アレ【Aパート】
この作品は『時代に取り残された』と感じている全ての方々に捧げます。
ビシッ!
「へぶぁげっ!」
元守護霊はカウンターで老女の空手チョップをくらうと、情けない声を上げ、もんどりうってアスファルトにキスをした。
「真雨っ!」
健悟がうつ伏せでひくついている真雨の名を叫ぶ。
「弱いっ、弱過ぎる。」
老女は埼玉銘菓のコマーシャルのような台詞を吐きながら口端を上げた。
「だ、誰が‥‥弱過ぎるって‥‥?」
ゆらりと立ち上がる真雨。
「ほう‥‥アレをくろうて、まだ立ち上がるとはのぅ。」
老女姿の地縛霊は感心したような口ぶりでつぶやいた。
「あんなもん、一発くらったぐらい屁でもねぇや。」
強気なのはいいが、既に脚に来ているのが見え見えだ。
「なら、これでどうじゃ!?」
ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!
老女は連続で袈裟斬りチョップを打ち放つ。
「かはぁっ!」
ドサッ!
再び倒れる真雨。
霊同士の闘いでは物理攻撃も地面属性の判定もアリなようだ。
「テメェ‥‥ただのババアじゃねぇな?」
真雨は体力回復の為の時間稼ぎの台詞を吐いた。
これに乗ってくれれば儲けものだ。
「ほほう‥‥よくぞ見破ったな。ワシはジジイじゃ!」
そう言うと、小汚い紫色のカーディガンをバサッと投げ捨て、白髪のかつらを取る。
中からは立派な鼻髭を蓄えたマッチョな禿げ頭の老人が出て来た。
(ええーっ、何の為の女装だったんだよっ!?)
健悟はまさかのカミングアウトに、心の中でツッコミを入れた。
「ジ、ジジイだったのかーっ!?」
驚愕している真雨。
(いやいや、そこは『テメェのようなババアがいるか』ぐらいには啖呵切ろうよ。)
そんな心の中のツッコミを見透かしたかのように、ギロリと老人の地縛霊が健悟を一睨み。
「かあっかっかっかっ! あの元守護霊はもう動けまい。
さて、ワシと合体して一つになろうではないか!」
生理的に無理な台詞を言ってくる老人の地縛霊。
「い、嫌だ! ムリムリムリ!」
しかし、健悟は足がすくんで動けない。
確実に迫りくる老人の地縛霊。
「こなくそっ!」
それでも無理矢理足を動かし、懸命に逃げる健悟。
だが――
ズデン!
思い切り転ぶ。
年齢から来る衰え?
日頃の運動不足?
靴底が抜けた?
どれも違う気がする。
「健悟ーっ! テメェはアタシと一定以上離れられねぇんだ!」
真雨が状況を説明した。
「そういう事は前もって言っとけよ!」
どうりでいつも真雨が一緒についてくるはずだ。
「鬼ごっこは終わりかなぁ~?」
舌なめずりする老人の地縛霊の顔が迫る。
「ひいっ!」
顔面蒼白になる健悟。
――が、その時だった。
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