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傲慢な英雄の書  作者: ヴェルク・メイカー
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Part55 魔術でのスライムの倒し方

アリシアによる打ち込み訓練が終わり、ヴェルミリアの魔術を使ったスライムの倒す訓練へと移る。


「アリシア、お疲れ様。後は私に任せて」


そうアリシアに耳打ちして、冒険者達の前に立つ。


「それじゃあ、魔術でのスライムの倒し方を教える」


アリシアが説明していた時に話していた冒険者達ですら静かにして次のヴェルミリアの言葉を待つ。


「スライムの核を覆っている半透明な物質は武器だけじゃなく魔術をも溶かしてしまう。つまり、多少溶かされても大丈夫なように十分な火力でスライムを攻撃しなくちゃならない。では、どうやって効率よくスライムを魔術で倒すのか?それは...溶かされてもギリギリ攻撃として成立するように魔力を調整するんだ」


ヴェルミリアの言葉を受けて、ファシールを含めた冒険者達全員が困惑したような表情をする。


「「どういう事だ?」って顔をしてるな。武器でスライムの核を攻撃したことがある奴らは分かると思うが、スライムの核は硬い。だから魔術も魔力を多く消費して十分な火力で攻撃しなければならない、と考えてしまうのも無理はない。だが、なぜかはわからんが、スライムの核は魔術をくらうと核が破裂する。これは殆ど攻撃力のない魔術でも破裂する」


「「「えぇ〜!!」」」


今度はアリシアすらも含めた全員がヴェルミリアの言葉に驚く。


「うるせぇ〜なぁ。まぁ、驚くのも無理はない。私もこれを見つけたのは偶然だったからな」


ヴェルミリアは首を縦に振りながら言う。


「まぁ、これに関してはスライムによって攻撃が通るぎりぎりの魔力量が異なるから訓練するのは難しい。だから、今回の私の訓練は魔力量のコントロールに注視したものになる。内容は私が放つ『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』を魔術を使って相殺するだけだ。すまんが、魔術が使える奴以外はアリシアと模擬戦をしていてくれ」


そう言って、ヴェルミリアの訓練が開始したのだった。


-------------


「うげぇ〜!」


そう悲鳴を上げるのはヴェルミリアの『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』の相殺に失敗して、破裂した『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』によって血まみれになってしまった男の冒険者だ。


「ぺっぺっ、口に入っちまった」


不運にも口に入ってしまったようで、必死に口から吐き出そうとしている。


「調整が甘い!もう少し威力がないと相殺し切れないぞ!」


ヴェルミリアからの指摘に悔しそうに口を歪めつつも反論できていない。


魔力を使いすぎてバテてしまったようだ。


「どうやら魔力切れのようだな。よし、お前は休憩していろ。次は...ファシールか!顔見知りだからって手加減はしないぞ?」


魔力が切れた冒険者に休憩するように指示し、次の訓練生が誰かを確認したヴェルミリアは、その相手がファシールだと分かり、挑発するように言う。


「上等ですよ!ヴェルミリアさんこそ相殺されまくってムキにならないでくださいよ!」


ファシールは意気揚々とヴェルミリアに挑発し返す。


「よくぞ言った!そう言い切ったからには、初っ端でミスするなよ!『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』」


ヴェルミリアはファシールに向かって握りしめた拳ほどの大きさの『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』を放つ。


「『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』」


ファシールはヴェルミリアの『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』に向かって、同じ位の大きさの『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』を放つ。


ファシールの放った『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』はヴェルミリアの『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』を見事に相殺する。


「よし!」

「言うだけのことはあるな」


ファシールは相殺できたことに喜び、ヴェルミリアは当然だといった様子であった。


「次、行くぞ!『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』」


ヴェルミリアは喜んでいるファシールに向かって幼子ほどの大きさの『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』を放つ。


「もう少し余韻に浸らせてくださいよ!『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』」


ファシールはヴェルミリアに文句を言いつつも、先程と同様にヴェルミリアの『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』と同じ大きさの『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』を放ち相殺する。


「いいぞ!もっとだ!『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』──『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』」


ヴェルミリアは最後だと言わんばかりの上半身が収まるほどの大きさの『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』を放ち、少し間を置いてから再び握りしめた拳ほどの大きさの『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』を放つ。


「でけぇ、『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』じゃ無理だな。『炎系統槍系魔術(ファイアーランス)』」


ファシールは『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』では相殺できないと考えたのか『炎系統槍系魔術(ファイアーランス)』を放つ。


大きさを合わせればいい『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』と違い、『炎系統槍系魔術(ファイアーランス)』は球系魔術の相殺が難しいのだが、きちんとヴェルミリアの『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』を相殺する。


「よっし!って、『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』...ふぅ、危ねぇな」


炎系統槍系魔術(ファイアーランス)』で『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』を相殺できて喜んだのも束の間、二つ目の『操血系統球系魔術(ブラッドボール)』が迫っていることに気付いたファシールは慌てて『炎系統球系魔術(ファイアーボール)』で相殺する。


そんなファシールの様子を見たヴェルミリアは口を開く。


「ふむ、ファシール!お前の訓練はここまでだ。今のを見て確信した。この訓練はあまりお前の役に立たないだろう。『創造系魔術(そうぞうけいまじゅつ)』の練習でもしていた方が有益だぞ」


「え、そうですかね」


ヴェルミリアの高評価を受けて半信半疑といった様子でファシールは返事を返す。


その後、アメリもヴェルミリアからお墨付きを貰い、訓練が終了したのだった。

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