Part69 四層目へ
ファシールの無茶がアメリに露呈し、アメリの説教にこってりと絞られたファシールだが、昨日の事をもう気にしていないのか、元気に動き回っていた。
「何してるのよ、ファシール?」
そんなファシールを見て、アメリは何をしているのかと尋ねる。
「いや〜〜四層目に行くかどうか考えてたんだよ」
ファシールはアメリの方に向き直って言う。
「私としてはあまり気が進まないのだけれど、ファシールはどうしたいわけ?」
アメリはファシールに問う。
「・・・行きたい。指名依頼ってこともあるけど、俺自身がこのダンジョンを攻略てみたいと思ってる」
ファシールは真剣な目でアメリを見る。
「そう。じゃあ、ちゃっちゃと準備して四層目に行くわよ」
ファシールの考えが最初から分かっていたのか、アメリが四層目へ行く準備をし始める。
そんなアメリの様子を見て、ファシールはポカンとしていた。
「い、いいのか?昨日は行きたくないみたいなこと言ってただろ?」
予想外のアメリの反応に、驚いたようにファシールは言う。
アメリは天幕を折り畳みながら、
「確かに奥のダンジョンは遠慮したいって言ったけど、五層目までならそこまでモンスターも強くならないと思うし、ファシールについて行くわよ」
と、さらりと言う。
ファシールは照れているのか、「ありがとよ」と小声で呟く。
アメリがその言葉を聞き取れているかは本人にしか分からないが、その後のアメリは少し上機嫌だった。
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ファシールとアメリは四層目に向かう事を決意をし、全ての荷物をまとめて持ち、三層目のボス部屋の前まで訪れた。
「ボスを倒す前はトレントの基礎Lvの平均は30くらいだったのに、ここに辿り着くまでに出会ったトレントの基礎Lvの平均は25前後だったな」
「そうね。本当に一層目と同じ現象が起きてるわ。この感じだと、四層目はモンスターが大量にいるんじゃないかしら」
ファシールの言葉に対してアメリは揶揄うように言う。
「不吉な事言うなよ」
ファシールは口ではそう言うものの、実際にそうなりそうだなと考えたのか、ため息を吐く。
「まぁ、とりあえずオルダートレントの基礎Lvを見とくか」
そう言って、ファシールはボス部屋への扉を少し開いて『下位鑑定』する。
オルダートレント 基礎Lv22
伸縮Lv1 震響眼Lv1硬質化Lv
樹木に凶悪な人面がついたようなモンスターであり、樹木の大きさは周りの木よりも一回りほど大きい。
「──やっぱり、昨日の奴よりも基礎Lvが低いな」
ファシールは目を細めて言う。
「じゃあ、昨日みたいにファシールの圧縮した『炎系統創造系魔術』で、サクッと倒すわよ」
アメリはファシールの言葉を聞いてそう提案する。
「そうだな。・・・取り敢えず、俺が『炎系統創造系魔術』の圧縮をしてる間はアメリの『水系統壁系魔術』で正面からの葉っぱ攻撃を防いで、枝の攻撃を対処しながら時間を稼いでくれ」
ファシールは昨日のオルダートレントとの戦いを思い出していたのか、少し考えた後に作戦をアメリに告げる。
「分かったわ」
アメリはファシールの作戦を受け入れる。
こうして、再びオルダートレントと戦うのだった。
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ドシンとボス部屋に低い音が響く。
それは二人がオルダートレントを討伐した音だった。
「お疲れ様」
「お疲れ〜」
二人はオルダートレントとの戦いの疲れを労うような言葉を投げかけ合う。
「それにしても昨日よりも楽に戦えたわね」
アメリはオルダートレントの魔石を探すためにオルダートレントの体を『炎系統竜巻系魔術』で燃やしているファシールに声をかける。
「まぁ、昨日戦ったばかりで攻撃方法もあらかた知ってだからなぁ〜。おっ!あったあった」
そう言って、ファシールは握り拳ほどあるオルダートレントの魔石を拾う。
「昨日は取れなかったからな。今日は取れて良かったぜ」
ファシールはチラリとアメリを見て言う。
「き、昨日は仕方なかったよの。まさかあんなに熱いなんて思わなかったもの。咄嗟に出ちゃったのよ、咄嗟に」
アメリはムッとした顔でファシールに言い返す。
「咄嗟に『水系統壁系魔術』を放つなんて危なっかしい奴だぜ」
ニヤニヤしながらファシールはアメリを揶揄う。
アメリはファシールをぶっ飛ばしたそうに見ているが...『炎系統創造系魔術』の余熱に阻まれて諦めたようだ。
代わりに
「まぁ、見てなさいよ!四層目では私が活躍してファシールの出番を奪ってやるから」
と、息巻くアメリなのであった。




