Part41 推察と訓練
「私はこう考えた。ゴブリン・キングたちはダンジョンから出てきたのではないか、と」
ヴェルミリアは自身の推察を言う。
「───やはり、か」
そう重々しく口を開いたのはギルド長のテッドであった。
「俺も元冒険者としての勘もそう囁いてはいたが・・・だが、一つだけ引っかかることがある。通常であれば、理由は不明だがダンジョンからモンスターは出てこれないはずだ。これはダンジョンに行ったことがある冒険者なら誰でも知っている。そして、モンスターがダンジョンから出てくる時は決まってさまざまな種類のモンスターが溢れ出す『大氾濫』の時のみだ。何故、ゴブリン・キング達がダンジョンから出てきたと考えたのだ?」
己の冒険者としての勘と同じ結論に至ったヴェルミリアを見ながら、テッドは自身の経験からは有り得ない事態が答えだと言う理由を問う。
「テッドの言う通り、何故かは分からないがダンジョンからモンスターは出てこない。しかし、『大氾濫』という例外がある以上、他にもモンスターがダンジョン外に出ることが出来る方法があるかもしれないと考えるの当たり前のことだ。例えば、帝国ではモンスターを操る術を得ることが出来るとも聞く。何者かがダンジョンからモンスターを外に放ったと考えることもできる」
ヴェルミリアは「ふぅ」と息を吐き、いつの間にか用意されていた紅茶を啜る。
「第一、他にゴブリン・キングが唐突にプレフォロン大森林に発生する原因がない」
そう言ってヴェルミリアは報告を締め括った。
「そうか...わかった。依頼主には俺から報告しておくから2人の訓練を頼んだぞ」
テッドはまだ少し疑問が残っているような顔をしていたが、それでもある程度の納得したのかヴェルミリアにファシールとアメリの訓練を引き継いだ。
「任せておけ。行くぞ!2人とも」
そう言ってヴェルミリアはファシールとアメリを訓練場まで引っ張っていくのだった。
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訓練場はあいも変わらず閑散とした様子で冒険者は誰一人として訓練していなかった。
周囲に他の冒険者がいないことを確認したアメリがヴェルミリアに問う。
「あ、あの!私たちが先ほどの話を聞いていて本当に良かったのでしょうか?」
その問い対し、ヴェルミリアは
「ん?あぁ、良いんだよ。最初にも言っていた通り、あの話はお前たちの指名依頼にも関係しているからな」
ヴェルミリアは呆気からんと言った様子で言い放つ。
「それよりも、お前たちは『創造系魔術』を使うことが出来るか?もし出来るのんだったらそれについて教えようと思っているんだが・・・」
ヴェルミリアは2人に問う。
「なんか、ゴブリン・アーチャー・ロードを倒したぐらいから新しい魔術を使えそうって感覚はあるんですけど使い方がわかんなくて困ってたんですよね。もしかして、これが『創造系魔術』ですか?」
そう言いながら、ファシールは炎の塊を出現させた。
『炎系統球系魔術』のように標的に向かって飛んでいくこともなく、ただただ、ふよふよと炎の塊が浮くのみで、やがて消失した。
「うむ、そうだ。それが『創造系魔術』だ。扱うには癖があるが、極めれば取れる選択肢がさらに多くなるからな。アメリも使うことが出来るか?」
ヴェルミリアはアメリも扱うことが出来るのか問う。
「はい」
そう言ってアメリは水の塊を出現させる。
「そりゃよかった。じゃ今から『創造系魔術』の扱い方を説明する。簡潔に言えば読んで字の如くその属性を使った『魔術』を創造することが出来る。私の『操血系統創造系魔術』も『血を固めて剣を造る魔術』を創造したものだ」
ヴェルミリアは説明しながら『操血系統創造系魔術』で生成した血の剣を見せなる。
「そんでもって、『創造系魔術』で『魔術』を創造する方法だが──気合いだ‼︎」
「えっ?」
「はぁ?」
先程までの真面目な説明とは打って変わった根性論に思わずアメリとファシールは困惑した様子で声を漏らす。
「あぁ、勘違いしないでくれよ。『創造系魔術』といってもどんな魔術を造れる訳ではない。それぞれに適正があって、それを見つけるのに気合がいるってことだ。私の知り合いに『毒を浄化する魔術』は造れるが、『病を浄化する魔術』が造れないと嘆いていた奴がいてな、『創造系魔術』で創造できる『魔術』の適性が必ずしも自分のやりたい事にマッチしている訳ではないから、適正を見つけるのには根気がいるんだ」
そう説明して、2人の誤解を解く。
「じゃあ、自分の適正を見つけようか」
こうしてヴェルミリアによる訓練が開始した。




