アリジゴク兄弟見参!【Bパート】
「どうしよう、真雨。」
健悟は咄嗟に受話器の送話器を掌で覆うと、隣りの元守護霊に問い掛けた。
「あン時、縁が繋がっちまったんだな。
そして今は最大級のぶっとい悪縁になっている。闘いは必至だな。」
「非常口っから逃げるか?」
「一体、ここをどうやって突き止めたんだか‥‥それがわかんねぇと、逃げ切れる気がしねぇ。
――かと言って相手はアリジゴクの悪霊。籠城戦も有効たぁ言えねぇ。
相手の要求通りにするしかねぇな、取り敢えず。」
「そうか‥‥。」
健悟は送話器から掌を退けると、六車朱雀に了承の返答を告げて電話を切った。
「ちゃっちゃとやっつけて、今日は朝までダラダラ過ごすとすっか。
――ほら、行くぞ!」
「このメンタルモンスターめ。」
健悟は念の為、カッターやボールペン、動画に使うタップから車のキーに至るまで、武器になりそうな物を掻き集め、ズボンのポケットに入れた。
ウィーン。
玄関のドアを中から解除し、外へ出る健悟と真雨。
その二人を見るなり、駐車場に立っていた二人の狐目の男の表情が怒りに変わる。
「ああ、三つ子なんだっけ、あんたら。」
真雨が首をコキコキと鳴らしながら朱雀とその兄弟と思われる男に告げる。
「よくも青龍を!」
「落ち着きなさい、白虎。
あの青龍を倒した二人です。こんなに早く出てくるとは何か知略か秘策があるに違いありません。」
いや、買い被らないでください。無策です。
「あの、ここは穏便に話し合いで解決しませんか?」
健悟が浪速の商人のように両手を擦り合わせながら伺いを立てる。
「何を言っている!?
お前が自分の弟をやられたらどう思う!? 話し合いなど成立するか!」
白虎はそう怒鳴ると、三対の大顎を持ったアリジゴクの姿に変貌していった。
三つ子でも性格の違いはあるらしく、どうやら次兄は短気なようだ。
「やれやれ‥‥。」
朱雀はそんな弟を見てから、自身もまた三対の大顎を持ったアリジゴクに姿を変えた。
「真雨、この場合、警察でいいのか!? それとも自衛隊か!?」
「テメェも落ち着け、健悟。
この辺り一面、強力な結界が張り巡らされている。しかも、電波も物音も遮断するおまけ付きだ。
警察も自衛隊も、あの回収業社だって呼べねぇよ。」
「それって、つまり‥‥。」
「あいつらを倒す以外、アタシらの明日は来ねぇって事だっ!」
そう言い終わるや否や、真雨はいつものように突貫していき、
ペシッ!
「むぎゃっふっ!」
お約束通り白虎の前脚に弾き飛ばされ、無残な声を上げながらブロック塀に激突した。
「お前は一向に成長しねぇな、おいっ!」
「うっせー‥‥な‥‥。」
そう告げると、真雨はゆっくり目を閉じた。
「兄貴、本当にこいつらが青龍をやったのか? 弱過ぎるんだが?」
白虎は朱雀に困惑した感じで尋ねる。
「爆破に使われたスマートフォンにあったSIМカードを解析して頂いたところ、あちらの人間の所有物に間違いないとの事でした。
また、病院の監視カメラにも二人の姿が写っていました。
これらを総合すると‥‥。」
「だあ――っ! 兄貴の話は長ったらしくていけねぇ!
弱々な元守護霊にトドメを刺した後は、あの人間のお食事会といこうぜ。」
「やれやれ、私の出番はなさそうですね。
元守護霊の始末はあなたに任せますよ、白虎。」
「おうよっ!」
ぐったりと動かない真雨に、ノシノシと近付く白虎。
悪霊の形態では砂の中でないと動きにくそうに感じられる。
「なあ、あんたらに一つ訊きたい事がある。
どうやって、俺の職場を知った? スマホにあった情報だけじゃわからねぇはずだ。」
健悟は時間稼ぎの為に尋ねた。
「フン、そういう探索活動を生業にしている妖もいんだよ。憶えておけ、人間。」
白虎は足を止め、自慢気に語った。
「つまり、ここに来たのはあんたら二人だけって事だな?」
「おうよ! 他の奴らに青龍の仇を討たせはしねぇ!
あくまでも、この俺たちが仇を討つのがスジってもんだろうがっ!」
健悟は真雨が気にしていた情報を聞き出した。
と、その時。
「へえーっ、悪霊にしとくには勿体ねぇくれぇのご立派な心構えだ。」
健悟にすっかり気を取られていた白虎は、真雨に背後を取られていた事に気付けなかった。
「何っ!? いつの間に!?」
慌てた時はもう遅かった。
「残糸、断ち切る!
ぬおおおおおおおおおっ!」
真雨は紙やすりで白虎の残糸を超高速で擦る。
「やらせませんよ!」
朱雀はアリジゴク形態では間に合わないと踏み、再び人間体に変身する。
そして、この世と実弟の命を繋ぐ生命線である残糸を擦り切ろうとしている真雨へと猛然と走る。
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