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5.早々に告白

「お、お嬢様・・・?」


固まっている椿にメイドが恐る恐る近づいてくる。


「そ、その・・・、す、すいません」


椿はメイドに向かって頭を下げた。


「ひっ!」


メイドが言葉にならない悲鳴をあげる。

謝っただけで悲鳴をあげるって一体今までの関係はどうだったのだろう? それだけで二人の関係性が分かる気がするが、今の椿はそれどころではない。


「あ、あの・・・、私、オフィーリアさんではないんです・・・。私、山田椿と申します。その・・・オフィーリアさんに憑依してしまったようで・・・」


「は・・・い・・・?」


「すいません、すいません! 悪気は無いんです! 私もよく分からなくって!」


固まって立ち尽くしているメイドに向かった椿は必死にペコペコ頭を下げた。


「気が付いたらこの状態でして! 私自身も混乱しているんです! ど、どうか、話を聞いてもらえないでしょうか?」



☆彡



椿は未だに整理できてない頭をフル回転させ、どうにかこの現状をメイドに説明した。

掻い摘んで簡素に説明する。たどたどしい説明にも関わらず、メイドは一部始終黙って聞いてくれた。

椿の説明を聞き終えると、やっと息ができるようになったと言わんばかりにホーっと長く息をついた。


「まったく理解ができないのですが・・・、でも、貴女がオフィーリアお嬢様ではないことは信じられる気がします・・・。あまりにもお嬢様とは違う人格なので・・・」


彼女は相変わらず不安そう椿を見ている。


「ですよね・・・」


椿も困ったように頭を掻いた。


「お嬢様の中に死んだはずの貴女の魂が入ってしまったと・・・。山田椿・・・様」


「様なんてやめてください! 柄ではないので! 山田でいいです、山田で!」


「山田様・・・」


「様はやめてくださいっ。恐れ多い!」


椿は片手をブンブンと振ってメイドを制する。


「でも・・・」


メイドは複雑な顔をしている。

明らかにオフィーリアの姿形をしているのにこの低姿勢。どう接していいのか混乱しているようだ。


「では・・・山田・・・さん、お嬢様は一体どこに・・・?」


「わ、分かりません・・・」


「・・・お嬢様の魂は・・・、お嬢様は死んでしまったのでしょうか・・・」


死んでしまった・・・。

その言葉に椿はサーっと血の気が引いた。


(私が入ってしまったばっかりに・・・、オフィーリアは・・・)


罪悪感が椿を襲う。椿は震える手でシーツをギュッと握った。


「ごめんなさい、ごめんなさい・・・、私のせいで・・・」


ボタボタと大きな瞳から大粒の涙が零れ、握りしめた椿の手の甲に落ちる。


「お、お嬢・・・いいえ、や、山田さん・・・。そんな・・・泣かないで下さい。貴女のせいではないのですし・・・。これは神の悪戯ですわ・・・」


メイドは優しく椿を慰める。


「でも、これからどうしたらよいのでしょう・・・?」


「本当に・・・どうしたらいいですかね? 私・・・」


困惑気味に尋ねるメイドに、グシグシ泣きながら聞き返す椿。

そんな椿にメイドは軽く溜息を付いた。


「そうですね、どう学園生活をお送りすればいいか・・・。オフィーリアお嬢様として」


とても気が重い。オフィーリアに成り切るどころか演じることも無理だ。不可能に近い。


「ご卒業まであと一ヶ月、まだまだありますし・・・」


「え? 卒業・・・? もうすぐ?」


「はい。どうにかして乗り切って頂かないといけません。とは言っても、お屋敷にお帰りになってからもどうやって旦那様と奥様を誤魔化すか問題はありますが・・・」


メイドは人差し指を頬に当て考える素振りをする。


「もうそこは、その頃までにオフィーリアお嬢様の人となりを叩き込むしかないですね」


「あと一ヶ月・・・ということはもう後半戦!」


椿の目が絶望から希望に変わった。キラキラした目でメイドを見上げた。


「じゃあ、もう断罪は決まってます! なら、私はもう何もせずに傍観に徹します! このまま修道院へGOです!」


「はい?」


「下手に動いて物事が拗れるよりもいいはずです。山田はジッとしています!」


椿は癖で、してもいない眼鏡をスチャっと掛け直す仕草をしてみせた。


「山田さん・・・? 話がよく見えないのですが・・・」


困惑するメイドに椿はハッと我に返った。


もうここまで知られたのだ。彼女にはすべて事細かに説明しよう。

椿はそう決心し、この世界が何たるかと自分がこの世界に来た経緯を改めて一から丁寧にメイドに説明を始めた。



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