、誰もそんな事教えちゃくれなかったじゃないですか。そんなもん・・・、先に言って下さいよ、まったく・・・、」

閻魔大王怒鳴る:「馬鹿もーーーーん!」

五郎ひっくり返る:「ひ、ひぇ・・・。」

閻魔大王:「五郎蔵、その方自らの才を承知したればこそプロ野球選手になると文集に書き、ペンキ屋の誘いも蹴ったのじゃ。甘えるのも良い加減にせい。」

五郎項垂れる:「お、お頭・・・。」

閻魔大王やおら優しげに:「五郎蔵よ、何故己の信じた道を最後まで歩かんのじゃ。折角お上が格別なる才を与えたものを・・・。」

五郎泣く:「お、お頭、あっしは良い加減な男でやした・・・。」

閻魔大王:「よしよし、分れば良いのじゃ。だがしかし五郎蔵よ、お前さんちょっとばかり微妙な立場におるのじゃ。」

五郎:「へい、そいつぁ一体どういうこって?」

閻魔大王:「よいか五郎蔵、よく聞け。この世界は六つの世界に分かれておる。即ち、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上じゃ。この六道を人の魂は輪廻する訳じゃが、この一つ一つの世界の中もまた細かく格付けがなされておる。まあ相撲の番付のようなものじゃが、相撲同様成績如何によっちゃあ次に生まれ変わった時に上がりもすりゃあ落ちもするってぇ事よ。どうじゃ五郎蔵、ここまでは解ったか」

五郎心許なげに:「へ、へい。」

閻魔大王:「されば五郎蔵、おぬしは今『人間の並の下』に格付けされておるのじゃが、今回並から滑り落ちるってぇと来世じゃもうちっと苦労する事になる。」

五郎蔵意外にあっさりと:「なる程、では下がる訳ですね?」

閻魔大王:「まあそう慌てるな。お前のそういう諦めの早い性格がいかんのじゃ。もうちったぁジタバタすりゃあ何とかなったものを。」

五郎:「へ、へい、相すいやせん・・・。」

閻魔大王厳めしく:「やい五郎蔵、おめぇちったぁ恋女房の事を考えたか。」

五郎:「え?」

袖からおまさ登場。

おまさ:「お前さん・・・。」

五郎:「おまさ・・・。」

五郎の許へ駆け寄るおまさ。ひしと抱き合う二人を見て満足そうに二度頷く閻魔大王。(バックに流れ出す鬼平エンディングテーマ『インスピレーション』)

閻魔大王:「五郎蔵よ、おまさは今回格付けの据え置きが確定しておる。お前さんを支える事で自分の人生を全うしたのじゃ。そのおまさがお前と二世の契りを交わしたいと申しておるが、五郎蔵、お前が格付けを下げれば、来世でも夫婦、という訳にはいかんのじゃ。どうする、五郎蔵。」

五郎泣きながら:「お頭、あっしは一体どうしたらいいんで・・・。」

閻魔大王:「されば五郎蔵。お前には現世へ立ち返って補習をしてもらおう。」

五郎:「補習・・・でやすか?」

閻魔大王:「おうよ、お前さんがさっき書いた上申書な、あれに出てきた者達を巡って善を積むのじゃ。」

五郎:「善を・・・、積むっていいやすと?」

閻魔大王:「馬鹿か、お前は。善を積むっていやあ、良い事をするに決まっておろうが。お、そうだ忘れちゃいけねぇ、お前さんをお上のいぬにしてやるぜ。」

五郎顔を輝かせて:「え、あっしのような者がお上の密偵いぬに?」

閻魔大王:「おうよ、酒井、例の物をこれへ。」

酒井与力:「はっ。」

カラカラと酒井与力の引きづって来たホワイトボードに何やらマーカーで書きつける閻魔大王。

A、神奈川犬

B、松犬

C、チワワ

D、ウナギ犬

閻魔大王:「さあ、五郎蔵。犬種を選べ。」

ズッコケる五郎とおまさ。

五郎:「゛えーー、お頭、犬じゃないのがいますけど。」

閻魔大王:「おう、最近絶滅する動植物が多くてな、お上としてはこのへんで新種を増やしておきてえらしいんだ。」

五郎:「新種って・・・、大体いぬって密偵みっていの事じゃないんですか、話の流れからいって?」

閻魔大王:「そいつぁお前の勝手な思い込みってやつだろう。ほれ、さっさと選べ。」

五郎:「選べって・・・、選択の余地無いじゃないですか、嫌だなあ・・・。じゃあ、Cのチワワで。」

閻魔大王:「Cのチワワ、ファイナルアンサー?」

再度ズッコケる五郎とおまさ。

五郎:「なーんすか、それ?」

不思議な笑顔で何も言わずに睨み続ける閻魔大王。たじろぐ五郎。

五郎:「あ、すいません、じゃ、ライフラインお願いします。」

さらに変な顔で睨む閻魔大王。

閻魔大王:「ざーーんねーん。」

三たびズッコケる五郎とおまさ。

五郎:「お頭、いい加減にして下さいよ。なんすか、それ? あそう、ライフライン無いんだ。へぇー、そうなんだー。」五郎なかば自棄的。

閻魔大王:「わあったわあった、まあそー剥きになるなって。よし、じゃあ、オプション付けてやる。どーだ?」再度ホワイトボードに書き付ける閻魔大王。

A、テレキネシス(念動力)チワワ

B、テレパシー(読心術)チワワ

C、話しをするチワワ

D、大型チワワ


五郎:「ふふーん・・・。」

閻魔大王:「なんでい、その『ふふーん・・・。』ってのは。」

五郎:「Cの話しをするチワワ、ファイナルアンサー。」

閻魔大王:「な、なんだよー、五郎蔵。そんな簡単に決めちまったら詰まらねえじゃねえかよ。」

五郎:「ざーーんねーん、五郎です。」

閻魔大王:「なんでえーい、可愛くねえ奴だな。わあったよ。Cの話しをするチワワ、せいかーーいってばよ。ほれ、現世へ戻る手形だ。さっさと行って善を積んでこーい。」

五郎:「あ、そうだお頭。一つ伺っておきたい事があるんですけど。」

閻魔大王:「おう、なんでい。」

五郎:「飛行機の墜落の事なんですが・・・。」

閻魔大王:「おう、その事か、だから言わんこっちゃない。ちゃんと教えてやったのに・・・。」


つづく

次回最終回です。

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