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あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第六章 アイドルオーラ
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アイドルオーラ【Dパート】

「‥‥‥‥。」


 失望感満載といった真雨(まさめ)健悟(けんご)の顔。


「くっくっくっくっ、ダサ過ぎですわ。」


 白蛇が笑い泣きする。


「こうなったらヤケクソだっ!」


 真雨は最後の力を振り絞り、残糸(ざんし)を紙やすりで(こす)り始めた。


「無駄です。とっとと(あきら)めて死になさぁーい。」


「テメェにとって残念なお(しら)せだ。

 『あきらめ』の四文字はアタシにはねぇんだよ!」


 せめて『諦め』の二文字と言ってほしかったところだ。


「見苦しいですよ、苦し紛れのハッタリは。」


「アタシには『強制転生』が掛かってるんだ!

 そう簡単にナメクジになんかになってたまるかってんだ!」


「ひいっ、ナメクジですって!?」


 三すくみの関係からかナメクジという響きにビビり、思わず締め付けを忘れる白蛇。


(今だ!)


 その隙に乗じ、一気に(こす)りを加速させる真雨。

 そして――


 プツッ!


 遂に残糸が切れた。


「あぎゃひぃーっ!」


 その瞬間、白蛇は断末魔の声を上げて消滅した。


「‥‥ありゃ、今度はレベルアップなし、かよ。」


 真雨は手にしていた紙やすりを見つめながら、ため息をついた。


 ● ● ●


「なっ、何よ、ウソ!? これが私!?」


 気絶から目を覚ましたケイは手鏡を見て驚愕の声を上げた。

 白蛇が消滅したのと時を同じくしてケイのアイドルオーラもデフォルト値に戻ってしまったのだ。

 更に残念な事に、蚊の(あやかし)に吸い取られた他の()のアイドルオーラはわずかたりとも復活しなかった。


 さて、そんな初公演の結果だが、スター性ほぼほぼ(ゼロ)行進のローカルアイドルのイベントが成功を収める訳もなく、プロップは多額の負債を抱える事となった。


 唯一、百合(ゆり)との契約が不履行となった事で、ケイの寿命が元通りになったのが救いと言えた。守護霊が不在なのは心配だが‥‥。



 そして――


「すみませんでした!」


 レンタルの2(トン)車をボロボロにした事とアイドルに平手打ちをした事により、健悟は始末書を書かされ社長の荻原(おぎわら)に提出した。


(始末書って反省文の事だったのか‥‥。)


 五十七歳にして初めて書かされた始末書は、健悟の心に大きくダメージを負わせた。


 ● ● ●


「けけけ、始末書だって、鬼ダサ。ダサバホマトン。」


 深夜、原画の回収の為に武蔵境へ向かう車の中で、助手席の真雨が健悟をせせら笑った。


「ちょっと待て! 2(トン)車はお前が壊したんじゃねぇか!

 あの()を叩いたのだって、誰かが教育しないとだな‥‥。」


「そらまぁ~アタシが健悟の立場でも、あのバホマトン娘にはグーパンかレインメーカーの一発もくれてやったろうけどさ。」


「だろ?」


「でも、五十七で始末書かよ、けけけ。

 やっぱ、テメェは鬼ダサだよ。」


「うっせーっ! 俺は無実だぁーっ!」


 健悟はハンドルを握りながら叫んだ。

 その隣りでは、けけけと真雨が愉快気に笑う。

 ムッとした健悟はすかさず逆襲に転じる。


「言っとくけどな、お前の紙やすりも相当鬼ダサだぞ!」


 グサッ! ‥‥というような擬音を感じた真雨。


「うっ‥‥それを言うなーっ!

 あんな道具(アイテム)、ハズレガチャよりひでぇっ!」


 鬼ダサ論争をしながら、二人を乗せた車は五日市街道に入った。

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