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3.オフィーリアの役どころ

さて、椿は入り込んでしまった物語とは。


それは『麗しのオリビア』というどこかで聞いたことがあるような題名のライトノベル。

タイトルの名の通り、麗しいオリビアを巡って二人の男性が奪い合うベタな三角関係のラブストーリーだ。


二人の男性は従兄弟同士でオリビアとは幼馴染。

オリビアは貴族でも男爵令嬢。男性の二人の身分は、一人は侯爵令息のセオドア、もう一人は子爵令息のジャック。


子供の頃は三人で仲良くしていたが、成長するにつれて身分の差が弊害となり、セオドアとオリビアとの間に隙間が出来てしまう。それに反比例するようにジャックとの距離は縮まっていく。

二人の仲睦まじい姿を見て恋仲になったのだと思ったセオドアは、権力に物を言わせ、ジャックを貶める・・・などという卑劣な行為には走らずに、逆に身を引くことを選ぶ。


その結果、今まで断固として断っていた侯爵令嬢との婚約を結ぶのだ。

そう、その侯爵令嬢こそオフィーリア。


しかし、依然気持ちがオリビアにあるセオドアは婚約者であるオフィーリアを顧みることはせず、何かに付けてオリビアの面倒を見る始末。


それがオフィーリアには面白くない。


プライドの高いオフィーリアは、容姿も身分もオリビアより上の自分に全く靡かないセオドアに苛立ちを覚える。

元々オフィーリア自身も望んではいないはずの婚約だった。しかし、それは表面上の話で本当は昔から婚約者に仄かな恋心を抱いていたのだ。それなのに自尊心が邪魔をして、自分を顧みない婚約者に素直に好意を示せない。冷たく捻くれた態度ばかり取ってしまい、セオドアに呆れられてしまう。


オフィーリアに嫌気が差したセオドアは諦めたはずの幼馴染のヒロインへの想いを再燃させる。さらにオリビアはジャックより自分に好意を持っていたという事実を知り、二人の距離が一気に縮まる。


二人の仲を知ったオフィーリアは嫉妬に狂い、そのどす黒い感情をすべてオリビアへ向ける。そしてひたすらヒロインを虐めるのだ。

そんなオフィーリアをセオドアは心底軽蔑し始める。そこからはもうどんどん悪い方向へ進み、とうとう収拾がつかないほどオフィーリアとセオドアの仲は悪くなってしまう。


そして最後はお約束通り断罪イベント。彼女は卒業パーティーに婚約破棄を言い渡され捨てられる。セオドアとオリビアは晴れて婚約者同士になり、二人の恋は実るのだ。

オフィーリアの方は修道院へ送られることになる。


ベタな三角関係。オフィーリアが絡んでもそれはスパイス要素になるだけで四角関係までに及ばない。

オフィーリアはそんな可哀そうな役どころなのだ。



☆彡



椿は両手で顔を覆ったまま、碌に整理できてない頭で一生懸命オフィーリアのことを思い出していた。


(修道院・・・)


最後にオフィーリアが行く着く場所。


「修道院! それはいいかもしれない!」


椿は閃いたかのように、今まで顔を覆っていた手を退けた。


もし、このままオフィーリアの人生を歩まなければならないなら、コミュ障で喪女である椿には華やかな社交界など適応不可能だ。だったら修道院でひっそりと地味に誰かのために祈り、過酷であっても労働しながら暮らしていく方がずっとずっとずーっと性に合っている!


(よし、このまま断罪される道へ進もう!)


椿は小さくガッツポーズをした。絶望の中にも小さな光が見えた気がした。



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