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二重季節 -Alignment Minds  作者: 真代あと
三話目 観測者
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1 1-21 神隠し、解決

 事件解決の一日後。私の住まう、小さな森の中の掘っ立て小屋にて。

「で、結局事は単純な人さらいだった訳だが」

 そう。そうしてよその国に連れ去って、奴隷なりなんなりとして使い潰す魂胆だった訳だ。だが今回は未遂で終わったものの、過去にも同じような事件があったとすれば、永久に帰って来ない女達も居たのかも知れんな。

「そうだね。楽な仕事だったろう?」

 気味の悪い笑みを浮かべながら、サキが言う。サキは私の淹れた茶を飲みながら、いつも通りに部屋の壁に寄り掛かっていた。

「大した労力はなかったがな……」

 結局、事の全てを知っているお姉は、あのあとから姿を見せず。探そうにも痕跡すら見付からなければどうしようもないと、その時には諦めた訳だが。

「レイハと言っていたあの女、本当お前の手の者ではないのか?」

「うーん。信頼出来る所からの一時派遣ではあったんだけどね。僕もそう詳しくは知らないんだよ」

 よく言うわ諜報員め。

「その女、どんな奴だったんだい? もし詳しく知りたいのなら、僕の権限、使って調べてもいいんだけど」

「取り敢えず変人だ。ずっと酒を呑んでいる西訛りの言葉の女だ」

「むう、西訛りの女か……それは妙な感じがするねえ」

「一応突っ込んでおくが、お前らの紹介なんだからな」

「はっはっは。そこはもっともな話だけど。怪しい人物ではあるねえ」

「……怪しさはお前以上とは思えないが」

 怪しさで言えばこいつの方が百倍怪しい。そもそも裏稼業の人間ではないか。

「酷いなあ。僕は純粋なんだよ? でもまあ、厚意を受け取るだけなら損はないんじゃないかな? 君ってなんとなく構いたくなる空気が出てるからさ。うん、これはライバル出現かなあ」

「勝手に恋人扱いにするな」

 というか、どちらかを選ぶとなれば、迷わずあちらを貰いたい。……それでもこいつは付いて来そうだが。「エン君の友人なら、僕にとっても友人だよ」なんて言って。

 まあでも、向こうはおばさんっていうくらいの歳っぽかったし。貰うも何もないだろうな。――つまりはこいつを貰う事も絶対にない、という事でもあるんだが。

 まあ、そこそこいい報酬も得られた。お陰でしばらく茶葉や食う物には困らないくらいだ。

 だけど気分はもやもやする。一体あの女、何が目的で私に近付いたのか。悪い理由ではない、と思いたいが……。

 いやそれはまあいい。

 だが、他に気になる事がない訳ではない。そう、普通に解決されるにはお粗末な話だ。

「今回の事件、何か腑に落ちないんだが」

「ほう。やはり君もそう思うかい?」

「なぜに、神隠しなどという話になったんだ? あんな奴らが村にでも入れば、かなり目立つぞ」

 そう、今回の件、女性が何人も行方不明になった事が発端だ。勿論、普通にさらわれたなら人目に付く事もあるだろう。私達が乗り込むまで、人さらいを完全に成功させていた理由は?

「結論を言おうか。奴らは犯行の際、姿隠しの法術を使っていたという事さ」

「何?」

 法術。しかし連中にはそんな匂いはなかった。法術師である筈がない。そういえば、あの時お姉が術符を見せていた。奴らが持っていたものとして。まさかそれが――。

「と言ってもだ。奴らは法術師なんて大層な者でもない。奴らが潜んでいた洞窟から、幾つかの術符、それが見付かった。つまりは」

「法術使い、か」

 術符を使っての犯行。術符なら、自分に使って身を隠すだけでなく、さらおうとしている相手に使って姿を見せなくさせる事も出来よう。

 成程まさに神隠しの再現か。突然姿が消える、居なくなる、ぴたりではないか。

「だがそうなると――」

「そう。今回の件、只海向こうの国が関わっていただけじゃない。こちら側での協力者が居たという推測さ」

「推測?」

 確証はない? だが状況証拠は充分だと。

「まあ、僕はその線で間違いはないと思っているけれどね」

 ……この国のどこかに、売国奴に等しい奴が居る、という事か。

 成程サキが動くのも納得だ。法術師はこの国の直下にある。その不祥事が公になれば、ひいてはこの国が非難される切っ掛けになりかねない。

 サキもまた、この国の裏側にある組織、諜報員として動く者。不祥事の芽を刈り取るにはうってつけ――というかこれ以外に手はないのだろう。

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