表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傲慢な英雄の書  作者: ヴェルク・メイカー
52/60

Part52 助言

プレフォロン大森林から領都サリオンまで戻ってきた2人はひとまず冒険者ギルドに足を運ぶことにした。


「たっのも〜」

「懐かしいわね、それ」


そう言いながら入ってきた2人を見て、受付嬢のアリシアは2人に駆け寄る。


「お二人ともどうしたんですか?何か問題が発生しましたか?」


心配そうに尋ねるアリシアに気まずそうにファシールが答える。


「いやぁ、実は二層目からスライムが出てきまして...注意すべきモンスターってことは覚えていたんですけど...対処法がわからなくて聞きに戻ってきました」


そう言って、ファシールはアリシアにスライムの魔石を見せる。


「えぇ!スライムが出たんですか⁉︎それはめんど──大変ですね。ところで、対処法を聞きに来たと仰っていましたが、武器によるものですか?それとも、魔術によるものですか?」


スライムが出たことに驚きつつも、アリシアはファシールたちに武器か魔術、どちらの対策を聞きたいかを尋ねる。


「できればどちらも聞きたいんですけど...」


おずおずといった様子でアメリが答える。


「でしたら」と、アリシアは笑顔で手を叩き、


「武器による対処は私が...そして、魔術による対処はあそこのギルドと提携している酒場で昼間から酒を飲んでいるヴェルミリアさんが教えます」


と言って、店の方を指し示す。


よく目を凝らしてみると、昼間からチビチビと高そうなお酒を飲んでいるヴェルミリアの姿が木の窓の奥に確認できた。


「・・・なんでヴェルミリアさんはこんな真っ昼間から酒を飲んでるんですか?」


ファシールはふと思ったことをアリシアに尋ねる。


「さぁ?私が聞いても「ただ不貞腐れてるだけさ」っと、誤魔化されまして...」


アリシアに過去に聞いても教えてくれなかったと言われ、ファシールとアメリは頭を捻るのだった。


-------------


店に入ると1人暗い顔でお酒を飲んでいるヴェルミリアを見つけ、3人はヴェルミリアに近づいて行く。


「久しぶりです。ヴェルミリアさん」


そう声をかけるファシールはあまり酒の匂いがしないことが不思議だったのか、スンスンと少し匂いを嗅ぐ。


「ちょっと、ファシール」

「いてっ」


そんなファシールの様子を見たアメリはファシールの腹を肘で突き、不意の攻撃にファシールは腹を抑えて痛みを堪えている。


「うん?おぉ!アリシア。それにファシールにアメリじゃないか!もうダンジョンは攻略しきったのか?あと、なんでファシールは腹を抑えているんだ?」


3人を見て少し顔が明るくなったヴェルミリアは疑問に思うことを口早に言っていく。


「私から説明させてもらいますね」


そう言い、アリシアはヴェルミリアの前に立って説明を始める。


「ファシールさんとアメリさんはダンジョンでスライムを発見したので、武器や魔術でより簡単に倒すために領都サリオンまで帰ってきたとのことです」


「ふむ」


アリシアの簡潔な説明を聞いてもヴェルミリアは大した反応を見せない。


「はぁ、なぜ不貞腐れているのかは知りませんが、可愛い後輩が教えを乞うているのですよ!そろそろ切り替えてください!」


「ダン!」と音を立てて机を叩き、アリシアはヴェルミリアに発破を掛ける。


「う〜む」


数瞬、悩んだ様子を見せたヴェルミリアだったが、


「よし!」


そう言って、ヴェルミリアは残っていた酒を呷る。


「分かった。私が魔術でスライムを倒す方法を教えてやる」


こうして、ヴェルミリアはファシール達の頼みを受け入れるのだった。


-------------


通常、冒険者ギルドの訓練場には依頼を受けていなかったり、依頼を終えても元気が有り余っている冒険者達が自分の身体や技、連携などを磨いている。


その日も例外ではなく、訓練場では十人以上の冒険者達が己を磨いていた。


そんな平和な訓練場に気合の入った冒険者が入った。


アリシアに励まされてやり気に満ちているヴェルミリアである。


「ん?あ、あれは...」


ヴェルミリアを見た瞬間に顔を青ざめさせて、柔軟運動をしていた冒険者が床に置いていた大剣を拾って訓練場を退出しようとする。


また、別の場所で五人パーティが連携の訓練をしていた。


「うん。いい連撃だったよ」


パーティの斥候役であろう短剣を携えた冒険者が他のパーティメンバーの連携攻撃を見て褒める。


「でも、もう少し速度を...あれは『紅色(べにいろ)』?まずい!あの顔はやる気に満ちてる顔だ」


連携攻撃をより良いものにするために意見を出そうとしていた短剣を携えた冒険者は『紅色(べにいろ)』ことヴェルミリアを見つた。


そして、ヴェルミリアの顔がやる気に満ちていることに気付き、小声でパーティメンバーに警告する。


「「「!?」」」

「!?まずいわね。やり気に満ちた『紅色(べにいろ)』の訓練は地獄だったて噂よね?早く荷物をまとめて脱出するわよ!」


長剣を持っていた女冒険者は鞘に長剣をしまい、ヴェルミリアに聞き取られないように小声でパーティメンバー指示を出す。


同じように、訓練場内にいた全冒険者が訓練場から脱出するために動き出す。


こうして、ヴェルミリアによる地獄の扱きを回避するために訓練場からの脱出劇が始まるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ