Part28 ゴブリン大討伐 ・ ヴェルミリア & セドリック vs ゴブリン・キング 1
ヴェルミリアとセドリックがゴブリン・キングに向かって駆け出すのと同時にゴブリン・キングが敵の接近に気付く。
「ぐるぁぁあぁ!!」
「うるさい!『操血系統矢系魔術』」
ゴブリン・キングの雄叫びの声量に顔をしかめながらも、ヴェルミリアは『操血系統矢系魔術』で牽制する。
「ワハハハハ、そう言うでない、ヴェルミリア!おっと、『返し斬り』」
ゴブリン・キングの手刀に対して『返し斬り』を使ってカウンターを入れるも、
「なんじゃあ、こいつ。かったいの〜『一閃』」
薄皮一枚ほどしか切れておらず、セドリックが文句を言いながらも『一閃』を放つ。
「そう文句を言うな、セドリック『飛翔斬』『操血系統刀系魔術』。昔のお前だったらより元気になっていたであろう⁈」
ヴェルミリアもセドリックと会話をしながらも『飛翔斬』、『操血系統刀系魔術』で攻撃する。
対して、ゴブリン・キングは飛翔斬を回避した後、『操血系統刀系魔術』を拳で破壊する。
「無茶苦茶じゃのぅ、魔術は拳で破壊できるものではないと思うのじゃが──『魔術拳』の効果かのう?」
「おそらくそうだろうな…少し魔術は控えるか」
セドリックはゴブリン・キングが『操血系統刀系魔術』を破壊できたカラクリを看破し、ヴェルミリアは攻撃方法を改めて思案する。
「ぐるるるる」
ゴブリン・キングは雄叫びをあげたのに配下のゴブリンたちが集まらないことと、敵が己の攻撃を悠々と回避しながら会話をしていることに苛立ちを覚えていた。
そこで、ゴブリン・キングは鬱憤を晴らすために攻勢に出る。
「ワシの方が弱そうと判断されたのかのう?舐められたものじゃ」
狙われたのはセドリックだった。
老いた人間の方が若い女よりも簡単に仕留められると思ったのだろう。
ゴブリン・キングは『突進撃』でセドリックに急接近し、『魔術拳』を乗せた『瞬撃』で攻撃する。
並の者では武器で防御したとしてもその武器ごと破壊されていただろう。
しかし、セドリックは『剣聖』であった。
「『受け流し』」
ゴブリン・キングの攻撃をいとも簡単にいなしていく。
「ぐるぅ?」
ゴブリン・キングは自身の必殺とも言える攻撃のその全てを軽く受け流されたことに疑問を問いかけるような声を出す。
「なぜ、とでも言いたそうな声じゃのう。ワシの剣は『聖剣:アウリエル』──ゴブリン・キング如きの攻撃で破壊されるような武器ではないのじゃ『瞬閃』」
セドリックがゴブリン・キングに『瞬閃』で反撃する。
「それにしてもかったいのぅ」
しかし、ゴブリン・キングの驚異的な頑丈さに攻撃が通らず、セドリックは辟易とした声で文句を言う。
「『操血系統創造系魔術』──これなら、どうだ⁉︎」
『操血系統創造系魔術』を使い、持っていた血の長剣を血の金槌へと変貌させる。
そして、ヴェルミリアは血の金槌でゴブリン・キングの頭を砕く勢いで振り下ろす。
「ぐるぁ」
ゴブリン・キングは頭への衝撃はあったようだが、やはり攻撃が通っていない。
「ぐは」
ゴブリン・キングがヴェルミリアに『一撃』で反撃し、ヴェルミリアの腹に風穴を開ける。
誰が見ても致命傷に思える攻撃を受けたヴェルミリアは笑っていた。
そんなヴェルミリアの様子を見たゴブリン・キングはヴェルミリアの下から即座に離脱する。
「相変わらず気持ち悪いのぅ〜」
「助かるよ」
ヴェルミリアの腹に空いた風穴がグジュグジュと音を立てながら塞がってゆく光景にセドリックは素直な感想を言う。
「指を切るだけでは血の量に不満があったのでな。『操血系統創造系魔術』」
完全に塞がった腹を触りながら、ヴェルミリアは『操血系統創造系魔術』で血のガントレットを手に創造する。
「そうそう、その血は早く拭いた方がいいぞ。『操血系統創造系魔術』」
「グギャァ‼︎」
ゴブリン・キングの右腕に付着していた血を極小の針に変化させゴブリン・キングの腕に『操血系統創造系魔術』で埋め込む。
無数の鋭い痛みにゴブリン・キングは思わず声を上げる。
「このガントレットで殴るたびに貴様の体に極小の針を埋め込んでやろう!それに貴様、攻撃は通らずとも衝撃はその身を駆けてゆくようだな」
「相変わらず恐ろしいこと考えるのう、ヴェルミリア」
「五月蝿いぞ、セドリック。それにお前もまだ全力じゃないだろう?」
「ボクはもう年寄りなんだけどねぇ」
セドリックの一人称が変わる。
まるで、昔のセドリックに戻ったように…
「でもまぁ、そろそろ飽きてきたし、ボクも全力で行くよ。『聖剣解放』」




