Part8 領都サリオンとお供のヴェルク
ゴブリンのダンジョンを攻略した二人はタイタ村に帰還した。
そのときに門番をしていたダイナとナターシャに「森にゴブリンにしか遭遇しないダンジョンが存在し、そのダンジョンを制覇した。」ことをファシールが報告すると、二人は驚愕した後に二人が逃げないようにファシールとアメリの頭を鷲掴みにし、他の者と門番を交代したのちに二人を説教した。
暗くなるまで説教された二人はそれぞれの家でさらにダリオン、ガリンに叱られ夜を明かした。
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数日後、ファシールとアメリは冒険者登録をするために、サリオン領の領都サリオンに向けて出発した。
「で、なんでヴェルクがついてきてるわけ?」
ファシールがヴェルクに対して「なんだコイツ」と訝しみながら聞いた。
「そりゃオメェ、案内役だよ案内役。領都サリオンに行ったことがある俺が道案内してやるんだよ」
「へぇ〜、それはありがたい。で、本音は?」
「やっぱ、都会でパーと稼ぎたいじゃん?」
「コイツゥ」
などというバカみたいなやり取りを見ながら、アメリは「お父さんに言われたんだろうなぁ」とぼんやり考えていた。
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タイタ村から出発してから、なんの出来事もなく領都サリオンに到着した。
「ふぅ〜、やっと到着したぜ」
「まさか徒歩で9日もかかるなんて思ってなかったわ。タイタ村から結構離れているのね」
と、少し疲弊した様子のファシールとアメリにヴェルクが領都サリオンへの入り方を説明する。
「領都サリオンの門を通るためには、身分証明書を見せるか、各門に配置されている『真偽官』に見てもらって許可をもらうことで入ることが出来るぞ」
「ふ〜ん。あ、ヴェルク先生!」
「はい、そこのファシール君!」
「『真偽官』ってなぁに?」
ファシールがふざけた様にヴェルクに質問する。
「いい質問だファシールくん。『真偽官』というのは、『真偽眼』というスキルで領都内に入る者が悪人かどうかを判断する人のことだ。『真偽眼』っていうのは嘘をついているかを見抜くスキルらしい」
「なるほど!訪れる人に質問して危険と判断されれば追い出されるのね」
ヴェルクが『真偽官』について説明し、アメリが納得した様につぶやく。
その後、3人でたわいもない話をしていると、
「次!そこの3人組」
門番の男がファシールたちを手招きする。
「これを。あと、こっちの二人は冒険者登録がまだだから『真偽官』のチェックで」
ヴェルクが自身の冒険者プレートを門番に渡しながらファシールとアメリのチェックを依頼する。
「わかった。では、まずこちらのプレートを確認させてもらう」
門番の男がヴェルクの冒険者プレートを確認し、
「大丈夫だな。では次に、『真偽官』様のところへご案内する」
「(様…?前は様なんて付けてなかったはずだが)…お願いします」
ヴェルクは門番の男の言葉に少し疑問を抱きつつも返事をした。
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門番の男に案内されてついたのは他の扉と違い、少し豪華な扉がついた部屋であった。門番の男が扉を叩き、
「失礼します。『真偽官』様の調べを受けに来た者たちを案内してきました」
と言った。
「入ってちょうだい」
(?…『真偽官』は初老の爺さんがしていたはずだが)
部屋の中から若い女性の声がして、ヴェルクにはさらに混乱した。
ヴェルクの混乱をよそに門番の男が扉を開けると、そこにいたのは声から想像した年齢よりもさらに若い女性が椅子に座っていた。
「真偽室へいらっしゃい。ここではあなた達が領都サリオンに対して害意を持っているかを見るわ。まあ、そこまで緊張しなくてもいいわよ」
と、笑顔で『真偽官』は言った。




