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傲慢な英雄の書  作者: ヴェルク・メイカー
68/79

Part68 同じ現象

「・・・本当に倒しちまったのか?」


オルダートレントを討伐したファシールだったが、ファシールからすれば青い炎を纏った『瞬突(しゅんとつ)』の一撃で倒せてしまい、手応えがないように思えただろう。


しかし、ファシールが槍に青い炎を纏わせている間に、アメリが断続的に攻撃していた事を踏まえれば、当然の結果だと言えよう。


「・・・・・・まぁ、倒せたならそれでいいか」


ファシールはそう言って槍を払い、青い炎を振り落とすように消す。


「ファシール、お疲れってあつッ!『水系統壁系魔術(ウォーターウォール)』」

「あっ!おいバカ!」


ファシールに近づいたアメリはファシールの纏う熱気のあまりの熱さに、咄嗟に『水系統壁系魔術(ウォーターウォール)』を放ってしまう。


「嘘でしょ⁉︎『水系統壁系魔術(ウォーターウォール)』が蒸発してる...」


ファシールの纏う熱気にあてられて『水系統壁系魔術(ウォーターウォール)』が蒸発しているさまを見てアメリは愕然とする。


「んな呑気なこと言ってる場合じゃないぞ、アメリ!ここままじゃ蒸し焼きにされちまう。取り敢えず、三層目の入り口まで戻るぞ」


アメリを正気に戻すためにファシールは大声で言う。


その後、正気を取り戻したアメリとファシールは蒸し焼きを避けるためにボス部屋から脱出し、そのまま三層目の入り口まで戻るのだった。


-------------


「戻ってきたぜ」


そう言うと、ファシールは二層目と三層目の広間で大の字に寝転がる。


「そうね。道中のトレントは弱いトレントばっかりだったし、ラッキーだったわね」


そう言いながら、アメリはファシールの纏っていた熱気のせいか、それとも走ったせいなのか、汗をかいているようで、体を冷まそうと服をパタパタとしている。


いつのまに回復系の魔術を使ったのか、既に二人にはオルダートレントとの戦いで負った傷は見当たらない。


「そのことなんだけどよ、アメリ。一応、トレントを『下位(かい)鑑定(かんてい)』していたんだよ」


アメリの言葉に反応してファシールが話し始める。


「そうなの?」


「あぁ、そんでもって、トレント達の基礎Lvが軒並み低下してた」


上半身だけ起こしたファシールはアメリの顔を見て言う。


「本当なの、ファシール?それがもし本当だったら...一層目と同じってことよね?」


ファシールの言葉を受けて、アメリは怪訝な顔をする。


「そうだな。それに、「ボスを討伐したら同じ階層の他のモンスターの基礎Lvが下がってる」なんていう一層目と同じ現象…これは偶然じゃないと考えた方がよさそうだよなぁ~」


「そうよねぇ...ファシール、どうする?いくらダンジョンだとしても、この現象は異常であることは確かよ。正直言って、今はまだ何とかなっているけど、奥の階層のモンスターは私たちの手に負えるとは思えないわ」


ファシールの言葉に頷きながらも、アメリはこのまま探索するのは危険だとファシールに言う。


アメリの言葉を受けたファシールは「どうしたもんかなぁ~」と呟ながらポリポリと頭を掻き、このままダンジョンの攻略を続けるかどうかの思考に耽るのだった。


-------------


結局、その日に結論がでることはなく、ファシールとアメリはの会話の話題はオルダートレントとの戦いでファシールが使った青い炎に移る。


「ファシールの使ってた青い炎って、『炎系統創造系魔術ファイアーアーマメント』なの?」


アメリはオルダートレントでのことを思い出しながら言う。


「まあな、オルダートレントにどうやってダメージを与えようか考えてたら、アメリの『創造系魔術(そうぞうけいまじゅつ)』の適性を思い出したんだよ」


「私の適性?」


「どうして?」とでも言いたそうな顔でアメリは言う。


「あぁ、アメリの『圧縮』って魔術の威力を上げるだろ?それを真似してみたんだよ。アメリの『圧縮(あっしゅく)』ほど効率良くできなくても、『炎系統創造系魔術ファイアーアーマメント』を『圧縮』して威力を上げようとしたら、ああなった」


なんでもないことのように言うファシールにアメリは、


「ちょっと待って、もしかしなくても博打でやってたの⁉︎」


と、驚きながら言う。


「いや〜、威力が上がる確証がなかっただけで、博打じゃないと思うんだけどなぁ〜」


ファシールはアメリの指摘が図星だったのか、目が泳ぎまくっている。


そんなファシールの様子を見たアメリは一瞬微笑んだかと思うと、


「そういう大事なことは先に言いなさいよ!!」


ファシールの頭目掛けて拳を振るう。


ファシールはオルダートレントとの戦いで疲弊していて反応できなかったのか、アメリの拳を頭で受け止める。


ゴンッ!と、鈍い音が広間に響き渡り、


「いってぇ〜〜〜〜!!」


ファシールが頭を抑えながらうずくまる。


そんなファシールの様子を横目に見ながら、アメリは握り締めた拳をほどく。


その後、アメリがファシールに説教をし始め、四層目の扱いを決めないままに1日が終わるのだった。

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