Part76 ダンジョン・四層目 三度目の正直
ファシールは『水属性魔術』が四層目を攻略するカギだと予想し、それをアメリと共有する。
「『水属性魔術』が攻略のカギなのは分かったわ。それで、どうするの? 今から試す? それとも明日にする?」
『水属性魔術』が攻略のカギだということに納得したアメリは、ファシールにいつ四層目に向かうのかと問う。
「今すぐだって言いたいところだが、流石にあの量のスレイブ・アントと戦って疲れたからな。明日にしようぜ」
「そうね」
ファシールは四層目の攻略を明日に持ち越すことを提案し、アメリもそれに賛同するのだった。
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翌日、ファシールとアメリは三度、四層目へ足を運んでいた。
これまでに二度探索しているということもあって、二人は迷うことなく進んでいく。
「確か、スレイブ・アントと遭遇したのってこっちだったよな?」
ファシールは一応といった感じでアメリに尋ねる。
「そうよ。ちょっと分かりにくいけど、草の背が一直線で低い箇所があるわ。昨日、『光系統刀系魔術』で切った草が元に戻ろうとしている最中なんだと思うけど...それにしてもすごい再生力ね」
アメリはファシールに「合っている」と答えつつ、改めてダンジョンの異常性について言及する。
「そりゃ、ダンジョンだからな。何が起きても不思議じゃないだろ。俺たちが昨日倒したスレイブ・アントを養分にでもして再生したんじゃないか?」
なんてふざけたように言うファシールに、アメリは思わず笑ってしまう。
そんな会話をしながら移動していると、ファシールがアメリを手で制して足を止める。
「多分、この先にスレイブ・アントがいる」
どうやら、スレイブ・アントの気配を感じ取ったようだ。
少し聞き耳を立ててみれば、ファシールの視線の先からカチカチと、何か硬いもの同士がぶつかるような音が聞こえて来る。
恐らくスレイブ・アントが会話か何かをしているのだろう。
「よく気が付いたわね」
アメリはファシールの索敵能力を称賛する。
「へへっ、まあな。それよりも『水属性魔術』が攻略のカギかを確認するためにあいつ等を強襲するぞ」
アメリに褒められ、ファシールは少し照れた様子で言う。
「分かってるわ。最初に『水系統竜巻系魔術』を放って攪乱した後に突っ込むわよ」
「おう!」
アメリとファシールは手早く作戦を決める。
「いくわよ!『水系統竜巻系魔術』」
アメリは『水系統竜巻系魔術』をスレイブ・アントの集団の中心より少し奥の方に放ち、スレイブ・アントの注意を二人がいる方向とは別の方向に逸らす。
アメリが『水系統竜巻系魔術』を放った直後、ファシールはスレイブ・アントの集団に向かって走り出し、少し遅れてアメリもファシールに続く。
「『二連突』」
スレイブ・アントの集団に迫ったファシールは近くにいた2体のスレイブ・アントの首を正確に槍で貫く。
ファシールの襲撃に気付いたスレイブ・アント達は一斉にファシールに襲い掛かる。
「『横薙ぎ』」
ファシールは落ち着いた様子で目の前に迫っていた3体のスレイブ・アントの首を『横薙ぎ』で刎ねる。
それでも、ファシールの眼前には無数のスレイブ・アントがいたが、
「『水系統刀系魔術』」
いつの間にか側面に回り込んでいたアメリが『水系統刀系魔術』でファシールに迫っていたスレイブ・アントを一掃する。
「サンキュー!アメリ」
ファシールはアメリに礼を言うとまだ残っているスレイブ・アントに向かって走り出す。
スレイブ・アント達は近づいて来るファシールに向かって腹を向ける。
ファシールはその行動を訝しみつつも、速度を落とすことなく走る。
すると、スレイブ・アント達は腹の先端から何かをファシールに向けて噴射する。
「『炎系統壁系魔術』」
だが、ファシールは冷静にスレイブ・アント達の行動を観察しており、スレイブ・アント達から何かが噴射された瞬間には『炎系統壁系魔術』を放っていた。
「『炎系統刀系魔術』」
さらに『炎系統刀系魔術』を横這いに放ち、『炎系統壁系魔術』を通り抜けてスレイブ・アント達を攻撃する。
「『炎系統刀系魔術』...『炎系統刀系魔術』」
『炎系統壁系魔術』越しにスレイブ・アント達の悲鳴が聞こえるが、ファシールは構わずに『炎系統刀系魔術』を連続で放っていく。
スレイブ・アントの悲鳴が聞こえなくなった時点で、ファシールは『炎系統壁系魔術』を解除し、周囲を確認する。
そこにはファシールが討ち漏らしたスレイブ・アントを倒したアメリの姿しかなく、スレイブ・アントの増援の姿はどこにもないのだった。




