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傲慢な英雄の書  作者: ヴェルク・メイカー
53/60

Part53 脱出失敗

「よし!後少しで脱出できる」


ヴェルミリアの来訪にいち早く気付いた大剣を持った冒険者は小声でそう呟く。


しかし、


「おいおい、私の顔を見るなり逃げ出そうなんて失礼な奴らだな。『操血系統創造系魔術(ブラッドニードル)』」


そう言って、ヴェルミリアは尖った歯が噛み合あって隙間がなくす要領で、『操血系統創造系魔術(ブラッドニードル)』を噛み合わせて訓練場の出入り口を塞ぐ。


「しまった!」

「くそ!遅かったか...」

「いい人生だったぜ」


冒険者達はこれから行われるであろうヴェルミリアの扱きを想像して悲観し、死を悟ってこれまでの人生を振り返っている者さえもいる。


「はぁ、私の模擬戦形式の訓練が嫌厭されていることは知っていたが──ここまでとはな」


冒険者達の反応を見て、ヴェルミリアは少しショボくれながらも、


「だが、今回の訓練は模擬戦形式じゃないぞ」


と言う。


「やったぜ。今回は役に立つ訓練になるかも」

「遅れて良かったかもしれん」

「やっぱ、まだ生きたかったんだよね」


ヴェルミリアの言葉を受けて冒険者達は歓声をあげる。


そんな歓声の中、ヴェルミリアは


「役に立たない訓練をした事があるみたいに言った奴らは後で模擬戦だ」


と言う。


「「「ぎゃ〜〜〜!!」」」


そして、模擬戦が確定した冒険者達の悲鳴が響き渡るのだった。


-------------


ヴェルミリアとの模擬戦が確定した冒険者達の悲鳴が響き渡る中、長剣を携えた女性の冒険者がヴェルミリアに質問する。


「今回は模擬戦の訓練でないとのことですが、いったいどんな訓練をなさるのですか?」


ヴェルミリアの答えを聞くために周りの冒険者達は絶叫している冒険者達の口を塞ぐ。


「今回の訓練は──武器・魔術によるスライムの簡単な倒し方だ」


「ス、スライムですか?」


訓練の内容が「スライムの簡単な討伐方法」という事に戸惑い、質問をした長剣を携えた女性の冒険者はヴェルミリアに聞き返す。


「そうだ。今回の訓練の内容はスライムの倒し方だ」


ヴェルミリアは女性の冒険者の質問を肯定する。


今回の訓練の内容が訓練場内の冒険者達に伝わっていき、冒険者同士で話をして訓練場内がざわざわとし始める。


「ふむ...まぁ、スライムの倒し方と聞いて「何を今更」と考えている冒険者は多いだろう。しかし、複数のスライムと戦えば武器や防具の耐久、魔力の消費が激しくなってしまう。今回の訓練にスライムの倒し方を選んだ理由はそんなところだ。」


「なるほどなぁ~」

「確かに、スライムを簡単に倒せるなら護衛依頼も楽になるか...」

「今回の訓練の理由はまともだぜ」


ヴェルミリアは冒険者達に訓練の理由を告げ、冒険者達は納得したように頷いたり、思ったことをそれぞれ呟く。


「まぁ、変なことを言ってる奴は後でシメるとして...まずはこの中で魔術を実践レベルで扱える者は手を上げてくれ」


ヴェルミリアの言葉にファシールやアメリ以外に3人程の冒険者が手を上げる。


「なるほど、やはりあまり数はいないな。となると、先に武器で簡単にスライムを倒す方法を教えた方がいいだろう──アリシア、頼むぞ」


ヴェルミリアは後ろを向いてアリシアにウインクをする。


「はぁ、まさかこんな大勢に教えることになるとは...分かりました」


ヴェルミリアが後ろへ下がり、代わりにアリシアが前に出る。


こうして、アリシアによる武器でのスライムの倒し方の伝授が始まったのだった。

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