Part63 ダンジョン・第三層 森林
アメリの『創造系魔術』の適性が判明した日の翌日、ファシールとアメリは再びダンジョン攻略に勤しんでいた。
「お疲れ様」
「おう」
アメリがファシールを労い、ファシールが返事を返す。
「それにしても、まさか一人でラージ・スライムを倒し切るとは思わなかったわ」
一層目のボスであるゴブリン・リーダーとコボルト・リーダーを倒した後にファシールが「ラージ・スライムを一人で倒したい!」とアメリに頼み、アメリはファシールが危なくなったら、『光系統範囲回復系魔術』で助けることを条件にしてこれを了承していたのだ。
「まさか『炎系統創造系魔術』にそんな使い方があったなんてね」
そして、アメリはファシールのラージ・スライムの倒し方を褒める。
ファシールは槍よりも先にがスライムに溶かさる事を見抜き、『炎系統創造系魔術』を槍の守りに使い、ラージ・スライムの半透明な体を『横薙ぎ』で切り裂き、核に直接『瞬突』を打ち込み破壊するという戦い方をしたのだ。
「そんなに褒めんなよ」
照れた様子でファシールは言う。
「そう?じゃあいいわ。それよりも、三層目に行くわよ」
アメリがあっさりとした様子で言い、ファシールとアメリの意識は三層目に向く。
そして、二人は入ってきた扉とは別の扉から螺旋状の階段を下り始める。
「前回はアメリの『創造系魔術』の適性がわかったもしれないって事で三層目を覗かなかったが、一体どうなってるんだろうな?」
ファシールはアメリにそう声をかける。
「分からないわ。ゴブリンにコボルト、それにスライム...規則性もないし、ボスを倒さないとモンスターが強いなんてよく分からない現象も起きてる。何が起こっても不思議じゃないわ」
アメリはダンジョンでの事を振り返って言う。
ファシールは「それもそうだな」と返事をする。
そうこうしていると階段を下り終わり、前には二層目と同じような扉がある。
「取り敢えず、二層目と同じように慎重に扉を開けるぞ」
そう言って、ファシールは静かに扉を開く。
「おいおい、嘘だろ?」
ファシールは己が見ているものが不思議で仕方がないといった声で呟く。
アメリもファシールに続いて扉の先を覗き、絶句する。
それほどまでに二人が驚愕したのも無理はない。
なぜなら、二人が覗く扉の先には森林が広がっているのだから。
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ファシールとアメリはしばらく三層目に向かうかどうかを決めかねていた。
なぜなら、ダンジョン内に存在する森林はとてつもなく広大であり、出口がわからなくなる可能性があるからである。
さらに、木に擬態したトレント系のモンスターや視認しにくい虫系モンスターが奇襲を仕掛けてくるという、とてつもなく面倒な場所でもあるのだ。
そういった情報をダンジョンに向かう前に仕入れていた二人は迷っていた。
そして、二人が出した結論は、
「行くか」
「そうね」
三層目を探索する、であった。
「とりあえず壁に沿って移動していけば森で迷って餓死するなんてことにはならないだろ」
「それにボス部屋への扉も見つけられるかもしれないしね」
そう言って、ファシールとアメリは三層目の探索を開始するのだった。
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「・・・広いわね」
そう呟いたのはアメリだった。
すでに、移動を開始してからそれなりに時間が経っているが、一向にボス部屋への扉を見つけられずにいる。
さらに少し歩いていると、
「──アメリ、聞こえたか?」
「えぇ、何の音かしら」
ファシールとアメリは森から異音がしていることに気付く。
「『下位鑑定術』」
自分の勘違いではないことを確認したファシールはすぐさま森の方へ──否、凶悪な人面を彫ったような樹木へ『下位鑑定術』を使用する。
トレント 基礎Lv32
伸縮Lv1 震響眼Lv1
樹木に凶悪な人面がついたようなモンスターであり、樹木の大きさは周りの木と大差ないことが多い。
「アメリ、トレントだ!うぉっ!あっぶねぇ」
ファシールの声に反応したのか、アメリに情報を伝えようとしたファシールをトレントは自身の枝を使い鞭のように攻撃をする。
「基礎Lvが32だなんていやに高いじゃねぇの」
トレントは呟くように言うファシールを再び伸びた自身の枝で攻撃する。
ファシールは声に反応していることに気付いたのか、何も言わずにアメリの目を見て頷く。
アメリもファシールが何を言いたいのか察したようで、ファシールに頷き返す。
こうして、二人は初めてのトレントと戦闘を開始するのだった。




