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傲慢な英雄の書  作者: ヴェルク・メイカー
31/61

Part31 ゴブリン大討伐 ・ 策

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ファシール達の策には2つの目的がある。


1つはゴブリン・アーチャー・ロードの矢を使い切らせるという目的。


そして、もう一つはゴブリン・アーチャー・ロードの機動力を奪うという目的である。


これらを達成するのに必要な人物こそがスーリルである。


-------------


「スーリル、次はどっちだ⁉︎」


「こっちっス」


スーリルの後を追いかけて行く。


「来たダス」


しばらく同じ方向に進んで行くとゴブリン・アーチャー・ロードから矢が放たれ、タンジェスが斧で防ぐ。


ゴブリン・アーチャー・ロードは己の存在が明らかになった今、敵の隙を待つことはない。


ただただ、距離を取っては矢を射る。


敵の攻撃が届かない安全圏からの攻撃をするのみである。


しかし、


「そこね!『水系統光線系魔術(ウォーターレーザー)』」

「オラ!!『炎系統光線系魔術(ファイアーレーザー)』」


アメリの『水系統光線系魔術(ウォーターレーザー)』とファシールの『炎系統光線系魔術(ファイアーレーザー)』という弓の射程と同等かそれ以上の射程を持つ敵との戦闘で焦りが生じていた。


-------------


ゴブリン・アーチャー・ロードは賢い魔物である。


ともすればそこらへんの盗賊よりも賢いかもしれない。


だからこそ、あらゆることを考える。


「自身の矢が先に尽きてしまうかもしれない」、「なぜかこちらの位置がバレている⁉︎」、「ゴブリン・キングの命令を無視したのに撤退したら殺されてしまう」など、様々な可能性が頭をよぎる。


そこで思い出す。


「最初の反撃に敵は矢を2本使っていた」と。


「であれば、矢の消費は敵の方が多い。よく見たら敵の魔術は矢ほど早くないから避けられる」とゴブリン・アーチャー・ロードは自分に有利なことばかりを考える。


もはや、ゴブリン・アーチャー・ロードは慢心さえしていた。


渡せれた情報が敵の策略によって意図的に渡された可能性を考えずに──


-------------


「アメリ、そろそろ行けそうか?」


「ええ、ゴブリン・アーチャー・ロードの逃げる時の癖はだいたい掴んだわ」


「よし!次でゴブリン・アーチャー・ロードの機動力を奪うぞ!」


ファシール達の策は次の段階に進んでいた。


ファシール達が執拗にゴブリン・アーチャー・ロードを追いかけていた理由は、ゴブリン・アーチャー・ロードが矢を射てから逃げる時の癖を把握するためである。


「来たダス!」


ダンジェスがゴブリン・アーチャー・ロードの矢を防ぐ。


「アメリ!」


「『光系統光線系魔術(ライトレーザー)』!」


ファシールに呼びかけとほぼ同時にアメリがゴブリン・アーチャー・ロードに向けて『光系統光線系魔術(ライトレーザー)』を放つ。


「ッ!─グギャギャ!」


攻撃を受けて木から落ちたゴブリン・アーチャー・ロードは「なんだ、その攻撃は!」とでも言いたそうな顔でファシール達を見る。


「「なぜだ!」とでも言いたそうな顔をしているな。まあ、教えるわけないけど。『炎系統壁系魔術(ファイアーウォール)』」


ファシールはゴブリン・アーチャー・ロードがまた逃げ出さないように『炎系統壁系魔術(ファイアーウォール)』で退路を断つ。


「よっしゃ!あん時の借りを返してやるぜ」

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