Part54 武器でのスライムの倒し方
「皆さん、こんにちは。知っている方もいらっしゃると思いますが、受付嬢のアリシアです。今回の訓練において武器でのスライムの倒し方を教えます。よろしくお願いします」
アリシアはとても丁寧な口調で挨拶と簡易的な自己紹介をする。
「さて、アメリさん」
「は、はい!」
アリシアはアメリの方を見て呼びかける。
「その場に留まるように『水系統球系魔術』を出していただけますか?」
「えっと...分かりました。『水系統球系魔術』」
アメリはアリシアが要求したようにその場に留まる『水系統球系魔術』を放つ。
「それでは、武器を消耗せずにスライムを倒す方法をお見せします。そもそもスライムと戦闘するときに武器が消耗する理由のほとんどがスライムの半透明な体によって溶かされるからです。つまり...溶かされるよりも早く切ればよいという事です」
そう言うと、アリシアはおもむろに剣を構える。
「このように──『一閃』」
瞬間、アメリの『水系統球系魔術』が二つに割れる。
「今の速度とは言いませんが、なるべく早い攻撃で仕留めることが有効でしょう」
アリシアの剣速に驚き、訓練場内が騒然とする。
アリシアはそれを咎めるわけでもなく、「しかし」と説明を続ける。
「中には大剣などの動きが鈍い武器を扱う人もいるでしょう。そのような人の場合どのようにすればいいのか?ここからは少し専門的になるんですが、スライムの核を覆っている半透明の物質が溶かすことのできるものはその物質に直接触れているものに限られます。つまり、泥や植物の蔦なんかで武器を覆っていれば、武器そのものが溶かされることなく核へ攻撃することができます。ですが、武器の切れ味などはあってないようなものになるので、大きな武器で叩き潰すように攻撃しないといけないという注意点があります」
一通り説明を終えたアリシアは「ふぅ」と一息つき、
「今回の訓の仕方ですが、全速力で私に打ち込んでください。その打ち込みの速さで、武器がスライムに溶かされるか否かを私が判断してお伝えします。申し訳ないのですが、今回の私の訓練は大ぶりな武器以外の冒険者が対象となってしまうため、暇になってしまった人は各自で訓練をするか、ヴェルミリアさんと模擬戦をしていてください」
と、訓練の方法を説明するのだった。
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カンと木剣と木剣がぶつかる音がする。
「ふむ、その速度ではスライムに武器を溶かされてしまいますね。『瞬閃』を使った攻撃では十分な速度なので、より早く剣を振れるように頑張ってください」
「ありがとうございました」
アリシアは剣速が足りていないことを冒険者に告げ、告げられた冒険者はアリシアに礼を言ってその場から立ち去った。
「次は…ファシールさんですね。すみません。本当はお二人を優先して訓練しようと考えていたんですけど、ヴェルミリアさんのやる気がすごくて…」
アリシアは申し訳なさそうに言う。
「いやいや、俺達は教えてもらっているだけで満足なので、こうして実際に打ち込みの速度を見てくれるのはありがたいです」
ファシールは謝ることではないとアリシアに伝える。
「そう言ってもらえると嬉しいです。さぁ、まずは技能を用いずに打ち込んできてください」
アリシアは剣を構えて言う。
「いきます!」
ファシールはいまの自分が繰り出せる最速の攻撃をアリシアへ叩き込む。
しかし、アリシアによってファシールの槍はいなされてしまう。
「いい速度です。狙いも正確…ですが、その速度では槍をスライムに溶かされてしまいますね」
アリシアはファシールの攻撃を評価する。
「そういえば、ヴェルミリアさんから聞きましたよ。お二人とも『創造系魔術』を扱えるようになったとか。おめでとうございます」
アリシアは唐突にファシールとアメリが『創造系魔術』を扱えるようになったことを祝福する。
「「あ、ありがとうございます」」
急な祝福に戸惑いつつも二人はアリシアに感謝を伝える。
「『創造系魔術』を扱えるようになったということは、『瞬閃』や『瞬突』も扱えますよね?先程までの打ち込みを見てもらっていたらわかるとは思いますが、『瞬閃』や『瞬突』を用いた攻撃も見たいので、それを使って打ち込んできてください」
アリシアはファシールに『瞬突』を使うように言う。
「分かりました」
ファシールは素直にアリシアの指示に従う。
「いきます!『瞬突』」
木と木がぶつかる音が響く。
「素晴らしい!これくらいの速度があれば、槍を溶かされることなくスライムを倒せますよ」
アリシアはファシールの『瞬突』の速さを称賛する。
「ありがとうございます!」
アリシアに褒められたことが嬉しいのか、感謝の声が少し大きくなっていた。
その後、アメリもアリシアに見てもらい、『瞬閃』であれば武器を消耗せずにスライムを倒せると太鼓判をおしてもらうのだった。




