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傲慢な英雄の書  作者: ヴェルク・メイカー
35/60

Part35 特別褒賞

「おお、4人とも来たな。ちゃんと報酬は受け取ったか?」


ヴェルミリアは自分の所に来たファシール達に質問する。


「はい、ちゃんと受け取りました」


アメリが4人を代表してヴェルミリアの質問に答える。


「それならいい。領都についた時にも言ったが次は領主邸に行くぞ。身形や言葉遣いなんかは特に気にしなくてもいいぞ。なんせ、セドリックがあんなんだからな。あいつの息子も礼儀作法なんて無くていいだろ」


なんて、ヴェルミリアが馬鹿なことを言っていると、


「そんなわけないじゃろ」


ゴツン、とセドリックがヴェルミリアに拳骨を落とす。


「ぐぁ、いった~。冗談に決まっているだろ、セドリック!というかお前、領主邸に行ってるんじゃなかったのかよ」


「そうじゃ。そして、現領主のアベルに報告を終えて暇を持て余しっとったらの、領主邸から冒険者ギルドに迎えの馬車がちょうど出るところだったのでの。乗ってきたのじゃ」


セドリックがヴェルミリアの質問に答えた後、ファシール達に向き直る。


「さて、とはいっても貴族のようなかしこまったような態度でならないというわけではないのじゃぞ。ただ、人として必要最低限の礼儀は必要じゃ。まあ、お主らなら大丈夫じゃろ。さあ、この馬車に乗るのじゃ」


セドリックはファシール達を馬車に乗るように促す。


ヴェルミリアはまだ何か文句を言っているようだが、セドリックは適当にあしらっていることから、いつものことなのだろう。


そして、ファシール達を乗せた馬車は領主邸へと出発したのだった。


-------------


「お帰りなさいませ、セドリック様。そして、サリオン邸へようこそお越しくださいました、お客様方」


ファシール達が馬車から降りると初老の執事らしき人が老いを感じさせない姿勢で立っていた。


「長距離を歩いてこられたという事で、当家のものが皆様の荷物をお運びいたします」


初老の執事が合図を送ると、部下らしき人たちがファシール達の荷物を預かりにファシール達の下に移動する。


「おう、久しいな!ランベリック」


「・・・これはこれは、ヴェルミリア様。以前お会いした時と変わらぬ美貌でございますね。未だに気楽な一人旅をしていらっしゃるのですか?」


ランベリックは挨拶をしてきたヴェルミリアに少し棘があるような返事をする。


「なんだかあの人の笑みが怖しっス」

「ええ、ヴェルミリアさん何をやらかしたのかしら」


スーリルとアメリはランベリックの笑みに黒いものを見たようだが、


「そうか?」

「・・・?」


ファシールとダンジェスはよくわかっていないようだ。


「あぁ!やはり旅は一人の方が気楽でな。護衛依頼があるとき以外は今もまだ一人旅している」


ヴェルミリアもランベリックの態度に気付いていないのか、ランベリックに対し快活な返事をした。


「・・・それは良かったです。それでは、当家の応接間にご案内いたします」


小さくため息を吐いた後、ランベリックはファシール達を応接間まで案内するのだった。


-------------


「すっげぇ~」

「広いっス」


ファシールとスーリルは応接間の中を見てそう感想をこぼす。


「では、こちらにおかけになってください。私は紅茶を入れてまいりますのでそれまでリラックスしておいてください」


そう言い残し、ランベリックは応接間から出て行った。


「それにしてもセドリック様とヴェルミリアさんはどこに行ったんスかね?」


「わからないわ。でも、「ヴェルミリアと少し話してくるから」と言っていたからすぐに合流するんじゃないかしら」


そう何気ない話をしていると、


「セドリック!なんで自分が住んでる屋敷の応接間の場所がわからないんだ!」


「そう言うでない、ヴェルミリア。他家との交流は基本的にパーティだけで、交渉は自ら赴いていたから応接間を使ったことがほとんどなかったのじゃよ」


「こちらでございます」


そう会話が聞こえてき、ランベリックが応接間の扉を開く。


セドリック、ヴェルミリア、ランベリックの順で応接間に入り、ランベリックが人数分──いやそれより一つ多く紅茶が入れられる。


ランベリックが紅茶を入れ終わったと同時に


「すまない。少し書類整理に戸惑ってね」


と言いながら、上品な服を着た男が応接間に入ってきた。


「おっと、自己紹介がまだだったね。私はアベル・サリオン。一応、この領都サリオンの領主をしているよ。よろしくね」


そう言いながらアベルはファシール達一人一人と握手していく。


「それじゃあ早速だけど、君たち4人にロード級ゴブリンを倒したことに対する特別褒賞を与えるよ。とは言っても、こちらが報酬を決めていると、納得しないかもしれない。それは僕の望むところではない。しかし、君たちの願いをなんでもかなえるわけにはいかない。そこで、いくつかある選択肢の中から「これだ!」と思うものを選んでもらうことにしているんだ」


アベルはそうニコニコしながらファシール達に褒賞についての説明をする。


「1つ目!これは簡単でお金だよ。冒険者ギルドとは別口で100,000フランツを選んだ者に渡そう。2つ目!これはちょっと難しいんだけど、選んだ者には当家が保有する武具を1つ進呈しよう。ただ、『聖剣(せいけん):アウリエル』みたいな特殊なものは渡せないよ。ごめんね。そして、最後の選択肢である3つ目!これは少し特殊でバリーという鍛冶師への紹介状を渡そう。これがあれば、君たちを無下にはしないだろうが、彼は少し気難しくてね。いい素材がないと真剣に相手をしてくれないだろう。さて、これで説明は終わりだよ。さあ、どれを選ぶ?」

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