Part78 ダンジョン・四層目 vs アント小隊
翌日、十分な休息を取ったファシールとアメリは昨日に風穴を開けた木まで行き、そこからダンジョンの内壁に沿って歩いて、ボス部屋への扉に戻ってきたのだった。
途中、スレイブ・アントの集団を見つけたが、魔力を温存するために抗戦することなく通り過ぎることが一度だけあったが、それ以外にはモンスターに遭遇することはなかった。
「それじゃあ、行くぞ。アメリ」
扉に手をかけたファシールはアメリに声をかける。
アメリは何かを言うでもなく、無言でファシールの目を見つめて頷く。
ファシールもアメリに頷き返し、勢いよく扉をあけ放ち、部屋に入った瞬間に、二人は左右に分かれて走る。
ソルジャー・アントやキャプテン・アントはファシールとアメリの行動を見定めているようだが、スレイブ・アントは一斉に二人を撃退すべく、二人に向けて駆け出す。
「『炎系統竜巻系魔術』」
「『水系統竜巻系魔術』」
二人はそんなスレイブ・アントに向けて『竜巻系魔術』を放って蹴散らし、四層目のボスとの戦いの開幕の狼煙とするのだった。
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スレイブ・アントを蹴散らしている二人を見て、ソルジャー・アントとキャプテン・アントはそれぞれ動き出す。
ファシールの扱う『炎属性魔術』をより脅威に感じたのか、キャプテン・アントとソルジャー・アントが一体ずつファシールに向かって駆け出し、残りの二体のソルジャー・アントがアメリに向かって駆け出したのだ。
「『下位鑑定術』」
ソルジャー・アント 基礎Lv19
基礎速度小上昇Lv38 剛殻双顎Lv6
アント系モンスターの中で最も数が多いと言われている。
「...アメリ!そっちに『尖鋭双顎』と『螺旋双顎』を持ったソルジャー・アントが行ったぞ!」
ファシールはアメリと事前に決めていたようで、アメリに向かったソルジャー・アントがどんなスキルを持っているかを伝える。
「わかったわ!」
そう返事をしたアメリはファシールから伝えられたスキルの名称からソルジャー・アントがどのような行動をしてくるかを予測して動いている。
「『尖鋭双顎』はその名前の通りに鋭い顎だとして、『螺旋双顎』っていうのは何なのかし、らっ!」
そう呟きながらも未だに数が多いスレイブ・アントを細剣で貫いて倒していく。
「「キシャーー!!!」」
二体のソルジャー・アントが威嚇をしながらアメリの方へ走って行く。
スレイブ・アントはソルジャー・アントの声に委縮したように動きが鈍くなる。
「『光系統刀系魔術』」
そのため、アメリは動きの鈍くなったスレイブ・アントに向けて放った『光系統刀系魔術』を避けることができずに、アメリの周囲にいたスレイブ・アントは一掃されるのだった。
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一方、ファシールはというと、
「『炎系統竜巻系魔術』」
開幕に『炎系統竜巻系魔術』を惜しげもなく使っていた。
『炎系統竜巻系魔術』はスレイブ・アントが固まっている場所に撃ち込まれ、スレイブ・アントが慌てた様子でばらけて動くと、
「『二連突』」
容赦なくスレイブ・アントを各個撃破していく。
「「キシャーー!!!」」
と、アメリの方からソルジャー・アントの威嚇が聞こえるが、そちらを振り向くことなく淡々とスレイブ・アントを屠っていく。
それはアメリの実力を完全に信じ切っているからこそできることであろう。
アメリとは違い、キャプテン・アント達から離れていた場所で戦っていたファシールに、アメリの所より少し遅れてキャプテン・アントとソルジャー・アントが接近する。
ファシールは冷静にその動きを観察し、
「『炎系統光線系魔術』『炎系統光線系魔術』」
キャプテン・アントとソルジャー・アントの脚を『炎系統光線系魔術』で正確に狙撃する。
しかし、キャプテン・アントとソルジャー・アントは怯むことなく、ファシールに向かって走り続ける。
「威力の低い『光線系魔術』だからって怯みもしないのか...それなら!『炎系統槍系魔術』」
今度は『炎系統槍系魔術』をキャプテン・アントに向かって放つ。
ファシールの放った『炎系統槍系魔術』は見事にキャプテン・アントの頭に直撃したが────キャプテン・アントは何事もなかったかのようにファシールに向かって突進し続ける。
「おいおい、硬すぎだろ。オルダートレントか?」
そんなキャプテン・アントの硬さを見たら思わずそう呟いてしまうのも無理はない。
だが、
「やっぱ、『炎系統創造系魔術』で関節狙いか~」
ファシールは呑気なようでいて真剣な声色で呟く。
こうして、四層目のボスとの戦いは佳境へと移りゆくのだった。




