第五話 装備調達
その日の午後、俺は公安の備品管理室に連れて行かれた。
山本課長に案内された先に、明るい笑顔を浮かべた女性が立っていた。少し背が高く、眼鏡の奥の瞳が知的に光っている。
「こちら、装備開発班の主任技術者の宮田美咲さんだ。君が使う装備の開発者だ。」
山本課長に紹介され、宮田美咲はにこやかに頭を下げた。
「初めまして、斉藤さん。宮田美咲です。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「では早速ですが、斉藤さんに必要な装備と制服を支給させていただきますね。まずは、こちらを着てみてください」
宮田美咲が差し出したのは、黒いスーツだった。公安対魔法犯罪課の制服で、特殊な繊維でできているらしい。
「このスーツは、防弾性能と魔法防御性能を兼ね備えています。斉藤さんのサイズに合わせてカスタマイズされているので、動きやすさも抜群ですよ」
俺は言われるがままスーツを手に取り、試着室で着替えた。確かに、体にピッタリとフィットし、動きやすい。
「どうですか? 似合ってますか?」
試着室から出ると、山本課長が笑いながら聞いてきた。
「ああ、悪くないな」
俺も自然と笑みがこぼれる。
「では次に、装備品です。こちらをご覧ください」
宮田美咲が誇らしげに見せてきたのは、魔力を使った銃器や防具だった。
「こちらはハンドガン『レイヴン』。携帯性に優れていています。。そしてこちらが精密狙撃仕様のライフル『ホーク』。精密射撃が可能で、長距離からの狙撃に適しています」
「なるほど…どちらも見た目は通常の銃と変わらないように見えるが…」
宮田美咲は、大学で魔法工学を学び、公安の装備開発部に所属する技術者になったらしい。明るく社交的な性格で、発明の才能に秀でているそうだ。彼女が作り出す装備は、公安の捜査官たちからも高く評価されていると聞いた。
「宮田さん、これら全てを君が開発したのか?」
「はい、斉藤さん。私は魔法工学と機械工学を専門に研究していまして、捜査官の皆さんが安全に任務を遂行できるよう、日々、新しい装備の開発に取り組んでいます。」
彼女の情熱的な説明に、俺は改めて感心する。まるで夢の中にいるような感覚だが、これが現実なのだ。
「これらの装備を使いこなせば、君も十分に戦力として活躍できるだろう。特に、君は魔法を扱えない特性上、この特殊弾は心強い武器になるはずだ。」
山本課長が説明を加える。
「魔力強化弾丸?」
聞き慣れない言葉に、首を傾げる俺に、宮田美咲が説明してくれた。
「通常の弾薬と特殊弾丸の違いについて説明しますね。通常の弾薬は、物理的な力を利用して敵にダメージを与えますが、これらの弾丸は魔力を内包しており、その魔力が着弾時に追加効果を発揮します」
「具体的にはどういう効果があるんだ?」
「例えば、こちらが徹甲弾(Armor-Piercing Rounds)です。通常の徹甲弾と同様に貫通力が高いのですが、魔力が練りこまれているため、通常の防弾素材や魔法防御をも貫通する力があります」
宮田美咲は次に、焼夷弾(Incendiary Rounds)を手に取った。
「こちらは焼夷弾です。命中時に発火し、敵を燃やします。魔力が強化されているので、通常の火よりも高温で燃え続け、広範囲に火を広げることができます」
さらに、炸裂弾(Explosive Rounds)を見せながら説明を続けた。
「これは炸裂弾です。命中時に爆発し、広範囲にダメージを与えます。魔力が練りこまれているため、爆発の威力が強化され、敵をより確実に仕留めることができます」
「凍結弾(Cryo Rounds)もありますよ」
と宮田美咲が続ける。
「命中時に冷却効果を発揮し、敵を凍結させることができます。これにより、敵の動きを封じたり、特定の環境を一時的に操作することが可能です」
最後に、電撃弾(Shock Rounds)を手に取った。
「こちらは電撃弾です。命中時に電撃を発生させ、敵に電気的なダメージを与えます。魔力が強化されているため、電撃の威力が増し、電子機器を無力化することもできます」
俺はこれらの説明を聞きながら、それぞれの銃を手に取って重さや質感を確かめた。全てが精巧に作られており荒っぽさは微塵も感じられない。
「斉藤さん、魔法が使えないあなたでも、これらの装備を使えば魔法使いに対抗できます。」
「なるほど、理解したよ。これらの装備を使いこなすために、しっかりと訓練を積む必要があるな」
「そうですね。訓練は重要です。特にあなたはまだこの世界の戦術魔法については全く知らないでしょうし、私はいつでもサポートしますので、何か質問や問題があれば気軽に声をかけてください」
「ありがとう、宮田さん。君の助けと子の装備があれば、俺もこの世界で戦えそうだ。」
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