Part60 ダンジョン・第二層 討伐とアメリの適性
アメリの『光系統範囲回復系魔術』を喰らったことによる硬直が解け、ラージ・スライムは鞭のように伸ばした半透明な物質の先を枝分かれさせるように左右に伸ばしていく。
それによって、ラージ・スライムの叩きつけ攻撃の攻撃範囲がより広大になる。
しかし、
「『突進突』」
ファシールは『突進突』による加速を使って、悠々とラージ・スライムの攻撃を回避する。
「『光系統範囲回復系魔術』」
アメリが放った高威力の『光系統範囲回復系魔術』を再び喰らい、ラージ・スライムの体が硬直する。
「あと一発だ!」
ファシールはラージ・スライムの様子を間近で観察し、もう一度高威力の『光系統範囲回復系魔術』を喰らわせれば勝てることを察する。
「まかせて!」
ファシールの指示にアメリは力強く答える。
再び、アメリの『光系統範囲回復系魔術』を喰らったことによる硬直が解け、ラージ・スライムが動き出す。
しかし、先程までとは違い、近くにいるファシールではなく『光系統範囲回復系魔術』を放っているアメリに向かって鞭のようにした半透明の物質で攻撃を繰り出す。
「させるかよ!『瞬突』」
ファシールはアメリに向かう攻撃を全て『瞬突』で弾いていく。
右から、左から、上から──迫り来るラージ・スライムの叩きつけるような攻撃はついにアメリに届くことはなかった。
「いくわ!『光系統範囲回復系魔術』」
アメリの放った高威力の『光系統範囲回復系魔術』がラージ・スライムの核を範囲に入れて炸裂する。
そして、ラージ・スライムの核はアメリの『光系統範囲回復系魔術』を喰らい、耐えきれずに破裂するのだった。
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ラージ・スライムの魔石を回収したファシールはアメリの下へ歩いて行く。
「お疲れ〜」
「お疲れ様」
そう言って、ファシールとアメリは頭上で手を打ち合わせ、喜びを分かち合いながらお互いを労う。
「それにしても、俺が提案したことだけど、よく『光系統範囲回復系魔術』の範囲を狭めて威力を上げることができたな。結構難しいと思うんだけど...」
ファシールはラージ・スライムとの戦闘を振り返り、アメリの技量を褒める。
「そうかしら。あまり難しいこととは思わなかったわよ?」
アメリは特に難しいことではなかったと言う。
「はぁ?そんなわけないだろ!よく見とけよ、『炎系統球系魔術』」
ファシールは目の前に通常の『炎系統球系魔術』よりも一回りほど小さな『炎系統球系魔術』を出す。
「範囲を狭くするって言っても、普通はこれくらいが限界なんだよ。だから、『光系統範囲回復系魔術』をラージ・スライムの核より少し大きい位の範囲にまで狭くは出来ないはずだ」
アメリがした事は普通だと不可能な事だと、ファシールは言う。
「でも、実際には出来たわよ?」
ラージ・スライムとの戦いで実際に出来ていたとアメリは言う。
「あぁ、だから──それがアメリの適性なんじゃないか?」
「適性?」
アメリは頭を横に倒してファシールの言葉を繰り返し言う。
「ヴェルミリアさんが言ってただろ?『創造系魔術』の適性は「自分が最も使いやすい魔術に近い」って」
ファシールは初めてプレフォロン大森林のダンジョンに訪れる前にしたヴェルミリアによる『創造系魔術』の訓練でのヴェルミリアの言葉を言う。
「アメリの場合はどれか一つの魔術じゃなくて、魔術の『調整』が『創造系魔術』の適性なんじゃないか?」
ファシールはアメリが『光系統範囲回復系魔術』の範囲を異常に狭くすることが出来たことから推測した事を述べる。
「・・・確かに、そうかもしれないわね。『創造系魔術』の適性を自分で見つけられなかった事は残念だけど...適性が分かると嬉しいものね」
そう言ったアメリの顔には笑みが浮かんでいたのだった。




