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あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第八章 就活はつらいよ
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就活はつらいよ【Bパート】

「どれもこれも悪縁ばっかだが、この際、仕方ねぇ。

 健悟(けんご)、この会社にしろ。こん中じゃあ一番マシだ。

 それに何より、ここなら落とされる事はまずねぇはずだ。」


 真雨(まさめ)氏家(うじいえ)の打ち出したリストの中から有限会社(まこと)商事という運送会社を指さした。


「ああ、すみません、この誠商事さんでお願いしたいです。」


「えっ、もう決められたんですか?」


 驚く氏家。


「はい。ここならアパートから自転車でも行ける距離ですし。

 ただ、大型の免許は持ってはいますが、実務経験がないので、それでも大丈夫か‥‥。」


「じゃあ、電話で確認してみますね。」


 ● ● ●


 そんなこんなで健悟の面接は明日に決まった。


「取り敢えず、面接に辿(たど)り着けてやれやれだよ。」


 ハローワークの駐輪場へ向かう健悟が真雨に心境を吐露(とろ)した。


「待て、健悟。」


「どうした?」


「お()でなさったよ、低レベルの地縛霊の群れが。

 ――健悟はその辺でじっとしてな。」


 真雨は虫眼鏡を取り出して身構える。

 相手の数がどれくらいなのか、どんな姿形をしているのか、健悟には全く(もっ)て見えない。

 それが低レベルだからという理由なら、以前現れた地縛霊の玄武(げんぶ)はかなりのレベルだったという事だろう。


「し~ご~と~。」


 地縛霊たちはゾンビのように面接に辿り着いた人間たちへと向かって行く。

 しかし、守護霊がいる人間には()りつこうとしても一方的に弾き返される。

 どうやら守護霊が一種のバリアになっているらしい。


 そうなると問題は現在守護霊不在中の健悟だ。

 もっとも、例え真雨が守護霊だったとしても、彼女のレベルではバリアの役に立たなかった可能性も考えられる訳だが。


「にゃろうっ!」


 バキッ!


 真雨はグーパンで群がる地縛霊たちを次々に殴り倒していく。

 が、多勢に無勢、徐々に押され始めた。

 残糸(ざんし)を断ち切らない限り、その数を減らす事が出来ないからだ。


「し~ご~と~。」


「め~ん~せ~つ~。」


 不気味な声も健悟には聞こえない。


「真雨、どうなってんだ、戦況は!?」


「あんま、(かんば)しかねぇなぁ。

 こいつら、仕事以外に趣味や人間関係を持てなかったヤツや、何らかの事情で仕事にありつけなかったヤツら‥‥言うなりゃ『仕事人間の成れの果て』ってところだな。数はざっと四十体ってとこか。

 ――くっそ、にしても使い勝手()りぃな、この虫眼鏡(アイテム)。」


 『成れの果て』、単体なら()じ伏せて残糸を焼き切る事も可能だろう。

 だが、あまりにも数が多過ぎた。健悟を守りながら闘うのはどう考えても無理がある。


「こんチキショウ!」


 バキッ!


 『成れの果て』は、真雨に殴られる、倒れる、起き上がる、健悟へ迫るの無限ループだ。キリがない。


「健悟、後ろ後ろ!」


「えっ?」


 健悟が振り向いた瞬間、『成れの果て』の一体が健悟の身体(からだ)の中に入り込んだ。


「うがあ――っ!」


 健悟は異物が体内に侵入したかのような激痛が全身を駆け回り、その場に転倒。

 (しばら)くの間、胸を掻きむしりながらもがくも、やがて収束していった。


「健悟?」


 真雨の言葉に反応するかのように、おもむろに立ちあがった健悟はニッコリ笑って、


「め~ん~せ~つ~。」


 と不気味な声を発した。


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