Part75 ダンジョン・四層目 攻略のカギ
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ~」
アメリと共にスレイブ・アントの大軍から三層目と四層目の間の広場に逃げてきたファシールは地べたに座り込んで息を整える。
「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ~。すごい数だったわね。一体どこに潜んでいたのかしら?」
アメリも膝を抱えて息を整え、四層目での出来事を振り返る。
最初は40体程しかいなかったスレイブ・アントだったが、交戦しているといつの間にかスレイブ・アントの増援が合流しており、総数が最初に比べて2倍以上にまで膨れ上がってしまっていた。
アメリは「そんな数のスレイブ・アントが何処にいたのだろうか?」とファシールに話しかける。
アメリに考えを聞かれ、ファシールは
「さあな。ダンジョン内に巣が作れるのかは分からんが、土の中から出てた可能性がある」
と、自分の考えをアメリに伝える。
「確かに...それだったら、いきなりスレイブ・アントに囲まれたのにも説明がつくかも」
アメリはファシールの考えを聞いて、「最初に四層目を探索した時にスレイブ・アントに包囲される瞬間まで、少しもスレイブ・アントの気配を感じ取れなかった理由もそれだ」と決めつけるように言う。
しかし、ファシールの考えはアメリとは違うようだ。
「いや、それだけが原因と考えるのは早急すぎる。あの時、アメリはパニックっていて気付かなかったと思うんだが、スレイブ・アントとは別のアリのモンスターが居たんだよ。もしかしたら、そいつが原因かも...」
ファシールはアメリの決めつけを注意しつつ、原因は他にもあるかもしれないと言う。
「そうだったの?それってどんな奴だった?」
アメリはファシールが見たと言うスレイブ・アントとは別のアリのモンスターはどのような姿をしていたのかと問う。
「そうだなぁ〜ヴェルミリアさんの言葉を借りるなら、スレイブ・アントが進化したような奴だった。こう...なんと言うか、スレイブ・アントを一回り大きくしたみたいな...」
ファシールは目を瞑って当時の光景を思い出していたのだろう。
目を開いてから、ファシールはスレイブ・アントとは別のアリのモンスターの特徴を述べる。
「本当に〜?ファシールの見間違いじゃないの?」
アメリは揶揄うようにファシールに言う。
「いや、それはないな。前に囲まれたときに、『炎系統壁系魔術』で分断してただろ?少し時間が経って効果が弱くなっていたとはいえ、そのアリたちは『炎系統壁系魔術』を突破してきたんだよ。さっき戦ったスレイブ・アントにそんなことができるとはとうてい思えないんだよな~」
ファシールは頭をポリポリと搔きながら、やはりスレイブ・アントとは違ったアリのモンスターがいると言う。
「へぇ~」と、アメリは興味がなさそうに返事をする。
克服したと言っても、まだ若干の苦手意識はあるのか、アメリは余り積極的にアリについての話をしようとはしない。
「そういえば、私が少し取り乱していたのにどうやって、アリの集団から逃げきれたのよ?今日のを見る限り、逃げ切れるかはだいぶ怪しかったと思うんだけど...」
ふと気になったのだろう。
アメリはファシールに尋ねる。
「それはアリの集団をアメリが壊滅させたから...」
そう言って、ファシールは少しの間考え込む。
「──だぁ~~~!!」
「きゃっ...ちょっと、どうしたのよファシール?」
瞬間、ファシールはいきなり大声を出し、それに驚いたアメリが「一体何なんだ」とでも言いたそうな顔でファシールに問う。
アメリに問われたファシールは立ち上がり、
「分かったかもしれねぇ!この階層の攻略のカギが!」
そう高らかに言い放つのだった。
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何が四層目を攻略するためのカギなのか掴めずにいたアメリはファシールの興奮した様子を見て、
「どういうことなのよ、ファシール。今ので一体何がわかったの?」
と、困惑しているような声で暗に「教えて」と言う。
「あぁ!攻略のカギは『水属性魔術』だ!」
と、再びファシールは高らかに言い放つ。
「『水属性魔術』?確かに、さっきの戦いでは使ってないけど、どうしてそれが攻略のカギになるのよ?」
アメリはファシールの言う攻略のカギが『水属性魔術』であることがあまりしっくりこないようで、ファシールに理由を問う。
「まぁ、確実ってわけじゃないんだけど、アリ達は仲間を呼ぶなにかを持ってると思う。そうじゃなきゃ、あんなにアリ達がぞろぞろと増援に来るのはおかしいからな。そんでもって、アリ達に囲まれた時もそのなにかを使って、仲間を呼んでいたと思うんだけど...」
ファシールは言葉を切り、アメリの方をチラッと見る。
「・・・増援は来なかった」
ファシールの視線に気付いたアメリはファシールの言葉の続きを予想して言う。
「そうだ」とアメリの言葉を肯定しつつ、ファシールは話を続ける。
「そこで、囲まれた時と今日の戦闘の違いを考えた結果──『水属性魔術』を使ってるかどうかだったんだよ」
ファシールはそう言い切る。
「そういう事ね」
ファシールの説明に納得したのか、アメリはそう呟くのだった。




