Part71 ダンジョン・四層目 アリと拒否反応
三層目と四層目の間の広間で一泊したファシールとアメリは朝食を食べた後、再び四層目の地に足を踏み入れる。
「昨日はモンスターを見つけられなかったけど、今日は見つけたいな。それと、ボス部屋もな」
そう言いながら、ファシールは身体をほぐしている。
「今日こそは名誉挽回をしたいわ」
アメリは初めてオルダートレントと戦った後の失態を帳消しにしたいようで、やる気に満ち溢れている。
「昨日は扉の周囲をぐるっと回っただけだったから、今日は扉から出てまっすぐの方向に歩いて行こうぜ」
ファシールはアメリに提案する。
「いいわよ」
アメリはファシールの提案を了承し、四層目の探索を始めるのだった。
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四層目の扉を出てまっすぐに進んでいくファシールとアメリは腰の辺りまである草を槍や細剣で切りながら歩いている。
「モンスターいないわねぇ。いつもならもう遭遇しててもいいくらいだと思うのだけど...」
普通のダンジョンであればすでに1,2回はモンスターと遭遇するであろう距離を移動しているのにも関わらず、未だに四層目でモンスターと一度も遭遇していないために名誉挽回できない事が不満なのだろうか。
アメリは不貞腐れたように言う。
「もしかしたら、四層目にはほとんどモンスターがいないのかもな」
ファシールはアメリの様子を見て、少し茶化すように言う。
「まるで二層目とは真逆ね。二層目にはスライムの大群がいたけど、四層目にはモンスターの痕跡すら見つからないわ」
アメリはファシールの言葉を無視して、四層目は二層目とは真逆の状態だと言う。
アメリの言葉を受けて、ファシールが何か言おうとする。
瞬間、「ガサガサ」と草むらが動く。
しかし、動いている草むらは二人が進む先だけでは無かった。
二人を囲むように草むらが動く。
「・・・攻撃を仕掛けてこない。機会を伺っているのか、それとも何かを待っているのか...」
ファシールはそう呟きながら、アメリを見る。
アメリとファシールは顔を見合わせて互いに頷く。
「『炎系統壁系魔術』」
「『光系統刀系魔術』」
アメリは『光系統刀系魔術』を四層目に入った時に使った扉の方へ、そして、ファシールは背後を守るように『炎系統壁系魔術』で敵を分断する。
アメリの放った『光系統刀系魔術』は背の高い草を切り裂きながらいるであろうモンスターに向かって進んでいく。
アメリの放った『光系統刀系魔術』がモンスターに当たったのだろう。
「キシャーーッ!」と、モンスターの金切り声のような悲鳴が聞こえる。
アメリの放った『光系統刀系魔術』によって背の高い草が除去され、モンスターの姿が見える。
そこに居たのは全長がファシールの槍と同じほどのアリだった。
瞬間、ファシールはアメリを注視する。
ファシールとアメリは長い付き合いがある。
それこそ、幼子の頃からの付き合いが...
だからこそ、ファシールはアメリの嫌いな物を知っているし、それに対してアメリがどのような反応をするかも把握している。
「ぉ、落ち着け、アメリ」
ファシールはアメリを宥めようと声をかける。
「い、い、イヤ〜〜〜〜! ムシィ〜〜〜!!!!」
しかし、すでにファシールの声はアメリに届いていないようだ。
「『水系統竜巻系魔術』『水系統竜巻系魔術』『水系統竜巻系魔術』...」
アメリは目の前に居るアリのモンスターに向けて『水系統竜巻系魔術』を乱発する。
前にいたアリのモンスターは全て蹴散らさる。
それどころか、二人を襲おうとしていた左右にいるアリのモンスターすらも乱発された『水系統竜巻系魔術』によって粉砕される。
「落ち着けって! アメリ!」
ファシールはアメリの肩を揺らしてアメリを正気に戻そうとする。
「「「キシャーーー」」」
直後、ファシールの『炎系統壁系魔術』を突っ切ってきた大量のアリのモンスターが二人に向かって突き進む。
それを見たアメリは、
「ギャ~~~~!! 『水系統竜巻系魔術』『水系統竜巻系魔術』...」
アリのモンスターに向けて『水系統竜巻系魔術』をさらに乱発する。
アリのモンスターを殲滅することはできたが、未だに混乱しているのか、アメリは『水系統竜巻系魔術』を放っている。
「もうアリはいないぞ!落ち着けって!」
そう言いながら、ファシールは先ほどよりも激しくアメリの肩を揺らす。
その後、ファシールの活躍により、アメリを正気に戻すことに成功し、三層目と四層目の間の広間に帰還するのだった。




