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第10話 詠唱と魔法陣

蒼葉魔法学園での生活が始まり、俺は少しずつこの異世界での新しい環境に慣れ始めていた。授業やトレーニングは厳しいが、持ち前の体力と精神力で何とか乗り越えている。


ある日、授業が始まる前、教室に入った俺は、教壇に立つ斉藤涼子先生を見上げた。彼女は元公安対魔法犯罪部のエージェントであり、現在はこの学園で魔法の理論を教えている。


「今日は魔法の発動の仕組みについて学びます。皆さん、タブレットを起動してください。」


斉藤先生が指示すると、教室内の生徒たちは一斉にタブレットを取り出し、メモを取り始めた。俺もタブレットを起動し、彼女の説明に耳を傾けた。


「まず、魔法の発動には『魔力』が必要です。魔力は生まれつき個人によって量が異なり、体内で生成されます。魔力経路を通じて循環し、この経路が正常に機能していることで魔法が発動できるのです。」


斉藤先生はタブレットを指さしながら、魔力経路の図を拡大し、説明を続けた。


「次に、魔法を発動するためには『詠唱』もしくは『魔法陣』が重要です。詠唱もしくは魔法陣は魔力を制御し、特定の効果を引き出すための呪文です。詠唱を正確に行うことで、魔法は安定して発動します。」


俺は必死にメモを取りながら、斉藤先生の話を聞き逃さないように集中していた。魔法が使えない俺にとって、この知識は重要だった。なぜなら、敵の魔法を理解し、それに対抗するためには基礎的な理論を知っておく必要があるからだ。


「ただし、非常に高度な魔法師は詠唱なしで魔法を発動できる場合もあります。その原理は、魔法の基礎理論を深く理解し、魔力の制御を完全に習得しているからです。詠唱は魔力を特定の効果に導くための道筋を作る役割を果たしますが、熟練した魔法師はその道筋を頭の中で瞬時に描くことができるのです。」


斉藤先生はタブレットに映し出された映像を指し示し、詠唱なしで炎の魔法を発動する魔法師の姿を見せた。魔法師は何も詠唱することなく、ただ手を振るだけで炎を操っていた。


「このように、詠唱なしで魔法を発動するには、深い知識と経験、そして卓越した魔力制御が必要です。皆さんもまずは基礎をしっかり学び、詠唱を正確に行うことから始めましょう。」


「最後に、『魔法陣』です。魔法陣は魔力を集中させ、特定の効果を強化するための道具です。魔法陣を正しく描くことで、魔法の効果を大幅に向上させることができます。」


斉藤先生はタブレットに表示された魔法陣の例を示し、生徒たちにその仕組みを説明した。


「これが魔法の基本的な発動の仕組みです。次の実践訓練では、この理論を基にして魔法を発動してみましょう。」


授業が終わり、昼休みの鐘が鳴り響くと、教室内は一気に賑やかになった。俺は食堂へ向かおうと廊下を歩いていた。その時、突然すれ違いざまに書類を渡された。振り返ると、書類を渡してきた人物は、すでに人混みの中に消えていた。


すると今度は知らない番号から電話がかかってきた。実はこれは公安の連絡先で機密保持のため偽装しているのだ。


「もしもし。なんですこの書類?」


「闇影や関連団体が勧誘しそうな生徒のリストだよ。参考にしてくれ。」


「闇影が新入生を勧誘か……」


「そうだ。彼らはまだ未熟な学生を狙っている。特に優れた才能を持つ者を引き込もうとしているようだ。君も注意して動いてくれ」


「了解した。何か具体的な動きがあったら、すぐに連絡する」


「頼む。俺たちは常に君を監視、いやサポートしている」


いつどこでも仲間に見られてるのは安心すべきか気にするべきなのか……


「斉藤さん!」


振り返ると、そこには美月が立っていた。美月とは入学式以来、初めて会った。


「美月、久しぶりだな」


「はい、元気そうで何よりです。」


美月は明るい笑顔を見せたが、その手は僅かに震えていた。


「斉藤さん、ちょっと話せる?」


「もちろん、どうしたんだ?」


二人で学園の中庭に向かい、静かな場所で話をすることにした。ベンチに座り、美月は深呼吸をしてから口を開いた。


「あの時は、本当にありがとうございました。警察や父には口封じをされていたのですがお礼を言いたくて。」


「ありがとう。でもこの話はもう忘れてくれ。」


「そうですか、でも実は斎藤さんに相談があって……」


「相談?」


「うん。新入生の中で、何人かが急に姿を消したと思ったら急にいつも通り学校へ姿を見せたり、変な噂が流れたりしてるの。最近学生に近づく怪しい団体が関係してるんじゃないかって、不安で……」


美月の話に俺は驚いた。昼休みに公安のメンバーから聞いた勧誘の件のことかもしれない。


「たぶん君のお父さんの指示だとは思うけど、君には護衛がついてる。けれど君は前例があるから気を付けてくれ。」


俺は美月の方をちらっと見て、物陰に隠れているスーツ姿の男を指さし、教えてやった。


「やっぱりそうなんだ、なんか最近やたらと視線を感じてたのよね……」


美月の不安そうな表情を見て、俺は彼女に連絡先を教えた。


「もし何か困ったことがあればいつでも連絡してくれ。力になる。」


「うん、ありがとう。」


そういって美月はこちらへ一礼するとこの場を去っていった。



お読みいただきありがとうございます。


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