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あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第七章 アリジゴク兄弟見参!
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アリジゴク兄弟見参!【Cパート】

「人間体だったら俺だって!」


 アラ還の身体(からだ)に鞭打って健悟(けんご)朱雀(すざく)にタックルを決める。

 硬いアスファルトに叩きつけられた朱雀はもろに頭を打ち、一瞬、意識が飛んだものの、


「ええいっ! 人間の分際で!」


 倒れた体勢から健悟の身体(からだ)を強大な力で跳ね()ける。


 バウン!


 プロップの外回りに使われている社用車のボンネットに叩き連れられる健悟。


「かはあっ!」


 激痛のあまりに声の発生が一拍遅れた。

 一方の朱雀も人間体の状態では人間と同等のダメージを負うらしく、よろよろと立ち上がった。



「くっそ、時間が掛かり過ぎんだよ!

 レベルアップする前よかはマシだけどよ!」


 焦りながらも手を休めない真雨(まさめ)

 残糸(ざんし)が細くなるにつれて意識が朦朧(もうろう)としてくる白虎(びゃっこ)

 ただでさえ地上では動きの鈍い悪霊が、遂に動く事もままならないまでに陥った。


「あ‥‥兄、貴‥‥。」


「今、行く!」


 朱雀(すざく)は真雨に向かって再び走り出した。

 しかし、


「させねぇっつーのっ!」


 ドガッ!


 健悟の運転する車に()ね飛ばされた。

 文具などと一緒に持って来ていた車のキーが功を奏した。


「うぐはぁっ!」


 ドシャッ!


 地面に激突した衝撃で朱雀はその動きを止めた。


「やったか!?」


 健悟が降車し、駆け寄りながら叫ぶ。


「いいや、あの程度でくたばるタマじゃねぇ。その証拠に結界は継続中だ。

 ――でもま、しばらくはあのままノビててくれんじゃねぇか?」


 真雨が解説する。そして間もなく、


 プツン。


 白虎の残糸がやっと(こす)り切れた。


「あ‥‥に‥‥きぃ‥‥。」


 昇りゆく朝陽の中、光の粒子になって消滅する白虎。

 すると――


 チャラリラッパー、チャラリラッパー、ラッパッパー♪


「真雨の守護霊レベルが3になりました!」


 レベルアップ音のМEミュージックエフェクトと天からの声が流れた。


「やっりぃ! これで紙やすりともおさらばだ!」


 歓喜する真雨。

 やがて紙やすりは光に包まれ、その形状を変えていった。


「何が来るかな、何が来るかな♪」


 わくわくして待つ真雨。


「‥‥‥‥これは‥‥。」


 真雨と健悟は新しい道具(アイテム)に絶句した。

 その道具(アイテム)とは虫眼鏡だった。


「まあ、糸を焼き切れって事、なんだろうな‥‥。」


 健悟は呆けている真雨に虫眼鏡の用途を解釈して伝えた。

 そうした中、


「よくも白虎を‥‥。」


 やっと意識を取り戻した朱雀は再びアリジゴクの姿へ変わる。


「こうなったら、この辺り一帯を沈めます!」


 朱雀は真雨と健悟を倒す為の最終手段を取った。


「やっべぇ! 可能な限り遠くまで逃げっぞ、健悟!

 ロートルにゃあキツいだろうけど、とにかく走れっ!」


「ロートルで悪かったな!」


 走り出す二人。


「逃がしませんよ!」


 朱雀を中点として、漏斗状のアリジゴクの巣が展開していく。

 次々に呑み込まれていく駐車場の車。

 が、冷静さを欠いた朱雀にひとつ誤算があった。


「あっ、熱いっ!」


 結界という霊が実体化する特殊な空間の中ゆえに、高熱に溶けたアスファルトが朱雀に向かって一気に流れ込んできた。『(ひん)すれば(どん)』というヤツだ。


「うぎゃあっほー!」


 たまらず巣穴から飛び出した朱雀はもんどりうった後、再び気絶した。

 その好機を真雨が見逃すはずがなかった。


「お天道(てんと)さんも高くなってきた事だし、この隙に残糸(ざんし)を切るとすっか。けけけ。」


 ● ● ●


 プチッ。


 約三十分掛かってようやく朱雀の残糸が集光によって焼き切れた。

 と、同時に朱雀が張り巡らせた結界が解ける。


「‥‥なんか、棚ぼた的にやっつけたな。」


 健悟がつぶやく。


「勝ちゃあいいんだよ、勝ちゃあ。

 どんな形だって、生き残った方が勝ちなんだよ。」


 真雨が天に昇って行く光の粒子を見ながら誇らし気に語った。


「それはそうと‥‥どう説明する気だ、アレ?」


 真雨は左手の親指を突き立て、駐車場に出来たアリジゴクの巣の残骸について(たず)ねた。

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