迫りくる危機【Bパート】
コンコンコン。
「失礼します、飯綱です。」
健悟は診察室のドアを開けた。
「えっ!?」
中に入った二人は目に飛び込んで来た光景に驚愕した。
瑞希を中心に据え、扇状に様々な扮装をした人物が立っていた。
「これは一体‥‥?」
健悟が瑞希に問う。
「面食らったでしょうから、先にこの五人を説明させてもらいます。
五人はフリーランスの守護霊の中で国内最強レベルの猛者たちです。
あなたから向かって左側から、貴緒音、阿虎、絵麗、舞亜、対華。」
このうち、阿虎を除く四人は女性だった。
「我ら昴六将、最大級の危機に馳せ参じ申した。」
古参の風格漂う大鎧を身に纏った白髭の大男、阿虎が状況を説明した。
「六将って、五人しかいねぇじゃねぇか。」
真雨がすかさずツッコミを入れると、
「あ、あの‥‥将の一人、芽楼は先日、しょ、消滅しまし、た‥‥。」
卒業袴の矢絣を着た舞亜が顔をくいっと左横に向けて悔しそうに告げた。
「消滅?」
穏やかな話ではなさそうな展開をひしひしと感じる健悟。
「いつまでもメソメソするなッ、舞亜ッ!」
叱咤したのは第二次大戦中の陸軍将校の軍装をした対華だ。
短髪で切れ長の目つき、いかにも気が強そうなルックスだが――
(何故に軍服?)
ジェンダーレス化が進む昨今、このツッコミはナシだろうと思う健悟。
「まあまあ対華ちゃん、仲ようせなあかんで。」
おっとりとした関西弁を使うのは白拍子の恰好をした貴緒音だ。
「貴緒音が甘やかすから舞亜はいつまで経っても女の腐ったのみたいな性格なのだッ!」
言っちゃったよ、この守護霊は。ゲームではCERО倫理に引っ掛かる言葉を堂々と。
「それよか、こっちのおじちゃん?と守護霊ちゃん?は誰なんよ、瑞希ちゃん。」
エンジ色の昭和中学ジャージを着ている絵麗が話をぶった切って質問を投げ掛けてきた。
髪の色はピンクで往年のアーケードゲーム『ファンタジーゾーン』の5面のボスみたいな巻き毛を左右に付けている。
それはともかくとして、だ。
(真雨に疑問符を付けるのは妥当だが、自分にも付けられると『お年寄り』と呼ばれているようで超イヤなんだけど!)
「絵麗さん、こちらが先程お話させて頂いた飯綱健悟さんと、その元守護霊の今際乃真雨です。」
「ちょーっと待て、何で健悟がさん付けでアタシが呼び捨てあんだよ!?」
「飯綱さんはお金を払ってくれるお客様ですから。」
「うぐぅ‥‥。」
「さて、キャラクター紹介が終わったところで本題に入らせて頂きますよ、飯綱さん。」
キャラクター紹介って何だよと思いつつも健悟は、
「――はい。」
瑞希に対して返答した。
返答しないと話が先に進まない気がしたというのが大きな理由だ。
「実は最近になって『守護霊ハンター』と名乗る輩が現れて、高いレベルの守護霊を消滅させては断ち切り道具をドロップとして持ち帰るという悪質な事件が起こっています。
守護霊不在の肉体には地縛霊、動物霊が憑りつき放題。その対処に、ここにも多くの患者さんが日々訪れています。」
「鷹端先生、高いレベルって大体どれくらいからなのですか?」
「守護霊を初めて任されるレベルは15からが相場です。
一般的に高いとされているのは、そうですね、レベル256以上といったところでしょうか。」
「ちなみに我は950、この中で一番低い舞亜でも919のレベルでござる。」
阿虎が自慢気に説明を補足した。
「あの‥‥なら、俺たちには無縁の話ですね。
こいつは、やっとこないだレベルが二桁行ったところですし。」
健悟が真雨を指さして答える。
「ムキャキィーッ! アタシだって日々レベルを稼いでんだかんな!」
「真雨ちゃん、レベル稼いでるって、どうやって稼いでんのかにゃ?」
絵麗が真雨に近付き尋ねてきた。
「そりゃあ、悪霊なんかを退治してだなぁ。」
「ブッブー! 守護霊としちゃあ、いっちゃん効率の悪いレベル稼ぎの仕方だよん、それ。」
「ええっ!? そうなんか!?」
絵麗の言葉に驚く真雨。
「‥‥介助職員初任者研修でも教わった思いますけど、悪縁断ち切って良縁を人間が選ばはった時、ドドーンとポイントが入りますねん。」
貴緒音が気の毒そうに解説した。
「アタシ、授業中、ほとんど寝てたから。にゃはは。」
守護霊も確かに眠る。が、それは悪霊などとの戦闘で大きく疲弊した時だけだ。
真雨にとって授業とは、それに匹敵するまでの疲弊をもたらすものなのだろう。
やはり、こいつは落ちこぼ霊だと健悟は確信した。
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