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あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第七章 アリジゴク兄弟見参!
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アリジゴク兄弟見参!【Aパート】

この作品は『時代に取り残された』と感じている全ての方々に捧げます。

「それ、マジですか?」


 健悟(けんご)は中国便昼班からの引継ぎの際、東村(ひがしむら)から中国の動仕会社に未払いが発生し、仕事の発注を断られている事を告げられた。


「こないだのアイドル公演の失敗が元凶の全てとまでは言わないけど、このところ未払いや遅延が発生しているのは確かだよ。」


 東村は薄くなった頭を掻きながら状況を説明した。


「じゃあ、今夜、仕事の依頼が来ても動仕が回せないですよね?」


「どこか受けてくれればいいんだけどね‥‥。

 発注の電話が来たら一旦受けて、どこもSkype(スカイプ)をスルーしてくるようだったらお断りの電話だね。」


「ですね‥‥。」


 健悟はプロップに先がない事を薄々感じ始めた。


 ● ● ●


 結局この夜、発注依頼は何件か来たものの、中国の動仕会社は揃ってSkypeをスルーしてきた。

 この為、健悟は全ての依頼を『今日はラインが埋まっている』などの適当な理由を付けて断った。


「健悟ぉ、今夜はヒマだなぁ。」


 真雨(まさめ)が社内に誰もいない事を見計らい、話し掛けてきた。


「そうだな。

 こうもヒマだとダメ人間になりそうだ。」


「何を今さら。」


「ちょっと待て、落ちこぼ霊に言われる筋合いはねぇんだが?」


「あんだと、テメェ!

 大体、テメェみたいな低スペックなヤツの守護霊になんて、アタシだってなりたかなかったっての!」


「何だよ、それ? 真雨が俺を選んだんじゃねぇのかよ?」


「ンな訳ねぇだろ、バホマトン。

 二刀流の野球選手とかイケメン俳優とかの可能性を持たされた『素体(そたい)』は競争率が()けぇんだ。しかも、そーゆーのはレベルが一定以上ある守護霊ン中から抽選で選ばれる。

 アタシみたいな駆け出しにゃあ、不人気の素体しか回って()ねぇんだよ。」


 うんざりした顔つきで真雨がボヤく。


「はあ‥‥低スペックな素体と落ちこぼ霊がペアを組まされたら、どう足掻(あが)いたって負け組じゃねぇか。」


 ため息混じりの健悟。


「それでも天寿を(まっと)うすりゃあ、守護霊にも人間にもポイントみてぇなモンが入る。

 ――んで、そいつを使いやぁ、次の素体選びも、ちっとはマシになるって訳だ。」


「負け組生活を天寿まで全うとは気の遠くなる話だ。」


「負け組は負け組で気楽だぞ?

 まず、誘惑が少ない。」


「‥‥それって、ロクな選択肢が出てこねぇって事じゃあ?」


「まあ、そうとも言うが‥‥モノは考え様だ。

 ほら、よくあんだろ、人気女優の不倫とか、人気スポーツ選手の自殺とか。

 ああいうのは選択糸(せんたくし)が多過ぎて、守護霊が悪縁を切り切れなかった時に起こり易い。

 ――その点、健悟の場合、寄って来る相手も(えにし)もとにかく(すく)ねぇから安心だ。」


「ほっとけ。

 寄ってくる縁が少ねぇから就活も苦労してたんじゃねぇか。

 ここの会社、そう長くはねぇだろうし、次の就活の考えると死にたくなるよ。」


「テメェ、自殺はすんなよ?

 アタシもテメェも強制転生、一直線だ。」


 ズゴゴゴゴといいう擬音付きのアップで真雨が(にら)んできた。


「お、おう。」


 確かに未来永劫ナメクジというのは望むところではない。


 と、そんなやり取りをしていると、一通の電話が鳴った。

 すぐさま受話器を取る健悟。


「はい、プロップです。」


飯綱(いづな)健悟(けんご)さん、ですね?」


 男性の声が鼓膜(こまく)を波打たせる。


「えっ? はい、そうですけど‥‥どちら様でしょうか?」


「私の声に聞き覚えはありませんか?

 六車(むぐるま)朱雀(すざく)です。

 いやあ、探しましたよ、飯綱さん。」


 以前、西武池袋線で話した時とは違うトーンに、彼が復讐鬼になっている事を悟る健悟。


「只今、業務中なもので‥‥。」


 すぐさま電話を切ろうとする健悟。


「今、あなたの勤め先のビルの前まで来ています。

 私にとってこの建物を地に沈めるなど造作(ぞうさ)もない事‥‥。

 ちょっと出て来てもらえませんか。」


 それは明らかに脅迫だった。

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