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あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第十二章 守護霊ハンター
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守護霊ハンター【Bパート】

「おやっさんと対華(たいげ)の件は本当かにゃ、貴緒音(きおね)!?」


 絵麗(えれ)が病院のベッドに横たわっている貴緒音に興奮気味に問い掛けた。


「え、絵麗ちゃん、怪我人なんだから、やさしく、ね。」


 舞亜(まいあ)が絵麗を(たしな)めた。


「‥‥舞亜‥‥か。‥‥守護霊ハンター‥‥ごっつ強い戦士や‥‥。

 油断、禁物やで‥‥。」


 そう言うと貴緒音はガクリと顔を横に倒した。


「貴緒音さんっ!」


 舞亜が泣く。


「彼女は死んでないから安心して。深手と高速移動で力を大幅に消費しているだけだから。」


 瑞希(みずき)が舞亜の肩を抱き、優しく語った。


阿虎(あとら)たちを倒してからアタシらをってか。

 上等じゃねぇか、守護霊ハンター。アタシらは簡単にゃやられねぇ!」


「おい真雨(まさめ)、『簡単にゃやられねぇ』だとやられる事が前提みたいだぞ?」


 健悟(けんご)のツッコミに真雨は赤面した。


「健悟さん、しばらく仕事、休めないかにゃ?」


 絵麗が提案してきた。


「それは難しいなぁ。少なくとも明日はもう荷物の配達が決まっているし。

 病院には急いで来たけど、これっから宵積みに行かないと‥‥。」


 健悟は頭を掻きながら答えた。

 翌日に配送される鉄筋の連絡は、一件目の配達が終わるタイミングの午前十時半頃、スマートフォンに会社からのショートメールで入る。


「明日はまだ来ないと思うから、出来ればそこから先、休んでほしいんだよね。

 ――正直、私と舞亜だけで健悟さんと真雨ちゃんを守り切るのはキツいからさぁ。」


「なんで明日は来ねぇってわかんだよ、絵麗?

 それもテメェの精神感応ってヤツか?」


 真雨はかなり神経が尖がっている状態だった。


「なんとなくだけど、ヤバいほど超強い気配が近付いて()んのがわかるんだよねぇ。」


「『なんとなく』かよ? 頼りねぇな。」


「そう言ってくれなさんな。

 芽楼(めろ)がやられた時には全く感じられなかったんモンが、貴緒音の傷痕に付いた一種のエネルギー反応で気付けるようになったんだから、少しは進歩してるにゃ。

 ――まあ、ンな事を言ってもぉ、低能な『()』守護霊ちゃんにはわからないだろうけどねぇっ。」


 絵麗も一層感情が(たかぶ)ってきているようだった。


「あンだと、このピンク色のポッポーズ頭、表へ出やがれ!」


「やめろよ二人とも。

 会社には後で連絡を付けるから。」


 健悟が仲裁に入った。


「と、ところで瑞希先生、き、貴緒音さん、ど、どれくらいで回復、します、か?」


 舞亜が(たず)ねた。


「そうねぇ‥‥。

 彼女くらいのレベルだと回復力もハンパないから二日ってところかしらね。」


「貴緒音が戦力になるんとならないんとでは雲泥の差だにゃ。

 対決は明後日以降になりますように!」


 絵麗は神にでも祈る感じで手を合わせた。


 ● ● ●


 健悟は会社に連絡を入れ、交渉の末、明後日からの八日間、親戚の葬式から初七日法要までという虚偽の休暇申請をした。が、入社一年目という事もあり、その間の給料は出ないというシビアな条件を呑まざるを得なかった。


 ● ● ●


 翌日は台東区日本堤二丁目まで鉄筋を運んだ健悟。

 合積みがない配達だったので時間には余裕があった。なのでその帰り、休憩と称して川口市の道の駅に健悟は7(トン)ユニックを停めた。


 そんな中、健悟の鼓膜を女性の歌声が波打たせた。

 ふと、その方向に顔を向けると看板が彼の水晶体に飛び込んで来た。

 それには『高見(たかみ)ケイ特設ライブ』とある。


「へえ、あの()、まだ芸能界で頑張ってるんだ。

 ――ちょっと行ってみよう、みんな。」


「な、なんか面白そう、です。」


 舞亜がニッコリ笑ってついて()った。


 ● ● ●


「今日は皆さん、ありがとうございました!」


 ケイはまばらな観客に対してステージ上から深々と頭を下げた。

 決して手を抜かない歌とダンス、真冬だというのに露出度が高めのステージ衣装。

 その一つ一つに彼女のやる気がひしひしと伝わってきた。


「結局、最後まで聴いてしまったな。」


「ちっとは芸能人オーラ、強くなったんじゃねぇか?

 ――でもま、歌は姐御の足元にも及ばねぇけどな、けけけ。」


 真雨が笑った。


「じゃあ、そろそろ行こうか。」


 と(きびす)を帰した瞬間だった。


「あれ、もしかして飯綱(いづな)さん?」


 背後からの聞き覚えのある声に振り向く健悟。

 そこにはスーツ姿の藤瓦(ふじがわら)が立っていた。


「えっ、藤瓦さん!? どうしてここに?」


「ああ、自分、移籍したアニメ会社を辞めて、今はあの子のマネージャーをやってるんですよ。」


 そう言うと、藤瓦は名刺を一枚健悟に差し出した。

 名刺にはマスケット芸能プロダクション、マネージャー、藤瓦(ふじがわら)俊之(としゆき)とある。


「へえ、そうだったんですか。

 俺はプロップが倒産した後、鉄筋ドライバーをやっている感じです。」


 健悟も名刺を藤瓦に差し出した。


「おお、ガテン系ですか。お互い、違った道へ進んだものですね。」


「はい、まったくです。」



 それから二人は十分程度話し込んだ。


「――じゃあ、俺はこの辺で。」


「気を付けて帰ってくださいね。」


「はい。」


 健悟は再び(きびす)を返し、車へ向かった。

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