Part47 ダンジョン・第1層 ファシール vs コボルト・リーダー
ゴブリン・リーダーが2人の魔術で倒れる。
しかし、まだコボルト・リーダーは生きていた。
「ガルル」
2人が声がする方へ目を向けると、満身創痍な様子のコボルト・リーダーがファシールを鋭く睨んでいた。
「手伝いはいる?」
「いや、俺がやる」
「そう」
2人の短い会話を終えるとファシールが前へと踏み出す。
「俺の魔力はほぼすっからかんだが、まだ気力が残ってる。テメェと一騎討ちしてやるよ」
そう言ったファシールは槍を構えて、コボルト・リーダーの出方を窺う。
「ガル」
コボルト・リーダーも拳を構えてファシールの隙を窺っているようだ。
「ゴクリ」と誰かが唾を飲み込む音が聞こえる。
その刹那、『猟犬脚』による急加速と『突進撃』の加速の合わせ技で高速でファシールに近づく。
「ガラァ!」
コボルト・リーダーは『瞬撃』でファシールに攻撃を試みる。
「こい!『瞬突』」
対して、ファシールはアリシアとの訓練を生かし、コボルト・リーダーの凄まじい速度の攻撃を槍で捌いていく。
「ふっ!『二連突』」
ファシールはコボルト・リーダーの連撃を受け切り、『瞬突』ではなく『二連突』反撃をする。
「あのバカ!」
遠巻きに見ていたアメリがファシールの様子を見て咄嗟に言う。
そんなアメリの様子は知らずにファシールは純粋に戦いを楽しんでいた。
その顔にはとても晴れやかな笑顔があった。常人から見れば気でも狂ってしまったのかと心配されるほどに...
そんなファシールの様子に引っ張られたのか、狼の顔をしていて分かりずらいがコボルト・リーダーも笑っているようだ。
「ガルァ!」
コボルト・リーダーはファシールに向けて『飛翔撃』を放つ。
さらに、コボルト・リーダーは再び急加速してファシールの隙を狩るために『飛翔撃』と共にファシールに襲いかかる。
対して、ファシールは、
「こい!『飛翔突』」
コボルト・リーダーの『飛翔撃』をファシールの『飛翔突』で相殺しつつ、コボルト・リーダーの攻撃に備える。
「ガァ!」
「ふっ!」
コボルト・リーダーの爪とファシールの槍が連続で交差する。
まるで刃と刃がぶつかるかのような音かあたりに響く。
「やっぱ、お前の爪硬すぎだろ!『瞬突』」
「ガルッ!」
ファシールは文句を垂れつつコボルト・リーダーの連撃の隙間に『瞬突』を差し込む。
ファシールの『瞬突』に反応してコボルト・リーダーも『瞬撃』でファシールの攻撃をいなしていく。
「『超反応』に『猟犬脚』、そんでもってその硬い爪は『爪刃術』か?そんなスキルを継続させつつ、さらに技能を使ったとなったら・・・そろそろ気力が底を尽きてきたんじゃないか?」
そう語りかけるようにコボルト・リーダーに言う。
「ガル」
ファシールは返事を期待していたわけではないのか、コボルト・リーダーの肯定とも取れる声が返ってきて目を見開いていた。
「そうかよ。じゃあ、次が最後だな。行くぞ!『突進突』」
ファシールが『突進突』で加速してコボルト・リーダーへと突っ込んでいく。
「なけなしの魔力をくれてやるぜ!『炎系統創造系魔術』そんでもって、『瞬突』!」
ファシールの槍が炎を纏いながら、コボルト・リーダーへと向かう。
「ガルッ!」
コボルト・リーダーも槍に纏わり付いた炎に気付いていないわけではないが、『爪刃術』と『瞬撃』も使って受ける選択をしたようだ。
「はぁぁ!」
「ガルァア!」
そうして、ファシールの『瞬突』を受け切れなかったコボルト・リーダーが地に伏す。
「勝っっったぁ〜」
そう言いながらファシールは極度の疲れからなのか大の字で後ろに倒れる。
「ちょっと、ファシール!大丈夫?」
アメリが心配そうにファシールの顔を覗き込むと、そこにはスヤスヤと気持ちよさそうに眠るファシールの顔があったのだった。




