大好きな
あるとき神様は休みを取ることにした。
考えてもみれば世界を作ってからほとんど休みなど取っていない、ということに気が付いたからだ。上がこれでは天使たちも休みを取りにくかろうという思いもあった。
だが自分が休んでいる間に誰かが人間を見ておかなければいけない。なにしろ神様は人間というものをこの世界のなによりも愛していたからだ。
少しでも悪や不道徳で道を踏み外し堕落しそうになったら、すぐにでも導いてやらねばならない。
そこで神様は天使たちを集めてこう尋ねた。
「お前たちの中で嘘偽りなく人間のことを好きだというものは誰だ。私が休んでいる間、その者に人間たちの管理を任せようと思う」
その言葉に天使たちは顔を見合わせる。天使たちもまた神様と同じように人間のことを愛しているのは間違いない。
だがわざわざ神様の前で言ったりはしないが、天使たちは神様が人間ばかりを贔屓することに少しばかり嫉妬の気持ちを抱いていたのだ。
そんな自分が嘘偽りなく人間のことを好きだと言えるのだろうか? 天使たちの顔にはそんな疑問が浮かんでいた。
そんな中で一人の天使がすっと手を上げた。
「私は人間たちのことが好きです。この気持ちに嘘偽りはありません。ぜひこの私にお任せください」
周りにいた天使たちと神様はその天使の顔を見た。それはつい先ごろ産まれたばかりの、まだ若い天使であった。
天使たちは、なるほどあいつなら確かにまだ嫉妬を覚えていないだろうと頷いた。神様も頷く。その言葉が紛れもない本心であることが分かったからだ。
そして神様はその天使に人間の管理を任せると、自分はゆっくりと休むことにした。
それからしばらくの時間が経ち、神様はそろそろまた働くかと戻って来て驚いた。
自分が休む前に比べて明らかに人間たちの間に悪が蔓延り、不道徳が流行り、堕落していたのだ。
神様はすぐさま人間の管理を任せた天使を呼びつけるとどういうことなのかと問い詰める。
すると天使は答えた。
「神様、私は人間たちのことが好きです。なにしろ奴らの魂を堕落させると、この上ない美味ですので」