別離【Aパート】
この作品は『時代に取り残された』と感じている全ての方々に捧げます。
「あにしやがる、絵麗!?」
間一髪で避けた真雨が問う。
「言い忘れてたんだけどぉ、私も守護霊ハンターだったりしちゃったりしてぇ。」
ピンク髪のダサジャージ女がニマッと笑った。
「なっ!?」
絶句する健悟、真雨、瑞希。
「いっやぁ、私が正体を明かす前に貴緒音が全員片付けてくれると思ってたんだけどねぇ~。」
「なぜ、こんな真似を!?」
健悟が熱く問う。
「一言で言うたら、コレクター魂に火が点いたっちゅう事ですわ。」
貴緒音が端的に答えた。
「補足すると、断ち切り道具は守護霊ごとに持たされる物が違うのにゃ。
一定のレベルで固定化されてぇ、あとは強さだけが上がってく訳なんだけどぉ、どんな道具が世の中にあるか、知りたいし集めた~い! ――ってな訳。」
「ちっ、こいつらマニアだ。しかも、相当にタチの悪い。」
真雨が吐き捨てるかのように呟くと、自身の道具のニッパーを出現させた。
「おお、それがレア道具かいな!」
「是非とも欲しいナリ!
貴緒音、こいつの処分は私に任してちょっ!」
「しゃあないなぁ。ほなら、あの娘の処分は絵麗ちゃんに任せます。
――せやけど、道具は共有財産やで?」
「わかってるっつーのん!」
絵麗はチェーンソーをブンブンと振り回す。
キーン! キーン! キーン!
切りつけられるたびにニッパーでガードする真雨。
「飛び散る火花がいい感じ!
ああ、でもでもぉ、いつまでその道具が耐えられっかにゃあ?
――って、壊したらダメじゃん、私ってば。」
「テメェの攻撃、遅ぇんだよね。」
「にゃにをーっ!?」
激昂する絵麗。
しかし次の瞬間、真雨の右のハイキックが絵麗の左側頭部を捕らえた。一瞬、気が飛ぶ絵麗。
「アタシが何発、香代の守護霊、蹴速のオッサンの蹴りを食らったと思う?
おっかげで蹴り方まで学習しちまったよ。」
「遅いだとーっ!? んなら、これでどうナリよ!?」
絵麗は軽量化を図り、道具をチェーンソーから電動式の丸ノコにチェンジした。
軽量化した分、攻撃は速くなり、真雨はスウェーバックで避けるのが精一杯になった。
「確かに前のよか速えーけど、単調なんだよなぁ。
地縛霊のジジイの空手チョップは変幻自在だったよ。」
「にゃ、にゃ、にゃ、にゃにをーっ!?」
更に激昂する絵麗。
そして次の瞬間、真雨の右の空手チョップと左の貫き手の二連コンボが絵麗に決まる。
空手チョップは左の鎖骨を砕き、貫き手は鳩尾を突き刺した。
あまりの激痛に声も出ない絵麗はその場で両膝をガクリと着いた。
「おっし、見えたっ! 残糸、断ち切る!」
真雨が、左足から伸びるあらゆる霊の弱点、残糸にニッパーを当てがった。
が、その時だった。
キ――――ン!
「ザマァあらしまへんなぁ、絵麗ちゃん。助太刀させてもらいますわ。」
今まで二人の闘いぶりを静観していた貴緒音が、彼女本来の断ち切り道具、長ドスでニッパーを病室の隅まで弾き飛ばした。
「ふふっ、これでもう真雨ちゃん、残糸は切れまへんなぁ。」
クールに笑う貴緒音。
(くっそ! 道具を取りに行こうもんなら残糸を確実に切られる。)
ピンチに陥った真雨のこめかみにイヤな汗が流れる。
「剣技、百連突き!」
道具を失った真雨は、スウェーバックで躱すものの、そのあまりの速さに服や露出した部分の皮膚に裂傷が刻まれていく。
「真雨ーっ!」
健悟は病室にあった、ありとあらゆる小物を手当たり次第に貴緒音に投げつけた。
「ええーいっ、うざいわっ! 大阪名物・烈風の貫き!」
鋭利な刃と化した風が健悟の右肺を貫いた。
「くはっ!」
口から血を吐く健悟。
「健悟――っ!」
真雨が絶叫する。
彼女の水晶体には崩れるように前へ倒れる健悟の姿が映っていた。
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