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67.余計なお世話だとしても

(うーん、どうしたもんだか・・・)


じょうろで花壇に水をやりながら、椿は悶々と考えこんでいた。


(まさか、オフィーリア様の方から婚約解消を持ち掛けるなんて思ってなかった・・・)


昨夜のオフィーリアとのやり取りを思い出す。


『修道院送りも止めていただくようお願いしてみましたわ』


(でも、肝心なことをしっかりと申し出るところはさすがと言うべきなのか・・・交渉上手と言うべきなのか・・・)


「でも、このまま別れちゃうのって・・・いいのかな・・・」


チョロチョロとじょうろの口から流れる水をぼーっと眺め、考え込む。


「おーっす! 山田!」


そこにいつもの通り元気いっぱいの柳がやって来た。


「おはようございます・・・。柳君」


「あれ? なんだよ、山田。元気ねーじゃん、どうした?」


柳は首を傾げながら椿に近づいてきた。椿はじょうろを両手に持ち直して柳を迎えた。


「実は・・・、ショッキングなことがありまして・・・」


眉尻を下げ、困ったように柳を見上げる。


「オフィーリア様の方からセオドア様に婚約解消を申し込んでしまったんです」


「へえ! すげー、さっすがオフィーリア! 気強きぃつえ~! あはは!」


「え?」


椿と正反対に、カラカラと楽しそうに笑う柳に椿は目を丸めた。


「や、柳君、笑ってる場合じゃないですよ!」


「そうかぁ? だってさ、先にふっとけば向こうから婚約破棄を突き付けられることねーじゃん」


「そ、そうですけど・・・」


「破棄も言えねーのに、修道院行けなんてもっと言えねーんじゃね? それこそ、てめー何様だよ?って話だし。一安心じゃん」


「ま、まあ、そうなんですけど・・・」


「あはは! フラれてやんの~、セオドアの奴! ざまーねーや!」


「・・・」


セオドアその人の姿をしてその本人を悪く言う光景はなかなかシュールなものがある。

椿はアングリと口を開けて柳を見ていたが、ハッと我に返りプルプルと頭を振った。


「で、でも! 本当は婚約解消なんて、オフィーリア様の本心じゃないんですよ! オフィーリア様はセオドア様の事が好きだから」


「うーん、どこがいいんだろうなぁ~、他の女に目移りする奴なんてよ。俺が女だったら即効別れるわ、そんな奴」


「・・・まあ、それが正論とは思いますけど・・・」


困った顔で柳を見る。

そんな椿の頭を柳はクシャっと撫でた。


「分かってるよ。山田はオフィーリアを応援したいんだろ? 誤解解消とか修道院送り回避だけじゃなくって、できたらくっ付いて欲しいんだろ?」


「はい・・・。だって、いい人なんですよ、オフィーリア様・・・。かなりツンデレのところがありますが・・・」


椿は俯いた。


「ふーん。でもさ、もし、このまま卒業しても俺達お互い戻れなかったら、それは自動的に叶うからそんなに心配しなくてもいいんじゃね?」


「は?」


椿は柳の言っている意味が分からず、顔を上げた。


「だってその時は俺達、結婚しているわけだしさ」


「はい?!」


「元に戻った時には既に二人は夫婦。もう今更って感じ?」


「はあ・・・?」


「強行感否めねーけど、山田の希望通り二人はくっ付いてるってわけよ」


「・・・」


「ま、卒業前に元に戻っちまったとしても、オフィーリアの潔白を証明するものを残しておけば、セオドアも考え直すかもしれないぜ。寄りを戻して欲しいって奴から頼むかも。そうなったら見ものだな」


柳はセオドアの顔で意地悪そうにニッと笑った。やっぱり何度見ても自分で自分をディスる構図はシュールだ。


「とにかく、オフィーリアが悪者にならないように下地だけは作ってやろうぜ。二人が仲良くなるかどうかは本人たち次第だしさ。オフィーリアだってそんなにセオドアの奴が好きなら、悲劇のヒロインぶってねーで理解してもらうように努力するべきだ。あ、ヒロインじゃなくて悪役令嬢か?」


(き、厳しい・・・柳君・・・)


「な? 何も山田だけが頭を悩ます必要ねーよ」


柳はもう一度椿の頭をクシャっと撫でた。相変わらずニッと笑っているが、今度は意地悪な顔じゃなくて優しい笑顔だ。


「はい」


柳の言葉は本当に力強い。いつも励まされる。お陰で気持ちが軽くなった。


「そうですね。最終的にはお二人に理解し合ってもらうしかないのですから。それでもできる限りの事はしてあげたいです。余計なお世話と怒られるかもしれないけど」


椿は柳に小さくガッツポーズして見せた。


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