第12話 ゴーレム再び
翌日の朝、少し早めに学園へと登校すると多くの生徒が部活動の朝練に励んでいた。
すると学園の入り口に突然装甲車が停車をし何事かと思いきや、降りてきたのは美月だった。
「斉藤さん、おはようございます。なんだか、その、恥ずかしいです……」
話を聞くところ彼女の父が心配し自社で開発した新型装甲車で登校させてるらしい。
まあ、こちらとしては厳重な警備はむしろ助かるがあまりにも目立ちすぎるのもある意味危険かもしれない……
そんな時、突然校内に爆発音が響いた。
「何が起きたの?」
「美月は教室に早く非難するんだ。」
引き留めようとする美月を置いて、俺は爆発音のほうへと走った。
現場である演習室に到着すると、複数の教師と生徒が集まっていた。
「何があったんです?」
「生徒が召喚魔法の訓練をしていたんだけど、ゴーレムが暴走しているんだ。」
室内では巨大なゴーレムが暴れ回り、生徒たちは避難する中、教師たちが懸命に制御しようとしていた。俺は周囲を見渡すと、ゴーレムの制御に失敗した生徒を見つけた。その生徒は床に座り込み、恐怖で震えていた。
(またこいつかよ!?)
その時、クラスで目立つ存在の一条院零がゴーレムを倒そうとして前に出てきた。彼は強力な魔法を放つ準備をしていた。
(うそだろ!?こんな人が多いところで!?)
「俺に任せろ!」
一条院零は呪文を唱え、さらに魔法陣が展開されると手から放たれる魔法のエネルギーがゴーレムに向かって発射された。しかし、ゴーレムはその魔法をものともせずに立ち続けていた。
しかも、破壊された教室の一部が周りの生徒や先生に向かって飛び散ってきた。
俺はとっさに防御魔法を装填した拳銃をみんなの方へ射撃した。するとみんなの前に防御魔法が展開され、破片がすべて砕け散った。
「なに……?効かないだと……?」
一条院零の顔に驚きと焦りの色が浮かんだ。
(それよりも周りをきにしろよ......)
「下がれ、一条院!こいつはコアを狙わないとだめだ!!」
俺は一条院零を制止し、素早く脇の弾倉入れから強化弾を取り出し弾倉を交換しゴーレムのコアに狙いを定めた。一発でコアに命中、貫通させると、ゴーレムはその場で崩れ落ちた。
「ふぅ……」
俺は銃を下ろし、深呼吸をした。周囲の教師と生徒たちは驚いた表情で俺を見つめていた。
「斉藤君、大丈夫か?」
一人の教師が駆け寄ってきた。
「ああ、大丈夫です。ゴーレムはもう動かないはずです。」
教師は安堵の表情を浮かべ、生徒たちを落ち着かせた。
「ありがとう、斉藤君。君のおかげで大事には至らなかった。」
俺は静かにうなずき、現場を後にしようとした。しかし、その時、一条院零が俺の前に立ちはだかった。
「斉藤、魔法も使えないくせに、何をやっているんだ?」
冷ややかな視線を向けられた俺は、一歩も引かずに答えた。
「魔法が使えなくても、守るべきものを守るためには行動するんだ。それが俺のやり方だ。」
「ふん、無能な者が無駄な努力をしても意味はない。お前のような存在がこの学園にいること自体が不快だ。」
一条院零の挑発的な言葉に、周囲の生徒たちも息を呑んで見守っていた。俺は冷静さを保ちつつ、彼に向かって一言返した。
「君がどう思おうと、俺は俺のやり方で人を守る、そのために俺はここにいる。誰にも邪魔はさせない。」
「そもそも斉藤、警察官でも軍人でもない君が銃を所持しているのは違法だろう。」
「この拳銃は俺の魔装具だ。授業での使用を許可されている。」
「許可だと?証拠を見せろ。」
俺は無言で携行許可書を取り出し、一条院零に見せた。しかし、一条院零は納得せず、携帯電話を取り出して警察に通報した。
数分もしないうちに、警察官が到着し、俺に質問を始めた。
「斉藤一郎さんですか?学園内での銃の使用されたということで通報を受けたのですが……」
俺は冷静に答えた。
「この拳銃は私の魔法を発動する道具で、所持許可も出ています。今回の件は緊急事態であり、自己防衛のためゴーレムの暴走を止めるために使用しました。」
警察官は携行許可書を確認し、しばらくの間電話で確認を続けた。その結果、俺の説明が正しいと確認され、問題は解決した。
「斉藤さん、確認が取れました。今回の件については防衛使用のため特に問題ありません。しかし、流れ弾が他の生徒に当たる可能性もあります。今度このようなことがあった際は警察をすぐ呼んでください。」
俺は警察官に礼を言い、その場を後にした。一方、一条院零はまだ納得していないようだった。
「いつかお前の化けの皮を剥いでやる!!」
そんな彼を尻目に俺はその場を後にするのであった。
(あまり目立ちすぎると公安の仕事に支障が出かねないな。気を付けよう。)
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