表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第十一章 迫りくる危機
38/44

迫りくる危機【Cパート】

「これは危険でござるな。」


 阿虎(あとら)が腕を組んで語った。


「危険って、何がですか?

 高いレベルの守護霊が狙われているんですよね?」


 健悟(けんご)(たず)ねた。


「ぎゃ、逆なんですよ、健悟さ、ん。」


 舞亜(まいあ)が説明に入った。


「さ、先程、瑞希(みずき)さんが言いましたよ、ね。

 レ、レベル15未満の守護霊は、に、人間界には通常いないんで、す。」


「えーと‥‥つまり、超激レアって事ですか!?」


飯綱(いづな)さん、もし守護霊ハンターの目的が高レベルの守護霊を倒す事ではなく、単純に道具(アイテム)のコレクションだとしたら、今、日本で一番危ないのはあなたたち二人なのです。」


 瑞希が危機を伝えた。


「なんてこった! ちんたらモグラやオケラなんかと戦ってる場合じゃなかったんだ!」


 パニくって(わめ)真雨(まさめ)に対し、更に瑞希は言葉を続ける。


「この間、あなたに守護霊の免許を与えた教員にお会いして、何故(なぜ)レベル1の者に資格を与えたのか聞きました。」


「げげっ、あの先公に会いに行ったのかよ!?」


 蒼ざめた顔の真雨。


「それで、その理由ってのは?」


 真雨を押しのけ、健悟が瑞希に質問を投げ掛けた。


「ああいうタイプは実地研修を積ませるのが一番の薬だと思った。守護される人間には気の毒だが。

 ――だそうです。」


 育とうが育つまいが我関せずといったところか。要は投げっ放しである。


()くんじゃなかった‥‥。)


 がっくりと首を落とす健悟。


「くっそ、レベルアップしようにも、今のアタシは健悟(こいつ)の体内に入れねぇから悪縁の一本も断ち切れねぇ!

 手っ取り早くレベル15まで上げるにはどうしたらいいんだ!?」


 苛立つ真雨。

 以前、香代(かよ)の体内には入れたのだから健悟の体内にも入れそうなものだが、そうはいかないのは瑞希が(ほどこ)した術式が大きく関わっているのだろう。


「ひとつだけ方法があるぞ、真雨。」


「なんだ健悟、その方法って?」


 次の瞬間、健悟は瑞希に土下座を敢行した。

 角度、姿勢、額の付き具合、どれをとっても完璧な土下座だった。


鷹端(たかはた)先生、守護霊チェンジを十八万六千円でお願い出来ませんでしょうか!

 真雨が強制転生しないフォロー込み込みで!」


「健悟‥‥。」


 真雨も土下座を敢行した。

 これもまた完璧な、それはそれは見事な土下座じゃったそうな。


「ダメです。びた一文(いちもん)負けません。」


 が、戒め神の一貫したポリシーが二人の最後の手段を()()微塵(みじん)に打ち砕いた。


「なんか不憫(ふびん)でござるな‥‥。」


 阿虎が同情する。


「隊長ッ、誰か一名、こいつらに同行するってのはどうでありますかッ!?」


 対華(たいげ)が阿虎に進言した。


「ふぅむぅ‥‥。

 芽楼(めろ)の件は単独行動が起因しておった。

 彼らに護衛を付けるのであれば二名としよう。」


 阿虎は深く考えた末に決断を下した。


「んじゃあ、私と舞亜(まいあ)でいいんじゃね?」


 絵麗(えれ)が名乗りを上げた。


「むう、確かに。

 絵麗の異能力の精神感応通信を聴けるのは対華の道具(アイテム)の一つ、トランシーバーのみ。

 舞亜の集団防御壁があれば、我らが貴緒音(きおね)の集団高速移動で到着するまで持ち堪えられよう。」


 要は、こうだ。


 ①・真雨を狙って守護霊ハンターが現れる。

 ②・舞亜の集団防御壁(つまり大きなバリア)で防御に徹する。

 ③・絵麗の精神感応通信つまりテレパシーで対華のトランシーバーに連絡。

 ④・貴緒音の集団高速移動(つまりワープの廉価版)で合流。

 ⑤・全員集まったところで守護霊ハンターをフルボッコ。


「ちょっと待ってください。

 阿虎さんたちの所に現れたら俺たち駆けつけられませんよ?」


 心配そうな健悟の顔を見た阿虎は思わず吹いた。


「はっはっは、この隊の上位レベル三名が揃ってる以上、万が一にもやられはせんて。」


 阿虎は豪快に笑い飛ばした。


 ● ● ●


 その後、診察、会計を済ませ、阿虎たちと別れた健悟は、一旦、アパートへ戻る事にした。


「‥‥なんか俺、さっきからジロジロ見られてる気がするんだけど。」


「ああ、私ら高レベル過ぎて人間の肉眼でも見えるからだったりするかもねん。」


 絵麗がしれっと答えた。


「なにーっ!? 見えたり聞こえたりしてんは俺だけじゃねぇのか!?」


 健悟は驚いた。

 当たり前だ、アラ還男の両脇に変な髪型をした昭和体育ジャージ姿の女性と卒業袴の矢絣(やすがり)を着た女性が歩いているのだから。


「残念ながら、お触りは出来ないけどねー。」


「触らねぇし!

 ――つか、俺だけに見えるようにはならねぇのか?」


「で、出来ます、よ?」


「出来んのかよ! なら、そうしてくれ。」


「ここで?」


 人通りのある駅前、ここで急に人が消えたら大事件だ。


「‥‥すまん、俺が悪かった。やるのはアパートの前にしてくれ。」


 健悟は大鎧と白拍子と軍服のトリオが護衛ではなくて心底よかったと思った。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ