Part34 凱旋と招待
どんちゃん騒ぎな夜が明け、冒険者たちは仮拠点を破壊していく。
「ゴブリンからの攻撃に耐えるために頑丈に作られてるからか、この壁かったいなぁ~」
ファシールが『土系統壁系魔術』で作られた壁を崩しながらそうぼやく。
「つべこべ言ってないで、さっさと片付けないと領都サリオンに戻れないわよ」
「そうっスねぇ~アメリさんも早く帰ってファシールさんに甘えたいっスもんね!」
アメリは調子のいいことを言うスーリルにドコッという音がきこるような拳骨をお見舞いした。
「いてぇっス!」
「バカなこと言ってるからよ!」
頬を赤ながらアメリは作業を再開するのだった。
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「よし!積荷の確認は済んだ?出発だ!」
ヴェルミリアたちは馬車に積んだ荷物を確認し、『土系統壁系魔術』が取っ払われた元仮拠点を後にした。
「それにしても、今からどれくらい歩くんだ?」
「そうねぇ〜だいたい馬車の3倍くらいはかかるんじゃないかしら?」
「うぎゃ〜それじゃ9時間も歩かなきゃならねぇじゃねぇか〜!」
ファシールは領都サリオンまで9時間も歩かなければならないという事実に辟易したような声を出す。
「そうそう悪いことばっかじゃないっスよ、ファシールさん。9時間もあればお二人の馴れ初めを聞くことだってできるっス!」
フンスフンスと鼻息を荒くしたスーリルがアメリに向き直る。
「オラも気になるダス。二人ともまだ若いのにどうやってそんなに強くなったんダスか?」
ダンジェスが少し真面目な顔でファシールに尋ねる。
そうして話をしながら歩いたり、休憩がてら昼食をとったりしていると、あっという間に領都サリオンへ帰還したのだった。
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領都サリオンに到着すると住民が冒険者たちやレオニスたちを褒め称えるような歓声が飛ぶ。
レオニスの護衛隊の一人が早馬で報告した影響だろう。
「すごい歓迎ムードだな」
「そらそうっスよ。なんせ、ゴブリン・キングの軍勢が領都サリオンに攻めてきたら、何割の領民が死ぬがわからないっスからね」
「そんなものなのね」
「だから緊急依頼って言われてるんダスよ」
4人がそう会話を交わしていると、
「4人とも揃っているな、お前たちはロード級のゴブリンを1体倒しているから、特別報奨が与えられる。よって、冒険者ギルドで金貰った後に領主邸まで行くぞ。準備しておけよ」
「はい!って、えぇ〜〜!!」
アメリは反射的に返事をしたが、ヴェルミリアに「領主邸に行くぞ」と言われて驚愕していたが、他の3人はピンときていなようだ。
「なぁ、アメリ。領主邸ってさ、あのバカでかい屋敷のことじゃないよな?」
ファシールはヴェルミリアに言われた「領主邸」がサリオン邸を指しているかもしれないと気付き、アメリに尋ねる。
「そうに決まってるでしょ⁉︎セドリック様とレオニス様がいたのよ?」
「「「えぇ〜〜!!!」」」
ヴェルミリアの言っていた事の重大さに今頃気付いたのか、3人とも絶叫するのだった。
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絶叫した3人とアメリは周囲の冒険者たちに注意され、トボトボと歩いて冒険者ギルドに帰還した。
その後、4人はアリシアの受付の列に並んだ。
「お疲れ様でした。ファシールさん、アメリさん。お二人とも、とても活躍したそうですね。さきほど、ヴェルミリアさんが自慢して周ってましたよ。なんでも「あいつらの才能は凄いぞ。私が育てたいくらいだ!」なんて言ってました」
ファシールたちの順番になりアリシアがちょっとした世間話をする。
「いやいや、活躍したのは俺たちだけじゃないよな、アメリ」
「そうね。スーリルとダンジェスの助けがなかったら倒すことはできなかったと思うわ。」
ファシールとアメリはそう言って二人を褒める。
急に褒められたことに照れているのかダンジェスは頭を掻いて誤魔化しているようだが、スーリルは頬を掻いて「へへへ...」と言っており完全に誤魔化せていない。
そんな二人の様子にアリシアも好感を持ったのだろう。
「ふふふ、そう照れなくても良いんですよ?自身の功績に胸を張っていなくれませんと、他のロード級のゴブリンを倒した方が遠慮してしまうかもしれません」
アリシアにそう言われるもダンジェスとスーリルはまだ照れ臭いようだ。
「それはそうと、4人に緊急依頼の報酬をお渡ししますね。ロード級のゴブリン1体、リーダー級のゴブリンを1体、ハイゴブリン級を3体、ゴブリンを18体と言うことで、合計58,500フランツ。一人あたり14,625フランツです。緊急依頼お疲れ様でした」
4人はそれぞれアリシアから14,625フランツが入った袋を受け取って次の冒険者に場所を譲り、何故かすでに飲み始めているヴェルミリアの所まで足を運ぶのだった。




