第三話 国防軍の尋問と公安の介入
俺は銃を突きつけられ、両手を縛られたまま、警察と名乗る武装集団に連行された。彼らは迅速かつ冷静に行動しており、俺たちを安全な場所へと導いていった。
「斎藤さん!!」
美月が心配そうにこちらに叫んだ。
「俺は大丈夫だ。ちょっと事情を説明すればすぐ解放されるさ!」
返事をしながら後ろを振り返ると、美月は保護されて、女性隊員に支えられながら俺とは別の車両に乗せられていた。
装甲車に乗せられた瞬間、俺は強い違和感を覚えた。車内の装備や雰囲気は、警察というよりも軍隊のそれだった。だが、元特殊部隊である俺でも見たことのない特殊な装備が多い。もしかすると魔法に関するものなのかもしれない。彼らの正体に疑念が募った。
隊員たちは無言を貫き、その沈黙が一層不安を煽る。俺は装甲車の中で身動きが取れないまま、どこかへと向かった。
装甲車が速度を落としたため外を見ると高い柵と見張り塔、そして多数の兵士たちが行き交う光景が広がっていた。
「おい、どう見ても警察署じゃないだろ。お前ら警務隊か?」
「何もしゃべるな。黙ってついてこい。」
俺は装甲車から降ろされ、手荒に扱われながら建物の中へと連行された。
「痛っ……何なんだ、ここは……」
広々としたロビーを通り過ぎ、俺は尋問室へと連れて行かれた。室内には簡素な机と椅子があり、尋問室の雰囲気が漂っていた。俺は椅子に座らされ、リーダー格の男が対面に座った。
「斉藤一郎、でいいのかな?この身分証は日本語で書いてはあるがわが国のものではない。君はなぜお嬢さんと一緒だったのかね?」
俺のポケットに入っていた身分証は紛れもない本物なんだが……
「俺自身も分からないんだ。自宅で突然強い光に包まれ、気がついたら誘拐されていた。そこに偶然彼女もいて、彼女を助けようとしただけだ。」
リーダーはメモを取りながら、厳しい目で俺を見つめた。
「君はどこかで軍事訓練でも受けていたのかね?テロリストの遺体は君がやったのだろ?」
「俺は国防空軍第5特殊作戦群の大尉だった。戦術誘導や人質救出任務に就いていた。俺を調べるよりあんな魔法や石造りの化け物を調べたほうがいいんじゃないか?あんなもの見たことがない。」
俺はやむを得ず自分の軍歴を明かした。
「国防空軍第5特殊作戦群……そんなものは、我が国の記録には一切ない。魔法やゴーレムの存在を疑うとは、よほどおかしな世界から来たのか、それとも何かを隠しているのか?」
「まさか、ここが本当に異世界だというのか?」
俺は彼の言葉に驚きながらも、自分が異世界に来てしまったという現実を少しずつ理解し始めた。
「君が言っていることが真実ならば、ここは君が知っている世界ではない。魔法も存在する。」
「魔法……信じられないが、あの光景を見たら否定はできないな……」
リーダーは冷たい目で俺を見つめ続けた。
「しかし、魔法と科学が発展した今でも異世界から人を転移させる魔法などは開発されてはいない。であれば我々は君が隣国のスパイなどであることを疑わざるおえないのだよ。」
言葉に強い威圧感を感じた。その時、尋問室のドアが開き、兵士が一人入ってきた。
「少佐、外で公安の山本が来ております。斉藤一郎氏の身柄引き渡しを求めています。」
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