Part42 ファシールの適性
「取り敢えず、まずは自分のしたいことから『創造系魔術』を試してみろ。それで見つかったら御の字だからな」
そう言われたファシールとアメリは己がどのような魔術を使いたいか考える。
「じゃあ、俺は爆発だ!いくぜ!『炎系統創造系魔術』!」
しかし、ファシールが出した魔術はただの炎の塊であった。
「くっそ〜!──っあで!」
「バカたれ!こんな密閉空間で爆発させようとすんじゃねぇ!」
ヴェルミリアはファシールに拳骨を落とす。
「よし!じゃあ私はより回復量が高い魔術を造りたい。『光系統創造系魔術』!」
アメリが唱えた後、一際輝く光の塊が出現した。
「あ〜〜、そりゃ失敗だぜ」
「そんな...残念」
ヴェルミリアに指摘されてアメリは項垂れた。
「まっ、気長に試していけば良いさ」
ヴェルミリアの言葉を受け、2人は試行錯誤するのだが──昼食の時間になっても自らの適性を見つけ出すことはできなかった。
-------------
「くっそ〜なんで上手くいかねぇんだ?」
昼飯である焼かれた骨付き肉をクルクルと回しながら、ファシールは自分の適性が見つからない事に文句を垂れる。
「そうねぇ…ヴェルミリアさんはどうやって自分の適性を見つけたんですか?」
ブーブーと文句を言っているファシールを尻目にアメリはヴェルミリアに質問する。
「ん?そうだなぁ〜私の場合はやりたかった事が適性だったから、自分の経験をもとにアドバイス出来ないんだよなぁ。ただ、何人かの適性は見つけたことがあるんだか、そいつらが言うには「自分が最も使いやすい魔術に近い感じがする」って言っていたな。この場合、私なら『操血系統刀系魔術』が使いやすい感覚があるからおそらくあっているだろう」
ヴェルミリアはアメリの質問になんてことないことのように答える。
「へぇ〜って、なんで最初の方に教えてくれなかったんですか⁉︎」
ヴェルミリアの答えに初めは感心していたが、自分の適性を見つけるのに分かりやすい傾向があったことに気付き、少し声を荒げてヴェルミリアに問う。
「いやすまん。忘れていた訳じゃないんだが、記憶の奥に埋もれていたというかなんというか…」
「それを忘れていたって言うんですよ!」
ヴェルミリアがしどろもどろに言い訳をするが、アメリには通用せずに怒られてしまった。
「お、おいアメリ。落ち着け。これで適性が見つけやすくなったし良いじゃねぇか」
そう言ったファシールに諭されアメリの興奮が落ち着いていったのだった。
-------------
昼食を終えた3人は再び訓練場に戻っていた。
「よし!俺が使いやすいなぁ〜と思っていた魔術は『炎系統纏系魔術』だぜ!こっから俺の適性を考えると…全く分からん!想像も出来ねぇ」
清々く分からないと言うファシールに対し、アメリは
「う〜ん。使いやすい魔術って言われても分からないわね」
と、頭を悩ませていた。
「ふむ。ファシール、纏系が得意なら槍に纏わせたりする魔術はどうだ?」
ヴェルミリアは得意な魔術が分からないアメリは置いておいて、得意な魔術が分かっているファシールにアドバイスする。
「面白そうだな!じゃあ、ちょっと槍を拝借してっと」
そう言いながら、ファシールは訓練場にある木槍を手に取る。
「いくぜ!『炎系統創造系魔術』!」
その瞬間、ファシールが手にしている木槍に炎が燃え広がる。
「ちょっ!なに燃やしてんのよ、ファシール!」
アメリはそう言うが、
「いや、違う。あれは木槍が燃えているのではない。木槍が炎を纏ってるんだ」
ヴェルミリアにそう言われたアメリは木槍の状態をしっかりと確認する。
「うそ...本当に木槍が燃えずに炎を纏ってる。て言うかファシールはその木槍を持っていて熱くないわけ?」
木槍が燃えたと動揺したアメリだったが、木槍が燃えていないとわかり落ち着きを取り戻し、次に炎に触れているであろうファシールを心配する。
「おう!熱いっつうか、暖かいってかんじだぜ」
アメリの心配とは裏腹に、ファシールは火傷どころか熱いとすら感じていないと言う。
「ふむ。少し木槍を触らせてもらうぞ」
そう言ってヴェルミリアは木槍に触れようとするが、
「む⁉︎なるほど、術者以外には高熱が伝わるのか...不思議なものだな」
木槍が纏っている炎に触れた瞬間に、ヴェルミリアは木槍から手を素早く離し、「面白い」といった顔でそう分析する。
「アメリもやってみろよ。案外、出来るかもしれねぇぜ」
未だに適性が見つかっていないアメリに、ファシールは自分と同じことをしてみろと促す。
「分かったわ」
そう言って、木剣を手に取ったアメリは一息入れ、
「『水属性創造系魔術』」
と唱える。
結果は、木剣が水浸しになっただけであった。
結局、この日にアメリの適性は判明しなかった。




