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2.試練

アルフレッドの旅立ちは順調とは言えなかった。地図を頼りに北を目指していたが、初めての一人旅は彼にとって過酷だった。陽が沈むと寒さが身に染み、夜明け前の森では得体の知れない生物の鳴き声が響く。食糧は村で持たされた干し肉とパンだけ。疲労が彼の体を重くし、心には不安が忍び寄る。


そんなある日、アルフレッドは深い森の中で奇妙な老人と出会った。老人はぼろぼろのローブをまとい、杖を手にしていたが、その目は鋭く光り、まるで彼のすべてを見透かしているかのようだった。


「少年よ、焔の継承者か?」


突然の言葉にアルフレッドは息をのんだ。どうしてこの老人が自分の力のことを知っているのか。警戒心を抱きつつも、彼は短く答えた。


「……そうだ。それが何か?」


老人はニヤリと笑った。

「やはりな。その魔力の匂いは特別だ。隠そうとしても無駄だよ。」


「お前は何者なんだ?」

アルフレッドは身構えた。魔法を使える者特有の独特な気配を老人から感じたのだ。


「名乗るほどの者ではない。ただ、通りすがりの研究者だよ。私の名はサルヴァ。焔の継承者について少しばかり知識がある。もし興味があれば教えてやろう。」


「知識だって? 何を知ってるんだ?」


サルヴァは杖を地面に突き立て、低い声で語り始めた。

「焔の継承者は、古代から存在すると言われる者たちだ。その力は、天災に匹敵する破壊力を秘める。だが、その力は不安定だ。お前のような若者が持つには重すぎる運命だろう。」


アルフレッドの眉がぴくりと動く。自分がその力を扱えないと断言されたことが悔しかった。

「俺はその運命に勝つために旅をしているんだ。力を制御する方法を見つけるためにな。」


サルヴァは興味深げにアルフレッドを見つめた。

「いいだろう。では、私がお前に一つ試練を与えよう。この森を抜けた先に“赤の洞窟”と呼ばれる場所がある。そこには焔の精霊が眠っている。その精霊を目覚めさせ、力を受け取ることができれば、お前は一歩前に進めるだろう。」


「精霊……?」

アルフレッドは聞きなれない言葉に戸惑いながらも、その言葉に胸が高鳴るのを感じた。


「ただし、一つだけ忠告しておく。精霊は気まぐれで気難しい存在だ。お前の力にふさわしいかどうかを試すだろう。もし拒まれれば……命を落とすことになるかもしれん。」


サルヴァの言葉には警告の響きがあったが、それでもアルフレッドは迷わなかった。


「分かった。その試練、受けてみせる。」

少年の瞳には強い決意が宿っていた。


赤の洞窟


サルヴァの指示に従い、アルフレッドは森を抜け、赤い岩肌がむき出しになった洞窟にたどり着いた。洞窟の中は異様な熱気に包まれており、空気がゆらゆらと揺れている。


「これが……精霊のいる場所か。」

アルフレッドは足元を確かめながら、慎重に洞窟の奥へと進んだ。


やがて、彼の目の前に巨大な空間が広がった。天井には無数の溶岩が流れるような模様が浮かび上がり、中心には炎が渦巻いている。


その炎の中から、突然声が響いた。

「我が眠りを妨げるのは誰だ?」


アルフレッドは身構えながら答えた。

「俺の名はアルフレッド。焔の継承者だ。お前に会いに来た。」


「焔の継承者……久しいな。」

炎が形を変え、巨大な鳥のような姿になった。その体は燃え盛る炎でできており、目には知恵と威厳が宿っている。


「お前の力を見せよ。その覚悟と共に。」

精霊が挑発するように叫ぶと、洞窟全体が揺れ、溶岩が噴き出し始めた。


アルフレッドはすぐに構え、手に炎を生み出した。その炎は精霊に比べれば小さく見えたが、彼の決意は揺るがない。


「俺は、この力を制御し、運命を切り開く!それを証明してみせる!」

アルフレッドの炎が輝きを増し、精霊へと向かっていった。

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