Part64 一泊
「ここは、三層の入り口の扉だ」
「えぇ!?」
ファシールの言葉にアメリは慌てて周囲を見渡す。
「・・・確かに、見たことがある気がするわ」
アメリはファシールの言う通りかもしれないと言う。
「じゃあ」と、アメリはさらに言葉を続ける。
「ボス部屋への扉が無いってこと?」
アメリはダンジョンの内壁に沿ってボス部屋への扉を探しながら歩いたのに見つからないという事は、ボス部屋への扉はないのではないかと考える。
「いや、まだ探していないところがあるだろ?」
ファシールはアメリの考えを真っ向から否定する。
「もしかして...森の中?」
アメリはファシールの言葉から推測する。
「あぁ、タイタ村のゴブリンダンジョンみたいに洞窟の中にあるんだと思う」
ファシールはアメリの推測を肯定する。
その後、これからどうするかを話し合い、長時間歩いたから疲労が溜まっているという事で、ダンジョンから帰還するのだった。
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翌日、
「なぁアメリ、ダンジョン内で一泊してみようぜ」
と、ダンジョンに向けて準備をしている時にファシールは言う。
「突然どうしたのよ?」
アメリはファシールの意図が見えず、ファシールに問う。
「これから三層目の森の中でボス部屋への扉を探すためには結構な時間がかかるだろ?そこで、二層目と三層目を繋ぐ階段の広間で寝泊まりすれば、一層目と二層目を探索する時間を無くして、もっと時間を三層目の探索に充てれるんじゃないかと思ってな」
ファシールは三層目の探索の時間を増やすためだと言う。
「確かにダンジョンで泊まったことがある人の話を聞いたことはあるけど...このダンジョンでもできるとは限らないんじゃない?」
アメリは本当に大丈夫なのかとファシールに尋ねる。
「そうだな。だから今日、一泊だけするんだよ。場所は一層目と二層目の間の階段を降りた先の少し開けた所だな。仮にそこでモンスターが大量に湧いても、そいつらを討伐したり、ダンジョンから脱出したりしやすいだろ」
ファシールは「だからこその一層目と二層目の間だ」と息巻く。
「う~ん・・・まぁ、いいわ。いつかはしなくちゃいけない事だしね。取り敢えず、荷物は全部持っていくの?」
アメリはファシールの「ダンジョンで一泊する」という提案を仕方がないといった様子で承諾する。
そして、ファシールにどれだけ荷物を持っていくのかと尋ねる。
「う〜ん、そうだなぁ...」
と、ファシールは少し悩む素振りを見せる。
「よし!全部持って行こう。五層目まで潜る時は全部持っていくことになるだろうしな」
「それもそうね。分かったわ。じゃあ、ぱっぱと荷物をまとめましょう」
ファシールは五層目の予行練習にしようと言い、アメリはファシールの考えに賛同する。
そして、二人は持ってきていた荷物を全てまとめて、ダンジョンに潜るのだった。
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荷物をボス部屋の端に置いて、ゴブリン・リーダーとコボルト・リーダーを討伐した二人は、魔石を抜き取った後に一層目と二層目の間の階段を降りた先の広場に到着する。
「よし、着いたな」
「えぇ。じゃあ、まずは荷物を下ろして天幕を張るわよ」
そう言って、アメリはテキパキと動き始める。
「お〜手慣れたもんだな」
なんて、ファシールがアメリを茶化す。
「な〜に茶化してんのよ、ファシール。あんたも手伝いなさいよ、ね!」
「はい...」
アメリからお叱りを受けたファシールはとぼとぼと天幕の組み立てに参加するのだった。
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天幕を張り終えた後、二層目でスライムを狩りながら、ダンジョンの二層目を散策していき、冒険者の間で噂になっている宝箱を探したりなどして、時間を潰していった。
「ふぁ〜...そろそろ、夜か?」
欠伸をしたファシールは目がしょぼしょぼするのか、目を擦っている。
「そうね。ダンジョン内だから、夜かどうかはわからないけど...」
と、言うアメリはまだまだ元気が有り余っているようだ。
「先に寝てていいわよ。・・・後で見張を交代してね」
アメリはファシールに睡眠を取るように言う。
「分かった。交代したくなったら起こしてくれ」
ファシールはアメリに言われるがまま、休憩に入る。
その後、アメリはファシールを起こして、見張を交代して休息を入る。
結局、モンスターが襲ってくることもなく、ダンジョン内で一夜を過ごすことができたのだった。




