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9.とばっちり

「じ、実は山田もよく分かっていないんですよ。昨日、目が覚めたらこんな事態になっていて」


「やっぱりか? 俺も昨日朝起きたら俺じゃなくなってて・・・。しかもここ何処って感じでさ」


オロオロと答える椿を見て、柳は再びガックリと肩を落とした。


「あ、あの、柳君は昨日どうしていたのですか・・・? 山田はあまりにもショックで寝込んでしまいましたが・・・」


「俺? 俺はとりあえず頭打って軽い記憶喪失になったことにした」


「か、賢いです! 柳君!」


椿は自分の顔の前で手を合わせ、柳を称賛した。柳はそんな椿の左手首を見た。


「そのミサンガ・・・」


「ミサンガがどうかしましたか?」


そういえばさっきもミサンガと言っていた。

山田は首を傾げた。


「・・・ごめんな、山田。俺たちがふざけてたせいで階段から落ちただろ? 俺、あんたの手を掴もうとしたんだけど間に合わなくて・・・」


柳は申し訳なさそうに項垂れた。


「その時、そのミサンガがよく見えたっつーか、目に焼き付いてるっつーか」


「では・・・、もしかして柳君も階段から落ちたんですか?!」


「ああ。一緒に落ちたのは覚えてんだけど・・・」


なんてことだ!

もしかして柳君はとばっちりもいいところじゃないか!? 


「も、申し訳ございません!! 柳君!! 私は・・・山田は何てことをしてしまったのでしょう!」


椿はガバッと地面に両手を付いた。


「ちょっと! 山田! なんで土下座!?」


「だって、だって、柳君はきっと山田のせいでこの世界に来てしまったんですよ! 山田が引き込んでしまったに違いないんです!」


「え?」


「ここは山田がその時に読んでいたライトノベルの世界なんです!」


「ラノベ・・・?」


「はいーー! ごめんなさいー! 山田があんな場所にいたばっかりに!」


「いやいや! 俺らが悪いだろ? あんなところでボール蹴るなんて」


「ぼっち飯済ませてさっさと退散していればこんなことにならずに済んだのに!」


「え? 山田ってあんなところで飯食ってたの・・・?」


「すいません、すいません、山田がオタクなばっかりにぃ! とんだご迷惑をー」


「え? マジでそんな謝んないで!」


土下座してペコペコ頭を下げる椿に柳はオロオロする。


「ま、ま、とりあえずさ、山田。この世界のこと俺に教えてくれよ。俺さ、右も左も分かんなくってマジで参ってんだ!」


「かしこまりましたぁ! 喜んでぇ!」


「だからそんなにかしこまんないでって! あんた、どこの店員?」



☆彡



「ふーん、なるほど。四角関係の恋愛小説ってとこ? 結構めんどくせー感じの話だなぁ」


花壇の近くにあるベンチに座り、椿から一通り話を聞いた柳は空を見上げて頭を掻いた。


「そうですか・・・?」


「だってさー、セオドアと奴の従兄弟のジャックとヒロインを奪い合うところにオフィーリアっつーのが絡むんだろ? 俺、頭悪いからこんがらがった話って苦手」


「そこまでこんがらがってないですよ? 要はセオドア様とヒロインのオリビアがくっついてハッピーエンドって話です」


「まあ、そうか・・・」


「オフィーリアはヒロインを虐め抜いた罰として修道院へ。ジャックは傷心を癒す為に戦場へ赴く感じです」


「失恋ごときで戦場って」


「まあそこは彼は騎士家系なので」


「ふーん」


「それで今はもうクライマックスに向かっている最中です。あと一ヶ月で卒業式。オフィーリアがそこで断罪されます」


「それなぁ。自分の婚約者を断罪ってなんか酷くね? 自分は浮気しておいてさぁ」


「でも、もともとセオドア様とヒロインは幼馴染で両想いなんですよ。お互い知らないだけで。両片思いってやつです」


「まあな~、そうだけどさ~。だったら他の女と婚約しなきゃいいじゃんか」


「ですから、これは家同士の政略結婚って奴でして。本人たちの意思ではないので」


「今どき政略結婚っていつの時代だよ、戦国かっ」


「今どきって・・・私たちの世界じゃないですからここは。こっちでは当たり前という設定なんですよ」


面倒臭いのは柳君、あなたでは?

椿はそう思いながらも、この世界のことを根気よく柳に説明した。


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