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生きていく事【Bパート】

「あのトラックですか? 随分と年季が入っているような‥‥。」


 健悟(けんご)が顔を引きつらせながら木藤(きとう)に遠回しに(たず)ねた。


「俺が入った時にはもうあったから三十年くらい経つんじゃないかな。

 ――ああ、でも車検は通ってるから動く動く。心配しなくても大丈夫。」


 木藤はそう言いながら、自分がいつも搭乗しているトラックへ歩を進めた。

 その後をついていく健悟と真雨(まさめ)。今日はマリアは別行動を取るらしい。



 運転席に座った木藤はキーを掛け、業務開始のタイムカード的な操作を(おこな)った。


「これには少し時間が掛かるから、その間に今日回る現場をカーナビに打ち込む。」


「カーナビって会社からの支給品ですか?」


「ううん、自腹。

 必需品だから買っておいた方がいいなぁ。安いのだと一万円台で買えるから。」


「木藤さんのはいくらぐらいしたんですか?」


「これは六万ぐらいだったかなぁ。

 車高のデータも入力出来るから、通れる高架下を選んでくれるんで助かってるよ。」


「六万ですか‥‥。」


 今の健悟には到底出せない金額だ。それどころか、安いカーナビすら買えない。


(当面はスマホのカーナビに頼るしかねぇな‥‥。)


 ● ● ●


 瞬く間に二週間が過ぎていった。


 その期間、健悟も木藤のトラックを運転し、重い荷を積んだ時の感覚や、クラッチを極力削らないテクニックなどを学んだ。ちなみにトラックのクラッチは交換するだけで三十六万円も掛かるのだという。そして、その減りが早いと社長からお説教が来るのだとも。



 そして運命の日がやってきた。

 健悟から事情を聞いていていたマリアも真雨だけでは不安だという事か、この日はついて来ていた。

 それはそうだろう、道具(アイテム)がゴマダラカミキリ一匹では不安にならない方がおかしい。


「今日は合積みがないから最初の現場への配達が終わったら、会社の駐車場に一旦戻って来る。

 そして、宵積みの現場にあのトラックで()ってもらうから。」


「はい。」


 ● ● ●


 配達が終わり駐車場に戻ってきた木藤のトラック。


 そこから()り、健悟は(あらかじ)め渡されていた赤紫色の7(トン)ユニックのキーでドアを開ける。そして運転席に座り、キーを回す。

 しかし――


「あれ?」


 うんともすんとも言わない。

 よく見ると、一番右上に位置しているエンジン警告灯のランプが赤く点いていた。挿絵(By みてみん)


「木藤さん、すみませーん!

 エンジンが掛からないんですけどーっ!」


 健悟の声に木藤はゆっくり走ってきた。


「ああ、これかぁー。」


「これ?」


「前々から時たま起こるんだよ。だから、誰も乗らなくなっちゃったんだけど‥‥。

 それなのに車検では特に『異常なし』でいつも戻ってくるんだよなぁ。」


 初心者にそんなトラックを回す会社も会社だ。


「あの、どうすれば‥‥?」


「エンジンもテールランプの類も全部切って二十分ごとにエンジンを掛け直してみるしかないなぁ。」


 木藤は左手で耳の後ろの部分を掻きながら健悟に告げた。

 その時だった。


「んっ!? これは!?」


 マリアが一早(いちはや)く異変を察知した。


「人払いの結界かよ!?」


 真雨が叫ぶや否や、


「じゃあ、先に俺、ビーバー物流に()ってるから、ゆっくり来て。」


 木藤はまるで何者かに操られるかのように自分のトラックへ乗り込み、ときがわ町にある鉄筋工場へ向かって行った。

 そして、それを見計らったように付喪神(つくもがみ)と化した7(トン)ユニックのヘッドライトがハイビームで照射される。


「やれやれ、これで邪魔者はいなくなったのぅ。」


 (しゃが)れ声が三人の鼓膜(こまく)を震わせた。


「テメェ、何がやりてぇんだ?」


 真雨がゴマダラカミキリを取り出して問い掛ける。


「おお、これは珍しい。守護霊を二人連れているとは。

 ――トランスフォーム!」


 7(トン)ユニックはそう言うと変型(トランスフォーム)し、ロボット形態になった。

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