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あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第八章 就活はつらいよ
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就活はつらいよ【Cパート】

「顔と声が合ってねぇんだよ!」


 真雨(まさめ)健悟(けんご)にツッコミを入れる。


(今のアタシは健悟の身体(からだ)にゃあ入れねぇ‥‥。

 一体どうすりゃ‥‥?)


 真雨のこめかみに嫌な汗が流れる。


「お困りみたいだね? 守護霊‥‥いや、元守護霊のお嬢ちゃん。」


 どこからともなくクール系の女性ヴォイスが耳に届く。


「どこだ!?」


「私はここさね。」


 見上げると、ハローワークの二階の庇の上に立つ髪の長い女性の姿が確認出来た。

 逆光でよく見えないが、ハンチング帽にパンタロンルック、おまけに白いギターを抱えていた。

 これでコートを着てようものなら『さすらいの太陽』の峰のぞみのコスプレだ。


「何(モン)だよ、色んな意味で!?

 ――つか、降りて来いっ!」


()たければ(のぼ)って来なさいな。」


「残念なお(しら)せだ。

 アタシはコイツと一定以上離れられねぇんだよ!」


 バキッ! ビシッ! バシッ!


 真雨は峰のぞみモドキと対話しながら、群がってくる『成れの果て』を殴り倒していた。


「仕方ないね。――とうっ!」


 峰のぞみモドキは前宙しながら飛び降りた。


「私は流しの守護霊、雀落(すずめおとし)マリア。

 流しと言っても酒場の流しじゃないよ? 台所の流しでもないよ?

 フリーランスって意味だからね。」


「守るヤツがいねぇんじゃ守護霊じゃねぇじゃん!」


「チッチッチッチッ、レベルが一定以上あれば、こういう選択も可能なのさね。

 ――そんな事より、あのおっちゃん、どうにかしたくはないかい?」


「し~ご~と~、め~ん~せ~つ~。」


 恍惚な表情で不気味な声を出し、うろつき回る健悟はいつしか周囲の注目を集めていた。


「ノイローゼかな?」


「ああはなりたくないよな‥‥。」


 ギャラリーは口々に勝手な事を言っている。


「マリア、頼む!」


 真雨は両手を合わせて頼んだ。

 が、マリアは遠い目で知らんぷり。

 どうやら頼み方がお気に()さなかったようだ。


「マリアさん、お願い!」


 頼み直す真雨。


「あー、私、帰っちゃおうかなぁ~。」


「マリアの姐御(あねご)、頼んます! いよっ、女一匹!」


「姐御、いいねぇ。今度からそれで行こう。

 あと、女一匹ってのもなかなか気に入った。」


 マリアは手をポンと打って真雨に告げた。


(昭和四十年代センス、知っといてよかったぁ。)


 バキッ! ビシッ! バシッ!


 真雨は安堵しながらも闘いの手を休めない。


「それじゃあ、早速入らせて頂くよ。」


 マリアはそう告げると、健悟の背中から身体(からだ)の中へとダイブした。



「んんっ?」


 どこからともなく聞こえてくるギターの音色に健悟の身体(からだ)を乗っ取っていた『成れの果て』の地縛霊が首を(かし)げる。


 ポロン、ポロン、ポロン、ポローンポロン、ポローン‥‥ティトティトティト‥‥♪


 その音が近付くにつれ、マリアのシルエットが鮮明になっていく。


「ぐげげっ、誰だ、お前はっ!?」


「貴様みたいな(やから)に名乗る名前はないねぇ。

 残糸(ざんし)、断ち切らせて頂くよ。」


 そう言うや否や、マリアはギターの仕込み部分を素早く抜く。

 と、ほぼ同時に『成れの果て』の地縛霊の残糸は断ち切られ、自分の身に何が起こったのかわからないまま粒子になって消えた。


「う~ん、愉楽(ゆらく)❤」


 マリアは顔を紅潮させ、恍惚の境地に似た快楽に酔いしれた。

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