表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第十一章 迫りくる危機
36/44

迫りくる危機【Aパート】

この作品は『時代に取り残された』と感じている全ての方々に捧げます。

残糸(ざんし)、断ち切る!」


 真雨(まさめ)健悟(けんご)に憑りつこうとするモグラの悪霊を今日も倒した。


 建設現場には元々その土地に住んでいたモグラやオケラなどが悪霊化している場合が多いが、土地を(だま)し取られた自殺者や太古の昔に住んでいた住人が地縛霊となっている事もあれば、かつて建っていた家屋敷自体が怨霊となる場合もある。

 それだけ地鎮祭(じちんさい)(かろ)んじる時代になったという事だろう。

 もっとも、これらは総じてレベルが低く、真雨にとっては絶好の経験値稼ぎの狩場となっていた。


「お疲れ様さん。どうだ、レベル二桁の断ち切り道具(アイテム)の使い勝手は?」


「ああ、なかなか使い易いな。低俗霊の残糸(ざんし)なら一発だ。ちょろいちょろい。」


 真雨はプラモデル作成用のニッパーをチョキチョキさせながらニカッと笑う。


「そっちこそ仕事は慣れたか?」


「半年もやってりゃあな。

 ‥‥まあ、最初の一ヶ月は失敗続きだったけど。」


「民家の雨どい、ぶっ壊した事もあったっけな、けけけ。」


「笑うなよ、あの頃はあれで一杯一杯だったんだからな。

 ――おっと、そろそろ次の現場に行かねぇと。」


 健悟はそう言うと、現場の自販機で買ったホットのお茶のペットボトルをゴミ箱に捨てた。

 現場の自販機は相場よりも単価が安く設定されている事が多く、コンビニよりも重宝していた。


 ● ● ●


「健悟、明日はあの神療内科に行く日だろ?」


 まだ真新しい白い7(トン)ユニックの助手席で真雨が問い掛けてきた。


「ああ、通院日は休みにしてもらえる契約にしてくれたからな。そこだけは助かるよ、ホント。」


 鉄筋ドライバーの休日は日曜日と祝日だけだ。

 これは工事現場の休みに合わせた事情から来るもので、週休二日制度とは縁遠い業界と言えた。


■健悟の一日(基本的な平日)


 ①・午前三時起床、着替えて朝食を済ます。

 ②・午前四時、トラックで出勤操作を行い現場へ向かう。

 ③・午前七時、現場から三キロ以上の地点で路肩駐車。スマートフォンの目覚ましを掛けて仮眠。

 ④・配達時間四十分前に現場監督の携帯電話に確認の連絡を入れる。

 ⑤・配達時間ジャストから五分過ぎくらいに現場へ到着。(到着が早いと叱られる。)

 ⑥・荷下ろし

 ⑦・配達完了のサインを現場監督からもらって次の現場へ。

 ⑧・途中のコンビニで昼食を買い、車中で食べる。

 ⑨・合積み作業は③~⑦と同じ。

 ⑩・鉄筋工場のビーバー物流へ向かう。

   ※現在は月給制になったので、明細を受け取る日だけは先に会社に立ち寄る。

 ⑪・宵積(よいづ)み(鉄筋が出来上がるまで待機させられる事も。)

 ⑫・会社の駐車場に戻り退勤操作を行い業務終了。(十九時半~二十一時くらい。)

 ⑬・途中のコンビニで晩ごはんと朝食を買って帰宅。

 ⑭・洗濯、食事。

 ⑮・入浴後、睡眠。


 神療内科に行く日は前日の宵積みと翌日の配達がない。

 たったそれだけの違いだが、アラ還の肉体にはとてもありがたかった。


 ● ● ●


 翌日、九時二十五分。


「九時半に予約を入れていた飯綱(いづな)です。」


 健悟は受付の山田に診察券を渡した。

 通常の病院なら国民健康保険被保険者証も提示するところだが、この病院には無用の産物だった。


「ああ、飯綱さんと今際乃(いまわの)さん、お待ちしてたんですよ。」


 山田の言葉にきょとんとする二人は顔を見合わせた。


「あの、お待ちしていたとは?」


「まさか、またアタシに何かやらせるって魂胆じゃねぇよなぁ?」


 山田に問い掛ける二人。


「先生からは、お二人が来たらすぐに通してと伝えられているだけなので、私も事情は‥‥。

 ――まあ、とにかく奥の診察室へどうぞ。」


 山田の言葉に再び顔を見合わせる健悟と真雨。


「よーし、行ってやろうじゃねぇか。」


 指をポキポキと鳴らしながら真雨がやる気に満ちた目を輝かせた。


「――だな。行けばわかるさ。」


 とにかく行ってみない事には話が見えないと思った健悟は真雨に同意した。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ