Part59 ダンジョン・第二層 謎のアイテムとボス部屋
「これは上位以上のアイテムだってことだ」
ファシールの言葉にアメリは驚きを顔に宿す。
「どうしてそんなものがダンジョンに落ちているのかしら」
アメリはもっともな疑問を口にする。
「さあな」と言いながら、ファシールはフルフルと真剣な顔を横に振る。
「まぁ、この話はここで終わり。どうせ話したって何かがわかるわけでもないしな」
真剣な表情から一転、ファシールはいつもの晴朗な顔に戻り言う。
「それよりも、ボス部屋を確認しようぜ」
そう言いながら、破片を魔石を入れる袋に入れてボス部屋の方へと歩き出す。
アメリも深く考えることはやめ、ファシールについていくのだった。
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「じゃあ、開けるぞ」
そう言って、ファシールはボス部屋に続く扉を少し開ける。
「一体だけか...」
扉の向こうにいたのは、ビック・スライムよりもさらに二回りほど大きいスライムだった。
「『下位鑑定術』」
ラージ・スライム 基礎Lv21
魔力触覚Lv1 魔力視覚Lv1 伸縮Lv1
本体は半透明で薄い青色の粘性の高い半固形の物質の中に存在しており、平均的な大きさは直径1.2m、高さ80cmほどであり核は直径15cmほどの球である。
ファシールはすぐさま『下位鑑定』を行い、鑑定して分かった情報をアメリと共有する。
「『 伸縮』って、確か伸びたり縮んだりするスキルよね?トレントみたいな樹木系モンスター以外にも持っているモンスターがいるんだ」
アメリは枝を伸ばして戦うトレントというモンスター以外にも『 伸縮』を持っているモンスターがいることに驚いている。
「つまり、名前からして『魔力視覚』で俺たちを捕捉しつつ、『 伸縮』によって伸ばしたスライムの体で攻撃して溶かしてくるってことか」
ファシールは『下位鑑定』によって判明したスキルから、ラージ・スライムの戦い方を推測する。
「けど、注意して見ていれば、攻撃にあたることはなさそうね」
涼しい顔でアメリは言う。
「まぁ、そうだな。一層目のゴブリン・リーダーの『狂化』のようなスキルもないし、注意していけば無傷で突破できると思う」
ファシールもアメリの考えに賛同する。
「じゃあ、ちょっと休憩したら挑みましょうか」
そう言ったアメリにファシールは首を縦に振ることで賛同の意志を示したのだった。
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「行くぞ、アメリ。取り敢えず、『光系統単体回復系魔術』がラージ・スライムに効果があるのか試してくれ」
「えぇ」
ボス部屋前の休憩を経て、気力・魔力ともに十分に回復した二人はラージ・スライムへと挑む。
「喰らいなさい。『光系統単体回復系魔術』」
『光系統単体回復系魔術』がラージ・スライムにかかる。
「う~ん...ちょっと動きが鈍ったくらいか?」
ファシールの言った通り、アメリの『光系統単体回復系魔術』を喰らったラージ・スライムは動きが鈍っている。
逆に言ってしまえば、アメリの『光系統単体回復系魔術』ではラージ・スライムの核を破裂させることができないという事だ。
「ファシール!来たわよ!」
ラージ・スライムは『光系統単体回復系魔術』を喰らったことで攻撃態勢へと移る。
ラージ・スライムはその核の周りにある半透明な物質の形を鞭のように伸ばして、近くにいるファシールに向けて攻撃する。
「やっぱり、トレントと同じスキルだったのか」
ファシールはそう呟きながら、ラージ・スライムの叩きつけ攻撃を槍で受けることなく足さばきのみで回避していく。
「アメリ!『光系統範囲回復系魔術』の範囲を狭くして威力を上げられないか!?」
ファシールはラージ・スライムの攻撃を回避しながら、アメリに提案する。
「はぁ!?──やってみるわ!」
アメリはファシールの無茶ぶりとも捉えられる提案に最初は戸惑うも直ぐに立ち直り、挑戦してみるとファシールに返事をする。
「『光系統範囲回復系魔術』...あら、やってみれば意外とできるものね」
アメリは魔力を調整することで『光系統範囲回復系魔術』の範囲を狭めつつ威力を上げることにあっさりと成功する。
一方、高威力の『光系統範囲回復系魔術』を喰らったラージ・スライムは動きが鈍るだけでは止まらず、その体が完全に硬直する。
「何発か撃ち込めば倒せそうだな...アメリ、もっとやってくれ!」
ラージ・スライムの様子を見てファシールはアメリに『光系統範囲回復系魔術』を放つように頼む。
「わかったわ!」
アメリはファシールの頼みを了承し、再び『光系統範囲回復系魔術』を放つために魔力を調整する。
そうして、二層目のボスとの戦いも佳境に入るのだった。




